経営者は知らなきゃ損!空前絶後のボーナス税制「経営強化税制」ってなんだ!?

皆さんは「中小企業経営強化税制」という税制は聞いたことがありますでしょうか?
実はかなりお得な「ボーナス税制」とも呼べる税制で、設備投資をして事業の生産性を高め、より会社を成長させたいと考えている方は、 ぜひ検討しておきたい制度なのです。
『スモビバ!』のこちらの記事「スモールビジネス経営者が知っておきたい”融資”の話」でも少し触れましたが、今回は、このおトクな中小企業経営強化税制について、さらに具体的に説明したいと思います。
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目次
- POINT
-
- 「中小企業経営強化税制」が適用できれば大きな税制優遇が受けられる
- 適用されるためには「経営力向上計画」の策定が必要
- 設備投資を予定していれば、ぜひチェックしておきたい制度
中小企業経営強化税制の概要
それではさっそく、中小企業経営強化税制について解説していきたいと思います。
中小企業経営強化税制は、青色申告書を提出する①中小企業者等が、②指定期間内に、③中小企業等経営強化法の認定を受けた「経営力向上計画」に基づき④一定の設備を新規取得等して⑤指定事業の用に供した場合、⑥即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択適用することができる制度です。
概要としては上記のとおりなのですが、①~⑥についてはわかりにくい部分があると思いますので、以下でひとつずつ説明していきたいと思います。
①中小企業者等について
中小企業者等とは、「資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人」を指しますが、その他にも以下の条件の法人も中小企業者等に含まれます。
- 資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
- 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
- 協同組合等(中小企業等経営強化法第2条第2項に規定する「中小企業者等」に該当するものに限る)
ただし、大規模法人の子会社である場合などは、資本金が1億円以下だとしても中小企業経営強化税制の対象とはならないということです。
②指定期間について
指定期間とは、中小企業経営強化税制の適用を受ける設備等を新規取得すべき期間のことで、平成29年(2017年)4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの期間を指しますつまり、「中小企業経営強化税制の適用を受ける設備」はこの期間に取得(導入)しなければならないということです。
③経営力向上計画について
経営力向上計画とは、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画のことで、主務大臣の認定を受けることで税制や金融支援等を受けることができます。中小企業経営強化税制による税制優遇もその一環です。
④「新規取得する一定の設備」について
中小企業経営強化税制には、対象となる設備の要件によって、「生産性向上設備(A類型)」と「収益力強化設備(B類型)」という2つの類型があります。
A類型は比較的新しいモデルの設備について、工業会等が企業の経営力の向上に資すると証明した設備を導入するパターン、一方、B類型とはモデルの新旧を問わず、個別的に企業の投資利益率が一定程度見込まれることについて経済産業局から確認を受けて設備を導入するパターンといえます。それぞれの対象となる設備の要件は下表のとおりです。
類型 | 生産性向上設備(A類型) | 収益力強化設備(B類型) |
---|---|---|
要件 | 以下の2つの要件を満たすもの ① 一定期間内に販売されたモデル(最新モデルである必要はない) ② 生産効率、エネルギー効果、精度など、経営力の向上に資する指標が旧モデルと比べ、年平均1%以上向上する設備 |
投資収益率が年平均5%以上の投資計画にかかる設備 |
確認者 | 工業会等 (上記の要件①②について、工業会等から証明書を取得する必要がある) |
経済産業局 (上記の要件について、経済産業局から確認書を取得する必要がある) |
対象設備 カッコ内は1台当たりの最低取得価額および販売開始時期 |
・ 機械装置(160万円以上/10年以内) ・ 測定工具及び検査工具(30万円以上/5年以内) ・ 器具備品(30万円以上/6年以内) ・ 建物附属設備(60万円以上/14年以内) ・ ソフトウエア(情報収集機能および分析・指示機能を有するもの)(70万円以上/5年以内) |
・ 機械装置(160万円以上) ・ 工具(30万円以上) ・ 器具備品(30万円以上) ・ 建物附属設備(60万円以上) ・ ソフトウエア(70万円以上) |
その他の要件 | ・ 生産等設備を構成するものであること(事務用器具備品、本店、寄宿舎等にかかる建物附属設備、福利厚生施設に係るもの等は該当しません。) ・ 国内への投資であること ・ 中古資産・貸付資産でないこと等 |
例えば、大きな設備投資をしないデザイナーさんのようなフリーランスの方であっても、パソコンを高性能なものにすることで生産性が向上しますよね。こうした設備投資も、生産性向上のための対象設備になるでしょう。上記の表組みの対象要件に関しては、細かな要件もありますので公認会計士や税理士、経済産業局などに相談して、対象かどうか確認すると良いでしょう。
⑤指定事業について
指定事業とは、以下の事業を指します。
農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、建設業、製造業、ガス業、情報通信業、
