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まさかの「黒字倒産」を避けるために

「黒字倒産」「勘定合って銭足らず」こんな言葉を聞いたことはありますか?

黒字、つまり儲かっているのに倒産するってどういうこと? と思われるかもしれません。倒産というのは黒字、赤字に関係なく、手元に資金が無くなり(資金ショート)、企業活動の継続が困難になった場合に訪れます。

したがって、会計上の利益の把握だけでなく、資金繰りの把握も企業にとっては重要となるのです。

お知らせ

2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!

  • 優良企業であっても、資金繰りいかんでは倒産してしまう
  • 資金繰り計画を作成し、毎月の資金繰りを把握していれば黒字倒産は避けられる
  • 収支のタイムラグを埋めるためには「融資」を受けることも検討しよう

黒字倒産の仕組み

では、実際にどのようにして黒字倒産が起こるかということを、具体例を用いて説明したいと思います。
下の表を見てください。

日付 取引 収支 現預金残高
①3/31         50
②4/1 買掛仕入 40     50
③4/15 売掛売上 100     50
④5/1     仕入支払 △40 10
⑤5/10 経費 30 経費支払 △30 △20
⑥6/15     売上入金 +100 80

この会社は、①3月31日時点で現預金の残高が50でした。

その後、②4月1日に買掛仕入40、③4月15日に売掛売上100を計上しています。どちらも掛取引ですので、現預金の動きはありません。

その後④5月1日に買掛金の支払40をし、⑤5月10日には経費の支払をしようとしたところ、現預金不足、つまり資金ショートに陥りました。

必要な経費(給与や外注費、家賃、リース料など)を支払うことができないということは、企業活動ができなくなったということですので、おそらく6月15日の入金を待たずしてこの会社は倒産してしまうでしょう。

これが黒字倒産の起こる仕組みです。

この会社は③売上で100を計上し、②仕入(売上原価)が40、⑤経費が30ですので、30の利益を計上しています。つまり黒字企業です。経営者、従業員が優秀でちゃんと利益を上げているのです。おそらく雇用も創出しているでしょうし、外注先、仕入先などへの仕事も創出しています。利益が出ているので倒産していなければ税金も払って社会に貢献できたでしょう。

ただ、そういう優良企業であっても、資金繰りいかんでは倒産してしまうのです。これは大きな社会的損失です。

黒字倒産を回避するためには

では、先ほどの企業はどのようにして黒字倒産を回避すればよかったのでしょうか。

この企業が資金繰り計画を作成し、毎月の資金繰りを把握していれば、5月に資金がショートすることがわかっていたと思います。

5月に資金ショートすることがわかっていれば、その対策も立てられます。⑦4月5日に借入50をしたと想定して資金繰りを見てみましょう。

日付 取引 収支 現預金残高
3/31         50
①4/1 買掛仕入 40     50
⑦4/5     借入 +50 100
②4/15 売掛売上 100     100
③5/1     仕入支払 △40 60
⑦’5/1 支払利息 1 元利支払 △1 59
④5/10 経費 30 経費支払 △30 29
⑦’6/1 支払利息 1 元利支払 △1 28
⑥6/15         128

紫の行が借り入れによって追加された取引です。

⑦4月5日の借入50により、現預金残高が100に増えました。

5月1日には③借入金の元金返済と⑦’利息の支払、合わせて1がありますが、それを加味しても④5月10日の経費支払で資金ショートは起こしません。

6月1日にも⑦’借入金の元利返済がありますが、それも現預金残高の範囲内で行われ、無事⑥6月15日の売掛金の入金を迎えることができ、会社は倒産せず継続することができています。

利益は支払利息の分、減少していますが、倒産するよりはずっとましでしょう。

融資は収支のタイムラグを埋めるもの

会計上の利益は、最終的には必ず現預金になります。しかし、会計上の利益が現預金になるタイミングは、取引ごとにさまざまなのです。

先ほどの例の売上代金の回収のように、現預金を増加させるのに時間がかかるものもあれば、経費の支払のように即時に現預金を減少させる取引もあります。こういった収支のタイムラグを埋める方策を練ることが資金繰り計画なのです。そして中小企業にとって、収支のタイムラグを埋めるためのほとんど唯一と言って良い手段が「融資」なのです。

私のように融資の支援を主な業務としていると、さまざまなご相談を受けます。中には、大きな設備投資を自己資金でしようとする方もいらっしゃいます。そんな方には以下の図で説明しています。

図1

図1は、設備投資をした年から設備の耐用年数が訪れる年までの、各期の現預金の動きです。

設備投資をした年(例:設備投資額200)は、大きくマイナスとなっていますが、その後の年は、設備投資により売上が向上し耐用年数の期間を通じて継続的に入金が増えています。

耐用年数の間の入出金を合計すればプラスになるのでしょうが、入金と出金のタイミングに大きなズレがありますので、設備投資をした年は資金繰りが一気に悪化し、資金ショートの可能性が高まります。

図2

それを回避するには、図2のように設備投資の年に、設備投資に見合うだけの融資(例:融資額200)を受けます。融資を受けることで設備投資の年であっても資金繰りを悪化させません。

さらに、その後の年で融資を返済していくのですが、これは設備投資により増加した売上入金で賄うことができます。

このように、設備投資をする年に必要な融資を受け、さらに融資の返済年数を耐用年数に合わせることで、収支のタイムラグを埋めるのです。

黒字倒産を防ぐためにどこから手を付けるべきか

では実際問題として、黒字倒産を防ぐためにはどこから手を付ければ良いのでしょうか。結論としては、資金繰り表を作成し、将来発生するかもしれない資金不足に備え、融資など必要な資金調達手段の準備をする、ということになると思います。

資金は日々動くものですので、日次の資金繰り表を作成できればベストですが、作成の負担もありますので、最低でも月次資金繰り表を作成すべきです。そのためには、将来の損益計画が必要不可欠です。

月次で予測損益計算書を作成し、そこから資金繰り表に落とし込んでいきます。具体的には、得意先毎や取引種別毎に入金サイクルを把握し、費用は支払先毎や勘定科目毎に出金サイクルを把握し、予測資金繰り表に反映させます。

また、将来の設備投資や借入金の返済など、損益計算書に現れない収支についても、予測資金繰表に反映します。損益計算書も資金繰表も予測ですので、ある程度の仮定を置く必要がありますが、その精度はコストパフォーマンスを考慮して設定します。会計ソフトのレポートなどを上手に利用すれば、実績から将来予測を合理的に導きやすくなると思います。

例えば、デスクトップアプリ「弥生会計」シリーズ(やよいの青色申告を除く)には、家賃や給与などの定期的な取引と売掛金や買掛金の取引入力によって、入力日付から60日後までの資金残高の推移をシミュレーションする機能があります。「弥生会計プロフェッショナル」以上であれば、入力したデータをもとに、現預金の収支と残高を把握するための月別の詳細な資金繰り資料も作成できます。

まとめ

いかがだったでしょうか?

黒字を計上している企業でも倒産する可能性はあります。さらに、成長中の企業で、毎月売上や経費の額が増加しているような企業や設備投資をどんどん行っている企業は黒字倒産する可能性が高まります。

黒字倒産を防ぐためには、資金繰り表の作成が不可欠で、そのためには会計ソフトのレポート情報などを上手に利用して、将来予測をする必要があります。
皆さんもこれを機に、資金繰り表の作成に取り組みましょう!

photo:PIXTA

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