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売上がいくらになったら青色申告したらいい? 税理士さんに聞いてみた

世の中には、「売上規模がそれほど大きくないから」という理由で、青色申告にしていない白色申告者が一定数いるのだとか。

筆者は青色申告者であり、また「やよいの青色申告 オンライン」のユーザーです。青色申告メリットは十分に感じているのですが、そう聞くと本当にメリットがあるのか不安に感じてしまうときも……。

そこで税理士・宮原裕一先生に、
・売上規模で青色申告にするしないに違いがあるのか?
・いくらだったらいいのか?
・青色申告にしないことでなにかメリットはあるのか?
率直なご意見をうかがってきました。

青色のメリット「減価償却特例」「青色事業専従者」

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安田

ほかにも青色申告のメリットってありますか?

宮原

有名なのは30万円未満の「減価償却の特例」でしょうか。白色申告でも10万円〜20万円未満の固定資産を3年で経費にできる「一括償却」できるのはご存じですよね?

安田

はい。例えば12万円(耐用年数4年)のパソコンなら、通常(個人事業主の場合)年間3万×4年間で減価償却しますが、10万円〜20万円未満の固定資産は一括償却にした場合「3年」で均等割して4万×3年間で経費計上します。

宮原

そのとおり。青色申告の「減価償却の特例」では、30万円未満なら購入した年度内に全額償却できるので12万円丸々を経費にできます。

安田

全額経費にできると所得金額がかなり下がる分、節税効果は大きいですよね。

宮原

あとメリットとしては「青色事業専従者」が認められることです。家族従業員を青色事業専従者として届け出れば、給与全額を経費計上できます。

安田

仮に所得500万・専従者給与200万の配偶者がいる場合なら、青色申告の場合、課税対象所得は300万となりますね。

宮原

これが白色申告ならば、同じ枠組みで最大86万円の控除を受けるのみ。課税対象所得は414万円ですから、100万円以上の所得を減らせるのは大きいですよね。もちろん、専従者がもらった給与にも税金はかかりますが、税率が下がるのでトータルの税金は少なくなりますよ。

帳簿は事業者を守ってくれるもの

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安田

青色申告のメリットを感じるのは、なんといっても、確定申告の書類を作成して還付金の額がわかったときです。

宮原

課税される所得金額が下がれば、還付金も大きくなります。

安田

でも自分の経験も含めてよく言われているのは、数ヵ月後に国民健康保険や住民税の明細書が届いたとき。「あれ、去年より少ないかも」なんて、納付額が下がるときに驚いたりするものです。

宮原

もらうときより払うときのほうが、インパクトも大きいんでしょうね(笑)。

安田

となると「青色申告にしないことのメリット」は「複式簿記で帳簿を付けなくていい」ってことのみですかね……。

宮原

でも、安田さん。実はきちんとした複式簿記の帳簿があることに、大きなメリットがあるんですよ。たとえば税務調査。「推計課税」ってわかりますか?

安田

……。聞いたことあるような、ないような(笑)。

宮原

推計課税は、個人・法人に対する税務調査のとき、納税者が帳簿をそろえていなかったり、内容の信頼性が乏しかったりなどから税務署が税金の実額を計算できないとした場合に、収入の状況や事業の規模、同業者の相場などから「これくらいだろう」、と実際の所得税・法人税の額が「推計」で算出される額のことなんです。

安田

実際よりも多い追徴課税を求められることもある?

宮原

あります。というか実際がわからないときに推計課税があるのですよ。でも、青色申告の納税者なら簡易簿記も含めて帳簿がばっちりと整っているはずということで、青色申告者には推計課税ができないことになっています。これは多くの事業者の方に知っておいていただきたい!

安田

帳簿が事業者のことを守ってくれるというわけですね! ところで青色にすると税務調査に入られやすいみたいなことってあるんですか? なんか都市伝説っぽい話ですが。

宮原

まったく関係がないと言っていいと思います。税務署のコンピューターにあるデータベースから、税務調査の対象になる事業者(例えば、所得の増減が激しい人など)をフィルタリングして選んでいるので、青色だからどうこうということはありませんね。

「税理士としても、クラウド確定申告ソフトはとても便利なんです」

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宮原

ところで安田さんはどの会計ソフト(確定申告ソフト)を使っているのですか?

安田

やよいの青色申告 オンライン」です。私はMacユーザーなのですが、青色申告に切り替えたタイミング(2014年)で、ちょうどMacにも対応した同製品がリリースされました。だからほとんど開業当初から会計ソフトに頼りっきり。取引入力が簡単なので、複式簿記をつけている感覚はありませんが(笑)。

宮原

帳簿付けが苦手だという方なら、確定申告ソフトはマストアイテムといっても過言ではないでしょうね。

安田

特に最近は「やよいの青色申告 オンライン」のようなクラウド確定申告ソフトが出てきたことで、会計業務がぐっとやりやすくなりました。しかもクラウド会計はイニシャルコストも少なく、運用費が安い。

宮原

我々税理士としても、「やよいの青色申告 オンライン」はとても便利なんですよ。

安田

どういうことでしょう?

宮原

「やよいの青色申告 オンライン」は、顧問先のお客様といつも同じデータを共有できます。仮に事業が拡大して我々税理士に一部業務を委託したいとなったときもきっと移行しやすいはずです。

安田

なるほど! 帳簿付けということ以外で青色申告にデメリットって何かあったりしますか?

宮原

う〜ん、まったく思いつかないですね(笑)。確定申告ソフトを使うにしても、多少は会計のことを知っておかなければいけませんが、これは事業者として当然といえば当然のこと。

安田

デメリットではないですね。

宮原

もう一歩踏み込んでお応えするなら、会計ソフトユーザーにとっては、青色申告・白色申告の手間感はほとんど同じです。先ほど安田さんがおっしゃったように、会計ソフトを使っていれば複式簿記をつけている感覚すらないくらい、取引入力が簡単です。

安田

ならば、控除額が大きく、かつ、いろいろな特例を受けられる青色申告65万円控除にしたほうが、断然お得ですよね。会計ソフトの導入コストがあるにせよ「青色申告にしないことのメリット」は「まったくといっていいほどない」といえそうです。

宮原

そのとおりです!

安田

ところで、毎年改版されているムック本『個人事業主・フリーランスのための青色申告』(KADOKAWA・刊)では、今回も宮原さんが監修を務められているとか。

宮原

12月から全国の書店やコンビニで販売されています。今回の確定申告で該当する変更についてや素朴な疑問と回答なども載っているので、安田さんも今回の確定申告にぜひお役立てください!

安田

さっそく購入します! 本日はどうもありがとうございました。

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宮原裕一 みやはら・ゆういち

宮原裕一

1972年生まれ。税理士。弥生認定インストラクター。
弥生会計を10年以上使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。弥生会計に精通した税理士として、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。公式HP:宮原裕一税理士事務所

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