一般旅客自動車運送業 、道路貨物運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸
渡業、倉庫業、港湾運送業、こん包業、郵便業、卸売業、小売業、損害保険代理
業、不動産業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、飲食
サービス業、生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、
協同組合(他に分類されないもの)、サービス業(他に分類されないもの)
また、性風俗関連特殊営業に該当するものは除かれます。
⑥即時償却または税額控除について
税額控除額は、取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)ですが、中小企業経営強化税制の他にも、中小企業投資促進税制や商業・サービス業・農林水産業活性化税制で控除税額を受けている場合には、それらの税額控除との合計で、その事業年度の法人税額または所得税額の20%までが控除上限となります。
なお、税額控除の限度額を超える金額については、翌事業年度に繰り越し、翌年度の税額から控除することができます。
また、即時償却についても、限度額まで償却費を計上しなかった場合、その償却不足額を翌事業年度に繰り越し、翌年度の損金とすることができます。
適用の手続き(B類型)
A類型の生産性向上設備については、設備メーカー等が工業会等から証明書を取得しますので、中小企業者等に特段の手続きは必要ありません。しかし、B類型の収益力強化設備については、中小企業者等が自ら経済産業局に申請し、確認を受ける必要があります。
B類型の適用手続きは以下のステップで行います。
Step① 公認会計士または税理士により事前確認
申請書(様式1)に必要事項を記入し、申請書の裏付けとなる資料等、必要書類を添付のうえ、公認会計士または税理士の事前確認を受けます。
Step② 公認会計士または税理士からの事前確認書の発行
公認会計士または税理士は申請書と裏付けとなる資料に齟齬がないか等を確認し、「事前確認書(様式2)」を中小企業者等へ発行します。
Step③ 経済産業局へ確認書の発行申請
中小企業者等(以下、申請者)は、必要に応じて申請書の修正等を行い、②の事前確認書を添付し、本社所在地を管轄する経済産業局に、事前に予約をしたうえで、説明に行きます。説明には申請書の内容がわかる方が行き、申請書を持参します。
Step④ 経済産業局からの確認書の発行
申請者から経済産業局へ説明が終わると、経済産業局では申請内容が制度趣旨に照らし適切であるか判断します。経済産業局が適切と判断した場合には確認書(様式3)と関連書類が渡されます。経済産業局の確認期間は概ね1ヵ月以内とされています。
Step⑤ 主務大臣へ経営力向上計画の申請(受理)
申請者は、④の確認を受けた設備について経営力向上計画に記載し、計画申請書およびその写しとともに④の確認書および確認申請書(いずれも写し)を添付して、主務大臣に経営力向上計画を申請します。基本的には申請した時点で受理されたものとみなされます。
Step⑥ 主務大臣からの経営力向上計画の認定書の交付(認定)
認定書交付までの標準処理期間は概ね1ヵ月です。承認されると、経営力向上計画の認定書と計画申請書の写しが主務大臣から申請者に交付されることになります。
Step⑦ 設備の取得
認定を受けた経営力向上計画に基づき取得した経営力向上設備等については、税法上の他の要件を満たす場合には、税務申告において中小企業経営強化税制上の優遇措置の適用を受けることができます。
Step⑧ 税務申告
税務申告に際しては、④の確認書、⑤の申請書および⑥の認定書(いずれも写し)を添付します。
Step⑨ 実施状況の報告
④の確認書の交付を受けた申請者は、設備の取得等をする年度の翌年度以降3年間について、当該投資計画に関する実施状況報告を、設備の取得等を行った事業年度の翌事業年度終了後4ヵ月以内に、確認書の交付を受けた経済産業局に提出する必要があります。
以上が、B類型の適用手続きとなります。少し複雑かとは思いますが、通常はStep①で事前確認を受ける公認会計士や税理士が適切にリードしてくれると思いますので、まずは相談してみましょう。
設備の取得時期について
最後に、設備の取得時期について説明いたします。取得時期を外してしまうと、税制優遇を受けられなくなる可能性もあるので、注意してください。
設備の取得時期は、原則として「⑥の経営力向上計画の認定を受けてから」となります。
④の経済産業局の確認に概ね1ヵ月、⑥の主務大臣の認定の標準処理期間も概ね1ヵ月ですので、合計2ヵ月は余裕を見て③の経済産業局への確認申請をする必要があるということです。
ただし、上記の原則に従うことができない場合には、「設備取得日から60日以内に経営力向上計画を申請すれば可」という例外規定があります。
したがって、④の経済産業局からの確認書を受理後、⑤の経営力向上計画の申請以前に設備を取得し、設備取得後60日以内に経営力向上計画の申請を行うという方法です。
この場合、税制の適用を受けるためには、遅くとも設備を事業の用に供した年度内に⑥の経営力向上計画の認定を受け、⑧の税務申告に認定書の写しを添付する必要があります。
また、例外規定を適用する場合であっても、④の経済産業局への確認申請は設備取得より前に行う必要があります。
まとめ
いかがだったでしょうか? 対象設備要件や手続きなど複雑と感じたかもしれませんが、基本的には事前確認を受ける公認会計士や税理士が適切に導いてくれると思います。また、経営強化税制に関する疑問はこちらも参考になると思います。
適用できれば大きな税制優遇を受けられる制度ですが、その期間も限られています。設備投資をお考えの方は、早めに公認会計士や税理士などに相談しましょう。
Photo:Getty Images