給与支払報告書とは?書き方や提出先、源泉徴収票との違いを解説

2024/03/01更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

給与支払報告書は、従業員に給与を支払っている事業者が、必ず作成・提出しなければいけない書類です。給与支払報告書の内容は源泉徴収票と似ているため、両者を混同して捉えている方もいるかもしれません。しかし、給与支払報告書と源泉徴収票は別の書類であり、目的や提出先、書き方などが異なります。

ここでは、給与支払報告書の役割や提出先、具体的な書き方の他、源泉徴収票との違いについて解説します。

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給与支払報告書は、従業員への給与額を市区町村に提出するための書類のこと

給与支払報告書は、1年間に事業者が個々の従業員にそれぞれどれくらい給与を支払ったのか、を確認するための書類です。給与支払報告書の内容をもとに、市区町村はその居住者に賦課徴収すべき住民税額を算定します。

住民税額の計算にあたり、市区町村は、居住者それぞれの前年の所得がいくらであったかを知る必要があります。そのため、事業者は1月1日~12月31日に従業員に支払った給与について、翌年1月31日(31日が土日祝日の場合は、翌平日)までに、給与支払報告書を提出しなければなりません。提出先は、翌年1月1日時点に、各従業員が居住する、それぞれの市区町村です。

給与支払報告書の作成は、正社員やパート、アルバイト、役員など、給与や役員報酬の支払いを受けているすべての方が対象となります。基本的に、給与支払報告書の提出は、従業員を雇用している事業者の義務であり、法人でも個人事業主でも提出が必要です。事業者が提出した給与支払報告書をもとに、従業員の納めるべき翌年の住民税額が決定します。

給与支払報告書は2種類の書類で構成される

給与支払報告書は、「個人別明細書」と「総括表」という2つの書類で構成されています。

個人別明細書は、給与の支払いを受ける従業員の個人情報が記された書類です。従業員の氏名、住所、生年月日、個人番号、給与額、社会保険料の控除額など、源泉徴収票と同じ内容が記載されます。

一方の総括表は、個人別明細書をまとめる表紙のような役割を持つ書類です。総括表は従業員が居住する市区町村ごとに作成し、その市区町村に何人分の個人別明細書を提出するか、報告人員の中に含まれている退職者の人数などを記載します。

つまり、給与支払報告書を作成する際には、従業員の人数分の個人別明細書と、従業員が住む自治体数分の総括表が必要になるということです。同じ市区町村に複数の従業員が住んでいる場合は、複数人の個人別明細書をまとめ、総括表をつけて提出します。

給与支払報告書と源泉徴収票の違い

給与支払報告書のうち個人別明細書には、源泉徴収票とほぼ同じ内容を記載しますが、両者は目的と提出先が違います。

給与支払報告書は、前述のとおり市区町村が賦課徴収する住民税を計算するための基となる書類で、提出先は、各従業員の居住地であるそれぞれの市区町村です。それに対して源泉徴収票は、給与額や源泉徴収した所得税額を示すための書類で、税務署(給与等の支払金額が一定額以上の場合)と従業員本人に提出(交付)します。

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給与支払報告書の書き方

ここからは、給与支払報告書の具体的な書き方を見ていきましょう。「個人別明細書」と「総括表」のそれぞれについて、順番に解説していきます。

個人別明細書の書き方のポイント

個人別明細書は、源泉徴収票を含めた4枚の複写式になっています。
記載項目は下記のとおりです。

支払いを受ける者

給与の支払いを受ける従業員の住所や氏名、マイナンバーなどを記載します。住所は1月1日現在のものになります。受給者番号や役職名などは、なければ空欄で構いません。

支払金額

その年に支払った給与の総支給額(毎月の給与と賞与)を記載します。通常は、前年1月1日から12月31日までの1年間に支払った給与の総額です。

給与所得控除後の金額(調整控除後)

源泉徴収票をもとに、給与所得控除後の金額を記載します。年末調整をしていない従業員の場合は、空欄で提出します。

所得控除の額の合計額

社会保険料控除や生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除などの所得控除の合計額を記載します。年末調整をしていない従業員は、空欄になります。

源泉徴収税額

年末調整後に確定した、源泉所得税および復興特別所得税の合計額を記載します。年末調整をしない場合は、対象となる年(通常は前年)中に給与から源泉徴収した源泉所得税および復興特別所得税の合計額を記載します。

控除対象配偶者や扶養親族、障害者の数

控除対象となる配偶者や扶養親族、障害者がいる場合は、それぞれの人数や控除額などを記載します。

社会保険料等の金額、控除額

給与から控除した社会保険料の総額と、「給与所得者の保険料控除申告書」にもとづいて控除した、社会保険料と小規模企業共済等掛金の額の合計額を記載します。

配偶者の合計所得

配偶者が控除対象の場合は、配偶者の合計所得を記載します。控除対象配偶者がいない場合は、記載不要です。

扶養親族

控除対象の配偶者や扶養親族、16歳未満の扶養親族の名前やマイナンバーを記載します。

国民年金保険料等の金額、旧長期損害保険料の金額

その年に支払った国民年金保険料や旧長期損害保険料の額などを記載します。

支払者

給与を支払う事業者の住所や名称、法人番号またはマイナンバーなどの情報を記載します。

摘要欄(赤網掛け部分)

