白色申告から青色申告にしたら、税金はどこまで安くなったのか?【体験記】

確定申告は、白色申告よりも青色申告のほうが、税金が安くなるし、ずっとお得だよ——。
開業したばかりの頃には、フリーランスの先輩たちからしばしばそんな声をかけられました。
今はすでに青色申告者である筆者ですが、青色申告にしたことでどこまでお得になっているのか、過去の確定申告書類などを引っ張り出し、調べてみました。
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目次
- POINT
-
- 年収500万円のケースなら約20万円の節約になる
- 青色申告特別控除の65万円控除が「節税」に大きく寄与する
- 帳簿付けの習慣化でさらなる節約が見込める
所得税額の計算方法
まずは、所得税額の算出方法をおさらい。ざっくりいえば以下の計算式で算出されます。
①事業収入−②経費等=③所得金額
③所得金額−④所得控除(社保・生保・基礎控除)=⑤所得税の課税対象所得金額
この「⑤所得税の課税対象所得額」に応じ、我々の所得税額が決まります。
さて私の場合、開業した初年分の確定申告(2013年1〜12月)は、脱サラした7月以降の半年で得た事業収入と、それ以前の給与所得を申告することになりました。
幸い、年末頃からコンスタントに仕事を請け負えるようになり、翌年分から青色申告へと切り替えています。実際の所得税額(2014年分)は、おおよそご覧の通りです。
2014年分
①事業収入 | 513万円 |
---|---|
②経費等 | 160万円 (青色申告特別控除65万円含む) |
③所得金額 | 353万円 |
ここから社会保険料・生命保険控除、扶養控除(私の場合は基礎控除のみなので38万円)を合わせ、「④所得控除」が差し引かれます。
④所得控除 | 71万円 (基礎控除38万円+その他の合計) |
---|---|
⑤課税対象所得金額 | 282万円 |
所得税額は、所得金額に応じて税率が高くなる仕組み(下表参照)です。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
※平成30年(2018年)分の所得税額の計算方法より。
平成27年(2016年)分から4,000万円超のテーブルが新設されました。
本記事の筆者が開業した初年の2013年から2016年までは、4,000万円以下の控除額は、変更されていませんので最新のテーブルを掲載しています。
この表にあてはめると ⑤課税対象所得金額282万円は、税率10%で控除額は、97,500円なので「282万円×10%−9万7500円(控除額)」となり、所得税額は「18万4500円」です。
青色申告特別控除が税金を安くする
仮に翌年も「白色申告のまま」だったらどうなっていたのでしょうか?
大きく変わるのは「②経費等」の部分です。確定申告書作成の際には、もろもろの経費と合わせて、青色申告特別控除(65万円)が「②経費等」として差し引かれます。
白色申告にこの特別控除はありませんから、以下のように変わってきます。
白色申告のままだった場合
①事業収入 | 513万円 |
---|---|
②経費等 | 95万円 |
③所得金額 | 418万円 |
④所得控除 | 71万円 |
⑤課税対象所得金額 | 347万円 |
この場合は「347万円×20%−42万7500円(控除額)」となり、所得税額は「26万6500円」。
実際に青色申告にした場合との差額は8万2000円でした。
これだけでもなかなか大きな金額差です。
実際のところは、初年分(白色申告)の収入がとても少なかったこともあり、私自身も「白色→青色」の恩恵を即時的に感じることはありませんでしたが、確定申告での所得税還付のとき、そして翌年に住民税や国民健康保険料の明細が届いたとき……必ずや青色申告のメリットを感じることでしょう。
【関連記事】
・個人事業主が実際に「白色申告→青色申告」に変更して感じたこと
最新PCを毎年買い換えるくらいの節約感
さて、住民税と国民健康保険料(税)も前年の所得金額をもとに算出されますが、一般的に(合算して)所得金額のおおよそ「20%」と言われています。
ここまでの算出結果と、住民税・国民健康保険料(税)の負担額を仮に20%と仮定したものを取りまとめ、所得税・住民税・国民健康保険料(税)の総額を表した(⑥+⑦)のが下表です。
A.青色の場合 | B.白色の場合 | 備考 | |
---|---|---|---|
①事業収入 | 513万円 | 513万円 | |
②経費等 | 160万円(95万円+青色申告特別控除65万円) | 95万円 | |
③所得金額 | 353万円 | 418万円 | |
④所得控除 | 71万円 | 71万円 | |
⑤課税対象所得金額 | 282万円 | 347万円 | |
⑥所得税 | 18万4500円 | 26万6500円 | A・B差額=8万2000円 |
⑦住民税・国保 | 70万6000円 | 83万6000円 | ③の20%と仮定 |
⑥+⑦の負担額 | 89万500円 | 110万2500円 | A・B差額=21万2000円 |
所得税・住民税・国保を合わせた「⑥+⑦税の負担額」で比較すると、同じ事業収入でもAとBでは約20万円の差額が生じていますね。
普通に生活していると意外と気づかないことかもしれませんが、青色申告に切り替えれば、最新のノートパソコンに買い換えることのできるくらいの”節約”を(しかも毎年)できるようになるというわけです。
参考まで、個人事業主のかんたん税金計算シミュレーションで、概算の税額を確認して見てください。
あなたの事業の売上と経費を入力するだけで、かんたんに税金(所得税・住民税・国民健康保険料(税))が計算できますよ。
もうひとつ付け加えるならば、青色申告へ切り替えると否が応にも「帳簿付け」の習慣が生まれます。
筆者の使っているクラウド申告ソフト「やよいの青色申告 オンライン」は、複式簿記をつけている感覚すらないくらい取引入力が簡単で経費計上がしやすく、そのおかげで帳簿付けが習慣化されました。
「いちいち計上するのは面倒だな〜」なんて思っていたはずの科目も、きちんと、かつ、適切に計上できるようになったと思います。
そして、青色申告の特別控除を受けるために必要な複式簿記の帳簿や貸借対照表も自動的に作成されているのです。
そのため、年明けに来る支払調書などの書類の確認をすれば、青色申告決算書や確定申告書が簡単に完成するので、今まで確定申告にかけていた時間も減り、仕事に注力できるようになりました。
ちなみに青色申告には、「減価償却の特例」等もありますから、多少高価なパソコン等を購入しても30万円未満なら全額償却可能です。
こうしたことがまた、新たな”節税”を生み出すのです。
【関連記事】
・節税に役立つ経費対策「少額減価償却資産特例」って?
・青色申告とは?白色申告との違い、メリット・デメリットを徹底検証!
白色申告から青色申告に変更するときは、青色申告したい年の3月15日(2019年分を青色申告にしたいのならば2019年3月15日)が期限。
まだ白色申告の方は、次は青色申告へ切り替えてみませんか?
【参考記事】
・個人事業主のための青色申告承認申請書の書き方
・売上がいくらになったら青色申告したらいい? 税理士さんに聞いてみた
photo:Getty Images