小売業(雑貨屋さんなど)の確定申告

雑貨屋など、店舗で商品を販売する小売業。開業するときにはさまざまな初期投資が必要ですし、扱う商品も大量にありますね。
今回は、小売業が、日々の記帳や確定申告をするうえで備えておきたいことについて解説していきます。
[おすすめ]確定申告はこれひとつ!無料で使える「やよいの青色申告 オンライン」
目次
- POINT
-
- カード決済の売上は販売時に計上する
- 棚卸しは基本的に最後に仕入れた値段で集計する
- 店舗の初期投資は、その内容によって経費化の方法が違う
カード決済などでの売り上げは?
実店舗では現金による売り上げがほとんどですが、最近では電子マネーやタブレット端末での決済サービスなどが普及していることもあり、カード決済に対応しやすくなっています。
カード決済などで売り上げた場合には、販売時に売掛金として売上を計上し、カード決済分が預金に入ったときには売掛金の入金として経理をするのが原則です。
仕訳例:10,000円分の商品をカード決済により販売し、後日決済代行会社から手数料400円を差し引かれた9,600円が入金した。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
(販売時) 売掛金 |
10,000 | 売上高 | 10,000 |
(入金時) 普通預金 |
9,600 | 売掛金 | 10,000 |
支払手数料 | 400 |
(注)支払手数料は販売時に計上しても可
しかし、帳簿づけの煩雑さから、簡便的に「カード決済分は預金に入金したときに売上を計上する」というケースが見受けられます。その場合、売上として計上すべきなのは販売した日となりますので、決算期末においてまだ入金していないカード決済の代金があれば、上記販売時のように売掛金としてその年の売上に追加して計上する必要があります。
棚卸しの単価はいつのもの?
雑貨屋などの小売業では、扱う商品が少額かつ多品目にわたります。そのため、適切な商品管理を行うためには、ある時点で在庫がどのくらいあるかを把握するための「棚卸し」が必要です。少なくとも月1回は棚卸しをしたいところですが、そこまで手が回らないという場合でも、年末の決算時にはその年の売上原価を計算するために棚卸しをしなければなりません。売上原価は、以下の算式で計算されます。
売上原価=年初(期首)の棚卸高+年間の仕入高-年末(期末)の棚卸高
棚卸しは、品目ごとにその在庫数と単価を書き出して一覧にし、在庫金額を集計する作業です。その「棚卸表」は決算関係書類として青色申告であれば原則として7年間、白色申告であれば5年間の保存義務がありますから注意しましょう。
さて、ここで出てくるのが「棚卸しをするときの単価とは?」という疑問です。棚卸しは仕入れた在庫がいくらあるかを計算するものですから、単価は「仕入れ値」を使うのですが、同じ商品でも仕入れのたびに仕入れ値が違うということはよくあります。所得税法上、税務署にとくに届け出を出していない場合は、年末に一番近い時期に仕入れたときの単価を使う「最終仕入原価法」で計算することになっています。
【参考記事】
個人事業主が棚卸しをする時に節税する方法
店舗を借りたときの取り扱いなどは?
実店舗で開業した場合、初期投資として店舗の保証金や、内外装や陳列棚など、さまざまな支出があります。これらは内容によって経費になるもの・ならないもの、経費でも数年かけて経費化(減価償却)するものなどに分かれてきますので、いくつか紹介します。
店舗の賃貸借契約
敷金・保証金は貸主に預けるお金ですので経費とはなりません。契約時に不動産業者へ支払う仲介手数料などはその年の経費となります。礼金などは、20万円未満のものであれば地代家賃などとしてその年の経費となりますが、超える場合には「繰延資産」として5年(契約期間が5年未満で更新時に更新料などを支払う場合はその契約期間)で経費化していくことになります。
店舗の内外装
賃借している物件に内外装の造作を加えた場合、原則としてその建物の耐用年数や造作の種類などから見積もった年数で経費化していきます。ただし、電気設備など「建物附属設備」に分類されるものはその種類ごとの耐用年数を使います。また、ルーバーや壁板、作りつけのカウンターや棚などで3年以内に取替えが見込まれるものであれば「店用簡易設備」として3年で経費化することもできます。
陳列棚などの備品
陳列棚などは、組み立てた1組の状態で金額が10万円未満であれば「消耗品費」などとしてその年の経費となり、それを超える場合には減価償却を考える必要があります。なお、青色申告の場合には、その1組が30万円未満であれば年間300万円までその年の経費にできるという特例があります。
まとめ
いかがでしょうか。実店舗では実際に商品を並べることから、さまざまな経費がかかってきます。その内容によっては上記のように数年かけて経費化するものもありますから、後で指摘を受けて痛い思いをしないように確定申告に向けても注意しておきましょうね。
photo:Getty Images