特定の事情によって住民税の納付を普通徴収にしている場合、その事情を記入します。

普通徴収とは、市区町村から送付される納税通知書を使って、納税者本人が住民税を納める方法です。給与所得者は、給与からの天引きによって住民税を納める特別徴収が原則となりますが、特定の事情が認められれば普通徴収に変更することができます。特定の事情と認められるケースは地域によって異なりますが、例えば東京都では下記のような統一基準があります。この場合、給与支払報告書の摘要欄に、該当する符号を記載します。

東京都統一基準

  • 普A 総従業員数が2人以下
  • 普B 他の事業所で特別徴収を行っている(乙欄該当者等)
  • 普C 給与が少なく税額が引けない(例:給与支払額100万円以下等)
  • 普D 給与の支払いが不定期
  • 普E 個人事業主の専従者
  • 普F 退職または退職予定者

総括表の書き方のポイント

総括表の主な記載項目は下記のとおりですが、細かい内容は市区町村によって異なる可能性があります。
作成時には、提出先の市区町村が提示する記入例を確認しましょう。

給与の支払期間

給与を支払った期間を記載します。通常は前年の1月分から12月分までです。

提出区分

通常は「年間分」に丸をつけます。退職者のみの給与支払報告書である場合は「退職者分」に丸をつけます。

法人番号

給与を支払う事業者が法人の場合は法人番号を、個人事業主の場合はマイナンバーを記入します。

給与支払者

給与を支払う事業者の住所、名称、代表者名を記入します。

事業種目

事業内容を記入します。例えば、小売業、建設業、製造業、サービス業などです。

提出先市区町村数

給与支払報告書を提出する市区町村の数を記載します。

受給者総人員

その年(給与支払報告書を提出する年)の1月1日現在在籍し、給与の支払いを受けている従業員数の合計を記載します。

報告人員

提出先の市区町村に居住する従業員について、特別徴収の対象者、普通徴収の対象者(退職者)、普通徴収の対象者(退職者を除く)の人数をそれぞれ記し、最後に合計人数を記載します。

所轄税務署

法人であれば法人税、個人事業主であればその個人事業主の所得税の納税地を所轄する税務署名を記載します。

給与の支払の方法およびその期日

時給・日給・月給といった給与の支払い方法と、その支払日を記載します。例えば、月給制で毎月25日が給料日である場合、「月給 毎月25日」となります。

給与支払者番号

市区町村から通知された給与支払者番号を記入します。

給与支払報告書の手続き

給与支払報告書の提出手続きは、下記のような流れで行います。

1. 12月中に市区町村から総括表が送付されてくる

住民税の特別徴収を行っていれば、12月中に従業員が居住する各市区町村から総括表が送付されてきます。総括表には、あらかじめ会社名などが印字されています。

2. 年末調整を実施する

個人別明細書は源泉徴収票とほぼ同じ記載内容なので、作成するには年末調整を完了させておく必要があります。給与計算ソフトなどを活用すれば、個人別明細書と源泉徴収票を同時に作成することもできます。

3. 個人別明細書を仕分けし、総括表を作成する

個人別明細書を作成して、従業員が居住する市区町村ごとに仕分けし、総括表と合わせて一式にまとめます。

4. 1月31日(31日が土日祝日の場合は、翌平日)までに市区町村に提出

給与支払報告書の提出方法は「書面による提出(郵送または窓口へ提出)」「光ディスク等による提出」「電子申告(eLTAX 新規タブで開く)による提出」の3種類です。1月31日(31日が土日祝である年は次の平日)までに、従業員が居住する市区町村に提出しましょう。なお、光ディスク等または電子申告(eLTAX)による提出の場合は、事前手続きが必要です。

給与支払報告書の注意点

2017年度(2016年分)の給与支払報告書から、給与を受ける従業員本人分とその扶養家族の分のマイナンバーの記載が必要になりました。マイナンバーの収集や管理は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)にもとづき適切に行ってください。

また、税制改正によって、2021年1月以降に提出する給与支払報告書については、前々年に税務署に提出した給与所得の源泉徴収票の枚数が100枚以上である場合、光ディスク等または電子申告(eLTAX)による提出が義務付けられています。改正前の枚数基準は1,000枚以上だったので、新たに義務化の対象になっていないかをきちんと確認しておきましょう。

なお、市区町村によっては、年間の給与支払額が30万円以下の退職者については、特例として給与支払報告書の提出が不要です。給与支払金額が30万円を超える場合は、退職者であっても給与支払報告書の提出義務があるため注意してください。なお、在職者は給与支払額が30万円以下であっても、給与支払報告書の提出が必要です。

給与支払報告書は期限までに必ず提出を

給与支払報告書は、法人、個人を問わず、従業員に給与を支払っている事業者が必ず作成しなければいけない書類です。従業員の人数分の個人別明細書と、居住地の自治体数分の総括表を作成し、期限までに各市区町村に提出しなければなりません。書類の作成や提出準備には手間がかかるため、少しでも業務を効率化したいと考えている方も多いのではないでしょうか。

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この記事の監修税理士法人古田土会計
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