法人の口座に預金利息が入ったら?

2021/03/31更新

この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

法人の預金口座につく利息はどのような経理上の処理をするのでしょうか? 個人事業主の場合と比べて、法人の場合だと違いはあるのでしょうか。

今回は、法人が受け取る利息の経理方法、確定申告での控除のしくみについて解説していきます。

【法人向け】人気のおすすめ会計ソフト(クラウド)【弥生会計オンライン】資料ダウンロード

POINT

  • 法人が受け取る預金利息はすべて収益として記帳する
  • 受取利息を記帳するときは源泉所得税等を把握しておく必要がある
  • 源泉所得税等の控除を受けるには確定申告での調整計算が必要

預金利息の取り扱いは?

普通預金では日々の残高に対してその日の金利で利息を計算し、半年に一度などの期間で預金利息が預金残高に組み入れられます。
法人の場合は、その法人が持っている資産などの動きはもれなく記帳する必要があり、受け取った利息は「受取利息」として収益に計上します。
さて、利息からは所得税・復興特別所得税あわせて15.315%が源泉徴収(天引き)されています。ここでひとつ問題になることがあります。受け取った利息に対して、所得税・復興特別所得税という税金がかかったわけですが、利益をもとに計算する法人税の確定申告では法人税がかかることになります。ということは、利息という儲けに対して所得税・復興特別所得税と法人税とで2回税金がかかることになりますよね。
そこで、法人税では源泉徴収された所得税・復興特別所得税を法人税の前払い的なものとして、法人税の確定申告で計算した税額から源泉徴収分を差し引いて税金を納めることになっています。
ちなみに、個人で預金口座を持っている場合は、利息に対して所得税・復興特別所得税15.315%のほか、住民税5%も源泉徴収されます。ただし、個人の場合は源泉分離課税といって、この税率での源泉徴収だけで納税まで完結するため、所得税の確定申告に含める必要がないということにご注意ください。

無料お役立ち資料【一人でも乗り越えられる会計業務のはじめかた】をダウンロードする

無料お役立ち資料【はじめての会社経営】をダウンロードする

実際の経理方法は?

それでは、預金利息などを受け取った時の経理方法をご紹介しておきます。

預金利息を受け取った場合

例:普通預金口座に利息100円から源泉所得税等15円を差し引かれた85円が入金された
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
普通預金 85 受取利息 100 預金利息
法人税等 15 国税、地方税

口座に入金されたのは税引き後の85円ですが、仕訳の上では総額100円の収益が上がり、法人税等15円の費用を支払って、残金の85円が普通預金に入金したというように記帳します。これを総額主義といいます。
なお、入金された金額で記帳する純額主義という簡単な経理方法もありますが、この後説明しますが、法人税の確定申告で源泉所得税等を把握しなければなりませんし、細かいところでは消費税の計算に影響してしまう場合もあります。

例:上記の利息の入金を純額主義で仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
普通預金 85 受取利息 85 預金利息
  • 帳簿に記帳されない15円の所得税・復興特別所得税を別途把握しておく必要があります

法人税の確定申告でやることは?

上記の源泉徴収された所得税・復興特別所得税を、確定申告で法人税から控除することを「所得税額控除」といいます。所得税額控除を受けるためには、控除の対象になる金額を計算することと、法人税の対象になる利益について金額の調整をすること、そして実際に法人税から控除することの3つの処理が必要になります。
先ほどの仕訳例の受取利息100円、源泉所得税等15円を例に見てみましょう。

1.控除の対象になる金額を計算する

預貯金等の利子について源泉徴収された所得税・復興特別所得税については、その全額が所得税額控除の対象となります。この控除の対象になる金額の計算は、「法人税申告書別表六(一)」という様式に記入します。

所得税額の控除に関する明細書

なお、株式の配当や公社債の利子、投資信託の収益分配金など一定のものについては、その配当などの計算の基になった期間のうち、法人が元本を所有していた期間の割合で所得税等を按分するなどの計算が必要になります。

参考

国税庁:所得税額控除新規タブで開く

2.法人税の対象になる利益について金額の調整をする

法人税では、決算で確定した利益から、税務上で収益になるもの・ならないもの、費用になるもの・ならないものを足し引きして税金の対象になる所得金額を計算します。預金利息そのものは税務上も収益ですので何も処理する必要はありません。しかし、源泉徴収された所得税・復興特別所得税は、法人税の前払い的なものとして税務上で費用になりませんから、利益に加算する必要があります。別表六(一)で計算した控除の対象になる金額を別表四に書き写して、決算書上の利益に加算する計算をします。

