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運送業を開業する時の経理処理の方法

2023/12/04更新

この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

軽貨物運送などの運送業を営む個人事業主の方が多くいらっしゃいます。開業時にはクルマを買ったり、組合に加入したりなどさまざまな初期投資が必要となりますが、その処理はどのようにしたらよいのでしょうか。

今回は、運送業を開業する方の経理処理の方法について解説していきます。

POINT

  • 代金を受け取っていても年末に運送が完了していなければ前受金処理をする
  • クルマを購入したときの法定費用などは初年度に経費にできる
  • 組合の入会金が20万以上の場合は5年間で分割して経費にする

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収入はお金を受け取ったとき?

運送業の場合、一般消費者のお客様からの運送代金は、荷物の受付時に受け取るのが一般的です。運送業の運送収入は、当然ですが荷物の運送が完了して初めて収入となりますから、期末日において代金を受け取っているもののうち、まだ運送が完了していないものは翌期の収入となることに注意しましょう。

仕訳例

年末に荷物を集荷して代金1万円を現金で受け取った
現金 10,000 前受金 10,000
年明けに運送が完了した
前受金 10,000 売上 10,000

日々の取引では簡便的に現金を受け取った時に運送収入を計上されている方が多いかと思いますが、期をまたぐときは前受金としておいて、実際に運送が完了した日の年で売上にします。

一方で、事業者のお客様からは一定期間内で多数の荷物を扱うことが多いため、月締めなどでの掛け取引の形態となることも多いですね。この場合は、締日が期末日とずれているときに、締日から期末日までで運送が完了しているものの運送収入が逆に計上もれにならないように気を付けておく必要がありますね。

クルマを買ったときはどのように経理する?

運送業の設備投資といえばクルマですね。クルマを買ったときの経理にはさまざまなポイントがありますので注意が必要です。ここでは例をもとに、ポイントを解説していきます。

減価償却の対象となる金額には、原則として本体価格のほか事業に使うために直接必要だった経費も含まれます。

具体的にはオプション品など本体と一体になって使うものや、運送費、購入手数料などです。

ただし、自動車取得税などの租税公課や登録のために要する諸費用などは車両の金額に含めないことができます。また、リサイクル預託金は将来のために預けてあるお金なので経費にせずに預託金などの資産として処理します。

仕訳例

自動車1,500,000円を頭金現金払い300,000円、残金1,200,000円をローンで購入した。60回払いで割賦手数料が180,000円かかり、ローン総額は1,380,000円となった。

また、購入代金1,500,000円のうち、諸費用は自動車税10,000円、自動車取得税25,000円、自動車重量税30,000円、自賠責保険料20,000円、登録代行手数料50,000円、自動車リサイクル預託金10,000円だった。

車両運搬具 1,355,000
  • 車両本体価額+オプション・付属品-値引額
現金 300,000
租税公課 65,000
  • 自動車税などの税金
未払金 1,380,000
  • ローン総額
保険料 20,000
  • 自賠責保険など
支払手数料 50,000
預託金 10,000
前払費用 180,000
  • 割賦手数料

このように、自動車をローンで購入し、代金の一部を諸費用ともに支払ったときは、車両の本体や諸経費、頭金やローン金額を分けて仕訳します。

仕訳例

上記ローンの分割払い23,000円が引き落とされた
未払金 23,000 普通預金 23,000

ローン支払時には未払金を支払ったという処理をします。この支払額にはローンの利息である割賦手数料が含まれますが、これについては決算時に次のように処理します。

仕訳例

ローン60回払いのうち、本年の支払い回数は6回だった
支払利息 18,000 前払費用 18,000
  • 割賦手数料180,000円÷60回×6回=18,000円

仕訳例

車両運搬具1,355,000円のうち、当年分の減価償却費は25万円だった
減価償却費 250,000 車両運搬具 250,000

よく見かける間違いとして、引き落とされた金額をすべて「車両費」などとしているケースがあります。上記の流れのように購入時に資産として計上しておき、決められた年数で配分して経費にしていく減価償却という経理が正しいものですので注意しましょう。

なお、リースの場合には上記によらず毎月の支払い時に「リース料」などと経費処理することができます。

組合の入会金は経費になる?

軽貨物運送のドライバーなどで個人事業主となる方は、組合に加入する方も多いでしょう。組合加入時にはさまざまな支出がありますが、これらは経費になるのでしょうか。

登録費用

登録にかかる費用は開業するためにかかった経費として、「開業費」として処理します。これは初年度に全額を経費とすることができます。

出資金

出資金は脱退時に返還されるものですので、経費とはせずに「出資金」などの資産として処理します。

入会金

入会金は支出の効果が数年間におよぶものとして繰延資産というものに該当します。20万円以上のものであれば「繰延資産」などとして処理し、5年間で分割して経費にしていきます。20万円未満であれば「開業費」などで処理しましょう。

組合費

毎月の組合費などは「諸会費」「組合費」などとして経費処理します。

国民年金基金

組合のなかで貨物軽自動車運送業国民年金基金などに加入できる場合がありますが、これは事業の経費ではありません。所得税の計算で社会保険料控除という控除を受けることができますので、確定申告時に使用します。

まとめ

いかがでしょうか。個人事業主の運送業も初年度はさまざまな支出があり、それぞれで取り扱いが違ってきます。最初をクリアすれば、その後の帳簿づけはやりやすいと思いますのでがんばってみてください。

photo:PIXTA

この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

宮原裕一税理士事務所新規タブで開く」代表税理士。弥生認定インストラクター。
弥生会計を20年使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。経営者のサポートメンバーとして会計事務所を営む一方、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。

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