法人の口座に預金利息が入ったら?

個人事業主の通帳に預金利息が入ったら?の記事では、個人事業主の預金口座につく利息はどのように経理上の処理をするのか? という疑問について解説しました。では、法人の場合だと違いはあるのでしょうか。
今回は、法人が受け取る利息の経理方法、確定申告での控除のしくみについて解説していきます。
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目次
- POINT
-
- 法人が受け取る預金利息はすべて収益として記帳する
- 受取利息を記帳するときは源泉所得税等を把握しておく必要がある
- 源泉所得税等の控除を受けるには確定申告での調整計算が必要
預金利息の取り扱いは?
普通預金では日々の残高に対してその日の金利で利息を計算し、半年に一度などの期間で預金利息が預金残高に組み入れられます。
法人の場合は、その法人が持っている資産などの動きはもれなく記帳する必要があり、受け取った利息は「受取利息」として収益に計上します。
さて、利息からは所得税・復興特別所得税あわせて15.315%が源泉徴収(天引き)されています。ここでひとつ問題になることがあります。受け取った利息に対して、所得税・復興特別所得税という税金がかかったわけですが、利益をもとに計算する法人税の確定申告では法人税がかかることになります。ということは、利息という儲けに対して所得税・復興特別所得税と法人税とで2回税金がかかることになりますよね。
そこで、法人税では源泉徴収された所得税・復興特別所得税を法人税の前払い的なものとして、法人税の確定申告で計算した税額から源泉徴収分を差し引いて税金を納めることになっています。
ちなみに、個人で預金口座を持っている場合は、利息に対して所得税・復興特別所得税15.315%のほか、住民税5%も源泉徴収されます。ただし、個人の場合は源泉分離課税といって、この税率での源泉徴収だけで納税まで完結するため、所得税の確定申告に含める必要がないということにご注意ください。
実際の経理方法は?
それでは、預金利息などを受け取った時の経理方法をご紹介しておきます。
預金利息を受け取った場合
例:普通預金口座に利息100円から源泉所得税等15円を差し引かれた85円が入金された
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 85 | 受取利息 | 100 | 預金利息 |
法人税等 | 15 | 国税、地方税 |
口座に入金されたのは税引き後の85円ですが、仕訳の上では総額100円の収益が上がり、法人税等15円の費用を支払って、残金の85円が普通預金に入金したというように記帳します。これを総額主義といいます。
なお、入金された金額で記帳する純額主義という簡単な経理方法もありますが、この後説明しますが、法人税の確定申告で源泉所得税等を把握しなければなりませんし、細かいところでは消費税の計算に影響してしまう場合もあります。
例:上記の利息の入金を純額主義で仕訳
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 85 | 受取利息 | 85 | 預金利息 |
(※帳簿に記帳されない15円の所得税・復興特別所得税を別途把握しておく必要があります)
【参考記事】
【かんたん検索】スモビバ! 勘定科目・仕訳大全集 「普通預金に利息がつき、一部が源泉所得税等として差し引かれた。」
法人税の確定申告でやることは?
上記の源泉徴収された所得税・復興特別所得税を、確定申告で法人税から控除することを「所得税額控除」といいます。所得税額控除を受けるためには、控除の対象になる金額を計算することと、法人税の対象になる利益について金額の調整をすること、そして実際に法人税から控除することの3つの処理が必要になります。
先ほどの仕訳例の受取利息100円、源泉所得税等15円を例に見てみましょう。
1.控除の対象になる金額を計算する
預貯金等の利子について源泉徴収された所得税・復興特別所得税については、その全額が所得税額控除の対象となります。この控除の対象になる金額の計算は、「法人税申告書別表六(一)」という様式に記入します。
なお、株式の配当や公社債の利子、投資信託の収益分配金など一定のものについては、その配当などの計算の基になった期間のうち、法人が元本を所有していた期間の割合で所得税等を按分するなどの計算が必要になります。
【参考】
国税庁:所得税額控除
2.法人税の対象になる利益について金額の調整をする
法人税では、決算で確定した利益から、税務上で収益になるもの・ならないもの、費用になるもの・ならないものを足し引きして税金の対象になる所得金額を計算します。預金利息そのものは税務上も収益ですので何も処理する必要はありません。しかし、源泉徴収された所得税・復興特別所得税は、法人税の前払い的なものとして税務上で費用になりませんから、利益に加算する必要があります。別表六(一)で計算した控除の対象になる金額を別表四に書き写して、決算書上の利益に加算する計算をします。
3.法人税額から控除する
別表六(一)で計算した控除の対象になる金額は、上記の別表四で利益に加算するとともに、法人税の前払い分として別表一(一)で計算した法人税から控除を受ける計算をします。
なお、法人税額が少なかった場合や赤字でゼロだった場合などで、法人税額から控除しきれなかったときは、その控除しきれなかった金額が還付されます。
まとめ
いかがでしょうか。
預金利息を受け取った場合は、単純に収益として経理すればよいのですが、法人税の確定申告で控除を受けるために源泉所得税等を把握しておく必要があります。経理方法で紹介した総額主義での記帳は、面倒ですが決算の時に帳簿上で容易に集計することができます。会計ソフトなどで帳簿づけをされるようであれば、ソフトの辞書機能などで預金利息の入金を定型の取引として登録しておくとラクですね。
法人税の申告は複雑です。ここでご紹介したように会計ソフトで記録や仕訳はしっかりとつけておいて、申告そのものは税理士さんにお任せするのをお勧めします。
【参考記事】
・法人決算は、自分でできるのか?
・法人税申告書の書き方を理解するために必要な仕組み
photo:Getty Images