所得税額の控除に関する明細書

3.法人税額から控除する

別表六(一)で計算した控除の対象になる金額は、上記の別表四で利益に加算するとともに、法人税の前払い分として別表一(一)で計算した法人税から控除を受ける計算をします。

所得税額の控除に関する明細書

なお、法人税額が少なかった場合や赤字でゼロだった場合などで、法人税額から控除しきれなかったときは、その控除しきれなかった金額が還付されます。

まとめ

いかがでしょうか。
預金利息を受け取った場合は、単純に収益として経理すればよいのですが、法人税の確定申告で控除を受けるために源泉所得税等を把握しておく必要があります。経理方法で紹介した総額主義での記帳は、面倒ですが決算の時に帳簿上で容易に集計することができます。会計ソフトなどで帳簿づけをされるようであれば、ソフトの辞書機能などで預金利息の入金を定型の取引として登録しておくとラクですね。
法人税の申告は複雑です。ここでご紹介したように会計ソフトで記録や仕訳はしっかりとつけておいて、申告そのものは税理士さんにお任せするのをお勧めします。

photo:Getty Images

無料お役立ち資料【一人でも乗り越えられる会計業務のはじめかた】をダウンロードする

無料お役立ち資料【はじめての会社経営】をダウンロードする

会計ソフトなら、日々の帳簿付けや決算書作成もかんたん

日々の帳簿付けと法人決算をスムースに進める大きなポイントが、使い勝手の良い会計ソフトを選ぶこと。そんなときにおすすめなのが、弥生のクラウド会計ソフト「弥生会計 オンライン」です。

「弥生会計 オンライン」は、初めて会計ソフトを導入する方でもかんたんに使える、クラウド会計ソフトです。初年度無料ですべての機能が使用できるので、気軽にお試しいただけます。

簿記・会計の知識がなくても使える機能と画面設計

「弥生会計 オンライン」は、簿記や会計の知識がなくても使える機能と画面設計で、初めて会計ソフトを使う方でも安心です。取引の日付や金額などを入力するだけで、小規模法人に必要な複式簿記帳簿が自動作成できます。

また、日々入力したデータは顧問の税理士・会計事務所(※弥生PAP会員の税理士・会計事務所)とクラウド上で共有できます。受け渡しの手間が省けて効率的です。

銀行明細、クレジットカードなどの取引データを自動で取込できる

「弥生会計 オンライン」を使えば、銀行明細やクレジットカードなどの取引データの他、レシートや領収書のスキャンデータ、スマートフォンアプリで撮影したデータを自動で取り込み、自動で仕訳することができます。金融機関からダウンロードした取引明細や帳簿、ご自身で作成したCSV形式のファイルを取り込むこともできるため、入力と仕訳の手間を省くことが可能です。また、スマートフォンから直接入力もでき、出先や移動中の時間を効率良く使えます。

日々の取引を自動で集計でき、見やすいレポートで管理できる

「弥生会計 オンライン」を使えば、入力したデータをもとに日々の取引を自動で集計し、さまざまなレポートを自動で作成することができます。わかりやすいグラフレポートをいつでも確認可能なため、経営成績がひと目で把握できます。

初心者でも安心!カスタマーセンターがしっかりサポート

業界に精通した専門スタッフが、電話、メールでの操作サポートに加え、仕訳や経理業務の相談にもお応えします。製品の操作が不安な方や会計の業務が苦手な方でも、充実のサポートで安心してお使いいただけます。

  • カスタマーセンターによるサポートは、「サポート付きプラン(ベーシックプラン)」が対象です。

【無料】お役立ち資料ダウンロード

一人でも乗り越えられる会計業務のはじめかた

起業したての方におすすめ。
日々の帳簿付けから決算まで、これひとつですぐわかる!
全34ページで充実の内容です。

この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

宮原裕一税理士事務所新規タブで開く」代表税理士。弥生認定インストラクター。
弥生会計を20年使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。経営者のサポートメンバーとして会計事務所を営む一方、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。

初心者事業のお悩み解決

日々の業務に役立つ弥生のオリジナルコンテンツや、事業を開始・継続するためのサポートツールを無料でお届けします。

  • お役立ち情報

    正しい基礎知識や法令改正の最新情報を専門家がわかりやすくご紹介します。

  • 無料のお役立ちツール

    会社設立や税理士紹介などを弥生が無料でサポートします。

  • 虎の巻

    個人事業主・法人の基本業務をまとめた、シンプルガイドです。

事業のお悩み解決はこちら