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「民泊」の確定申告ガイド

東京オリンピックをひかえ、話題となっている「民泊」。平成29年(2017年)6月には、いわゆる「民泊新法」も可決・成立し、平成30年(2018年)6月には施行される見込み(※)です。今回は、民泊の確定申告について解説していきます。

(※)平成29年(2017年)6月16日に公布された「住宅宿泊事業法」の施行の日を定める政令と住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例の基準等を定める政令が、平成29年(2017年)10月24日に閣議決定されました。これにより、「住宅宿泊事業法」は、平成30年(2018年)6月15日に施行されます(2017年10月24日 編集部追記)。
【参考】
国土交通省 観光庁:「住宅宿泊事業法の施行期日を定める政令」及び「住宅宿泊事業法施行令」を閣議決定

POINT
  • 民泊の経費は、自宅共用部分の按分に気をつける
  • 小遣い稼ぎ程度で自宅を民泊に使用するなら「雑所得」で確定申告
  • 自宅を民泊で使用すると、住宅ローン控除が受けられない可能性がある

民泊の取引についての経理方法

民泊を始めるにあたっては、自宅を提供するにしても備品を整えるなど初期投資が必要ですし、さまざまな経費も発生します。ここでは、自宅を利用した民泊で想定されるいろいろな取引の経理方法を紹介します。

仲介サイトを利用した民泊で、宿泊料30,000円から手数料1,000円を差し引かれて29,000円が振り込まれた

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 29,000 売上 30,000
支払手数料 1,000

宿泊者用に布団セット30,000円を購入した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 30,000 現金 30,000

この他にもエアコンやテーブル、棚など、10万円未満のものは消耗品費として1回で経費に計上できますが、10万円以上のものは減価償却を考慮する必要があります。

電気代8,000円が引き落とされたが、宿泊者用に25%の1,600円を使用している

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
水道光熱費 1,600 普通預金 8,000
事業主貸 6,400

自宅と宿泊者で共通して使用するものは、使用量や使用スペースの割合など合理的な基準で宿泊者のために使った部分を計算して、経費とすることができます。これを家事按分といいます。水道光熱費のほかにも、Wi-Fiなどの通信費や、持ち家であれば自宅の固定資産税、建物の減価償却費、住宅ローンの利息、火災保険などが経費となるでしょう。賃貸物件を又貸しして民泊に使用する場合は、家賃なども按分の対象となります。

宿泊者の利用に伴って壁のクロスが汚れてきたのでクロス替え60,000円を行った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
修繕費 60,000 普通預金 60,000

クロス替えなど通常の維持管理・原状回復などにあたるものは修繕費として経費となります。もちろん、自宅全体に施工した場合には、宿泊者利用部分に按分計算する必要があります。

確定申告での所得区分など、税金のことあれこれ

民泊という形態が、法整備も含めて進行中のものであることから、行政からも明確な判断は示されていないところですが、一般的にサラリーマンが小遣い稼ぎ程度に自宅で民泊を行うとしたら、「雑所得」に該当するでしょう。この場合、給与以外には雑所得だけということであれば、民泊の売上から各種経費を差し引いた儲け(雑所得)が20万円以下であれば確定申告は必要ありません。
民泊は通常、宿泊ごとに予約管理や清掃などが必要ですから、いくつもの物件で頻繁に民泊を行うとなると、事業所得に該当するでしょう。この場合は、税金を納めるうえでさまざまな特典がある青色申告を検討してみてはいかがでしょうか。
また、アパート経営などの方が賃貸物件の一部を民泊に使用する場合もあるでしょう。「不動産所得」になりそうですが、この場合も上記のさまざまな管理業務がありますので、物件を利用した事業所得とみるのが相当ではないでしょうか。
一般に人の居住のための住宅の貸付は、消費税の課税対象とはなりませんが、旅館やホテルでの宿泊と同様に民泊のような短期間での宿泊の場合は消費税の課税対象となります。民泊の収入が1千万円を超えるというのは、自宅を利用する程度ではなかなかないとは思いますが、原則として2年前の課税対象の収入が1千万円を超えていると消費税の課税事業者となりますから注意しましょう。
【参考記事】
知っておきたい基礎知識「消費税」07.消費税の非課税取引の仕組み
知っておきたい基礎知識「消費税」03.消費税の申告・納税が課される事業者と、免税される事業者とは?

住宅ローン控除を受けている人は控除の要件に注意

民泊とは基本的に自宅や空き家を宿泊の場として提供することです。ここで、個人が確定申告をするときに注意したいのが、住宅ローン控除を受けている場合です。
住宅ローン控除は、原則として本人が自宅に継続して住んでいることが適用の要件となります。
例えば、自宅を民泊として提供するときに、住んでいる本人が泊まらないようなケースでは、「継続して住んでいない」とみられて住宅ローン控除の適用が受けられないことが考えられます。
また、本人が住んでいながら宿泊者用に個室を用意しているケースでは、住宅ローン控除を受けられる要件のひとつにある「専用の居住部分が2分の1以上」という制限に注意する必要があります。本人の居住部分が2分の1未満となると、適用が受けられませんし、2分の1以上だったとしても、控除の適用があるのは居住部分の割合で制限されてしまいます。住宅ローン控除はマイホーム購入を促進するための制度ですから、事業で経費にする部分までは適用できないのです。

まとめ

いかがでしょうか。
法改正も伴って、民泊ビジネスが緩和される方向にはなっていますが、そこで得た利益は当然に税金の対象となります。小遣い稼ぎと思っていたら、申告もれになっていたというケースもこれから出てくるように思います。日々の帳簿づけを行って、確定申告の時期になってから慌てないようにしておきましょう。
なお、継続的な居住物件については、固定資産税の特例があり税額が安くなります。ところが、民泊利用についてはその特例が認められずに取り消しとなった事例も出てきているようですのでご注意ください。

photo:Getty Images

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