これをしたらブラック企業です! 振替休日と代休の違いは? 〜休日・休憩編〜

近年「ブラック企業」という言葉がマスコミなどの間でよく取り上げられていますが、どんなことをしたらブラック企業と呼ばれてしまうのでしょうか。
以前に執筆した記事「要注意!ブラック企業にならないために」でも代表的な事項を挙げましたが、今回は、従業員に休日出勤をさせる前に注意しておきたいことや、振替休日と代休の違い、また時間外労働をさせる場合に従業員と締結しておかなければならない労使協定など、休日・休憩についてお話します。
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目次
- POINT
-
- 休日出勤をさせる前に注意したいことは、2つ
- 振替休日と代休の違いに気を付ける
- 昼休みの電話番は可能か?!
法定休日と所定休日
A社の休日は毎週土曜日と日曜日、そして祝日です。B社の休日は毎週水曜日と第1、第3火曜日です。このように、会社によって休日の設定は異なっていますが法的にはどのような定めがあるのでしょうか。
労働基準法で、下の①②どちらかの休日を与えることが原則になっています。
- ① 毎週少なくとも1回
- ② 4週間を通じて4日以上
これを法定休日といいます。法定休日を何曜日にするかはその会社の自由ですので、例えばA社の法定休日は日曜日とし、B社は水曜日として問題ありません。また、週の始まりを何曜日にするかも自由です。法定休日以外の休日を所定休日といいます。
休日出勤をさせる前に
では、従業員に休日出勤をさせたい場合、会社は何に注意したら良いでしょうか。答えは以下の2つです。
- ① サブロク協定の締結
- ② 就業規則・労働条件通知書への記載
これら両方の措置をあらかじめとっていないと休日出勤命令を出すことはできません。
サブロク協定の締結
会社が休日出勤や時間外労働を従業員にさせるには、あらかじめ従業員側との間で話し合いを行い、労使協定を結び、労働基準監督署に届け出ておく必要があります。これをサブロク協定といいます。
サブロク協定についてはこちらの記事をご参照ください。
【参考記事】
・これをしたらブラック企業です! サブロク協定とは?〜労働時間編〜
就業規則・労働条件通知書への記載
アルバイト・パートを含む従業員が常時10人以上いる会社(事務所、工場、店舗など)は、必ず就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。また、会社の従業員数にかかわらず、人を雇った時には必ず労働条件通知書などで労働条件の明示をしなければいけません。
就業規則についてはこちらの記事をご参照ください。
【参考記事】
・はじめての「就業規則」のつくりかた
労働条件通知書についてはこちらの記事をご参照ください。
【参考記事】
・従業員の雇用には、どんな手続きが必要か?
割増賃金(休日出勤手当)の支払いも忘れずに
休日出勤をさせたら割増賃金(休日出勤手当)の支払いも必要です。法定休日の出勤であれば35%以上の割増率、所定休日の出勤であれば時間外労働(残業)と同じ25%以上の割増率で計算した賃金を支払います。
割増賃金についてはこちらの記事をご参照ください。
【参考記事】
・あらためて知っておきたい「残業手当」の基礎知識【参考記事】
振替休日と代休の違い
振替休日と代休は似たような言葉ですが、実は違います。休日出勤が必要な時、事前に休日を他の労働日と振り替えておくことを振替休日といいます。この場合は、休日と労働日が入れ替わっただけですので割増賃金を支払う必要はありません。
これに対し事前に休日を振り替えず休日出勤した後に休むことを代休といいます。代休をあとで取っても休日出勤は休日労働のままの扱いとなり割増賃金を支払うことになります。
休日の社内行事は休日出勤扱い?
休日出勤といえば業務量が増えたときや突発的な業務で出勤するケースが多いでしょう。それでは、業務以外のケース、例えば、運動会やバーベキュー大会など社内行事を休日に開催する場合はどうでしょうか。
これは従業員に参加を強制すると休日出勤の扱いになります。任意参加であれば休日出勤の扱いとはなりません。ですから進行係や会計係など行事の開催に必要な業務上の役割をする従業員は休日出勤扱いとなるでしょう。
休憩の決まり
労働基準法では休憩に関しての原則を以下のように定めています。
- ① 労働時間が6時間を超えて8時間以下の場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上与える
- ② 労働時間の途中に与える
- ③ 一斉に与える
- ④ 自由に利用させる
会社の昼休みは1時間という印象があるかもしれませんが、労働時間が8時間ちょうどであれば45分間でもOKです。例えば朝9時始業で昼休みは12時から12時45分、夕方5時45分終業という設定で問題ありません。ただしこの場合、残業をさせる時は夕方5時45分から6時までの15分間、休憩を取ることを就業規則等で定めておきましょう。この場合会社として残業させて良い時間は夕方6時以降となります。6時までの15分間に労働することを命じたり黙認することの無いように気を付けましょう。
【参考】
厚生労働省 労働時間・休憩・休日関係
昼休みに電話番をさせても良い?
昼休み中にお客様からの電話対応をすることを従業員に命じることはできるのでしょうか。もし命じるとしたらどんなことに注意したら良いのでしょう。
まず、休憩時間は上記④にあるように自由に利用させることが原則です。そして電話対応は労働時間となりますので、休憩時間にはなりません。もし、昼時に顧客からの電話対応が必要なのであれば、昼休みの時間をグループ分けしてずらし、交代で電話対応してもらいましょう。上記「③ 一斉に与える」の例外として労使協定を締結すれば休憩を交代で与えることができます。この労使協定はサブロク協定とは異なり、労働基準監督署へ届け出る必要はありませんが従業員への周知は必要です。
なお、一定の業種(運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業)は、労使協定は不要です。これらの業種は、休憩を交代で取らないと業務がまわらないと判断されています。
様式や記載例は以下からダウンロードできます。
【参考】
・神奈川労働局:労働基準法関係(記載例)(4)休憩 一斉休憩の適用除外に関する労使協定書
まとめ
いかがでしたでしょうか。振替休日と代休の違いや、休日に開催する社内行事や昼休みの電話番など、判断に迷うケースがあるかと思います。休日・休憩に関するルールは、ブラック企業にならないための基本としておさえておきましょう。
photo:Getty Images