売上不振……赤字体質を解消するにはどこから見直すべきか?

細々としたコスト削減策は、スモールビジネスでは効果も限定的。そもそも赤字体質を根本から解消するには、どう考え、どこから手をつけるべきか。長期視点に立って、真の意味のリストラクチャリング(事業の再構築)を実践するための考え方を解説します。
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目次
- POINT
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- 「赤字状態が続いている=事業モデルの根底に問題がある」と考えるべし
- 「この仕事は本当に〇人のスタッフが必要なのか」。従来の自分の常識を疑ってみる
- 大事なのは事業を継続すること。そのためには社長の給料減額も検討すべし
“リストラ=人員削減ありき”ではなく、まずビジネスモデルを見直す
かつて”失われた20年”などと言われた長引く不況下、経費削減の必要性が盛んに叫ばれたことがありました。例えば、ランチタイムには消灯する、コピー紙は裏紙も使う、冷暖房の上限や下限温度を設定する……などなど。
また、近年でも、電球をLEDに替えるなどの節電対策に取り組む企業は数多くあります。
こうした節約が、どの程度の効果を上げるのでしょうか。社員数や拠点の多い大企業であれば、スケールメリットで相応の結果が期待できるでしょう。しかし、数人程度で事業を行っているようなスモールビジネスでは、残念ながら得られる効果は限定的と言わざるをえません。
大きくメスを入れるとするならば、人件費と家賃になりますが、そもそも中小企業で赤字が継続していると状態というのは、単純なコスト削減で解消できる問題ではありません。
その要因の大半は、「売上が足りない」こと。厳しいことを言ってしまえば、そのビジネスの前提が間違っている。売上アップにつなげるためには、ビジネスモデルの根本的な見直しが必要になります。
先の不況下では、多くの企業でリストラが実施されました。
日本でリストラというと、とかく人員削減ばかりがクローズアップされがちですが、そもそものリストラクチャリングの意味合いは、「事業の再構築」にあります。
その手法として、不採算部門の縮小や撤退などが実施されたわけで、事業モデルを根底から構築しなおしたうえで、人件費などのコスト削減についても検討するというのが正しい順番になります。
「より少ない人員」でビジネスを回す工夫を考えてみるべし
その考え方として、飲食店を例に解説してみましょう。
経営者とスタッフ含め4人で店を運営していたものの、赤字状態が続いています。そこで、たまたま1人が辞めて、3人体制になったとします。
そこでどうするか。
1人減った分、採用の募集をかけるというのが普通でしょうが、そこで「これをいい機会に3人でお店を回せる体制にしよう」と考えたとしたらどうでしょうか。
ここで重要なのは、そもそもこの飲食店で赤字状態が続いているということです。つまり、ビジネスのやり方に何か根本的な問題がある。
家賃の安い店舗への移転が簡単にはできないとするならば、事業継続の取りうる手法のひとつは、人件費を減らすために3人で回せるモデルを考えることです。
赤字が続いているといっても、小規模な店の場合、大抵は「1日1万円程度売上が足らない」「毎日、あと1組、お客が来れば黒字になるのに」という状況です。
それぐらいの赤字ならば、1人分の人件費が浮けば解消できる可能性が出てきます。
そこには絶対の正解はありませんが、「コース制導入やメニューの絞り込みを実践し、食材のムダや調理の手間を省く」「飲み物をセルフ式にする」など、さまざまな選択肢が考えられるのではないでしょうか。
無論、将来「店を大きくしたい」「複数店舗展開をしたい」という長期的な展望を持っているならば、将来の店長候補になるような人材に投資するのもいいでしょう。しかし、飲食店に限らず、なんとなく「〇人いないと、仕事が回らない」といった理由で、ムダな人員をキープしているケースは意外に多いのです。
長く事業を継続していれば、”浮かび上がる”チャンスも
厳しい言い方になりますが、赤字の状態が継続している会社というのは、社会から求められていない。つまり、まだ存在意義を確立できていない状態といえます。
世に数多くの会社、ビジネスが存在するなかで、”求められる存在”になるには、ライバルに”勝つ”ことが必須です。
そこで、スモールビジネスならば、少し工夫して5人で回していたビジネスを3人で回すようなやり方も実現できる。大企業とは違うやり方で、”勝つ”可能性を高めることも可能なはずです。
もちろん、「言うは易し、行うは難し」。私のクライアントの事例を見ても、いわば”神風”のように大きな案件を獲得し、一発逆転をなしえたケースはあっても、自力で画期的なビジネスモデルを実現するのは、そう簡単なことではないと思います。
とはいえ、運を引き寄せるのも才能のうち。そこでポイントとなるのが、”事業を継続すること”です。長く事業を続けていれば、沈むこともあれば、思わぬ要因で浮き上がることもあります。
つまり、”沈む”時期があっても、事業を続けてさえすれば、いつか”浮かび上がる”チャンスがある。
ならば、業績が思わしくない時でも、1円でもいいから黒字を出し続けて、コツコツ、ガマンをしてビジネスを続けていくことも肝要。
そのためには、いちばん手をつけやすい領域として、自分(経営者)の給料を下げることも検討するべきでしょう。
真剣に赤字体質を脱出したいと考えるならば、こまごまとした節約を実施しても問題の先送りになるばかり。大局的な視点で、まずはビジネスのあり方を冷静に見直すことをお勧めします。
photo:Getty Images