どうする? クラウドファンディングの確定申告

最近よく耳にする「クラウドファンディング」。ネット上で資金を募って事業や製品開発などを行うというイメージがありますね。実際のところ、クラウドファンディングで資金を受けた側・提供した側の両方でどのような税金の取り扱いがあるのでしょうか。
今回は、クラウドファンディングの確定申告について解説していきます。
[おすすめ]確定申告はこれひとつ!無料で使える「やよいの青色申告 オンライン」
目次
- POINT
-
- クラウドファンディングは不特定多数から少額ずつ資金を集めることが可能
- 購入型のクラウドファンディングでは、通常の売買取引として取り扱う
- 寄付型のクラウドファンディングでは、法人・個人で税務の取り扱いが異なる
クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングは群衆の「Crowd」と資金調達の「Funding」を組み合わせた言葉で、不特定多数の方々から資金を募ることを意味します。個人や企業のイベントや製品開発、アーティストや社会活動への支援など幅広い分野で行われていて、多数の投資家・一般人から少額ずつ資金を集めることができるのが特徴です。通常はインターネットなどで運営されるプラットフォームを利用するため、いわゆるクラウドコンピューティングでの雲を意味する「Cloud」と勘違いされることもあるようですね。
ここで、クラウドファンディングの成功例を紹介しましょう。エレキ三味線や激しい剣舞を取り入れた斬新なライブで、インディーズとして世界各国で活躍するトリオロックバンド「KAO=S」。現在でも複数の国からオファーを受けている彼らは、世界で活躍するプロデューサー・写真家・映像監督らによる、アルバム&ミュージックビデオ制作のプロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディングで資金調達にチャレンジしました。プラットフォームでの告知のほか、Twitterや FacebookなどSNSでの拡散の後押しもあり、目標金額の180万円に対し、210万円の資金調達を達成し、新たなステージへの鍵を手にすることができました。これはアート分野での一例ですが、もともとのファンだけではなく、プロジェクトが知られることで賛同者が集まって、夢が実現していくのを目の当たりにできるのもクラウドファンディングの醍醐味ですね。
さて、このクラウドファンディング、資金提供者へのリターンの形態により、いくつかの種類に分けられます。
購入型
購入者から前払いで集めた代金を元手にモノやサービスを開発し、完成したら購入者へ提供する形態です。一定の資金を必要とするため、目標額に達しなければ成立しないというものが多いです。
寄付型
資金提供者へのリターンはニュースレターやお礼状などに限られ、社会貢献や復興支援などに活用されています。支援金がどのように使われているかなどがわかりやすいため、資金提供者も支援がしやすく、また、活動自体のPR効果も期待できます。
投資型
資金提供が出資などの形態で行われ、リターンは事業収益からの配当などが主なものとなります。金融商品取引法等の規制があることもあり、購入型や寄付型に比べると敷居の高いものとなっています。
一般的に個人や中小企業が事業のために行うクラウドファンディングでは購入型が人気です。以下では、購入型と寄付型について、税金の取り扱いを説明します。
「購入型」の取扱い
購入型の場合、モノやサービスの引き渡しを伴うため、資金を受けた側では収入として計上します。一方で、資金を提供した側ではモノやサービスを購入していますから、事業として必要な支出である場合は経費となります。また、事業として行われる売買取引のため、消費税の対象となることにもご注意ください。
購入型 | 資金を受けた側(A) | ||
---|---|---|---|
個人 | 法人 | ||
資金を提供した側(B) | 個人 | (A)個人: 収入計上 (事業所得or雑所得) (B)個人: 事業に必要なものであれば経費 |
(A)法人: 収入計上 (B)個人: 事業に必要なものであれば経費 |
法人 | (A)個人: 収入計上 (事業所得or雑所得) (B)法人: 事業に必要なものであれば経費 (私的なものは給与扱い) |
(A)法人: 収入計上 (B)法人: 事業に必要なものであれば経費 (私的なものは給与扱い) |
資金を受けた側が個人の場合、そのクラウドファンディングの目的が個人事業のために行われるものであれば「事業所得」として、事業に該当しないものであれば「雑所得」として、それぞれ所得税の対象となります。
資金を提供した側が法人の場合、そのリターンが事業に必要なものであれば、その使途に応じて仕入れや消耗品費、広告宣伝費などとして経費になります。その内容、金額によっては減価償却資産として経費化していくこともあるでしょう。
また、その内容が事業に必要のない私的なものであった場合には、その支払った金額は給与として経費にはなりますが、現物給与として役員や従業員に所得税もかかります。なお、役員の場合には、決算書上では経費になりますが、法人税の計算上では賞与として否認されますのでご注意ください。
「寄付型」の取扱い
寄付型の場合、クラウドファンディングで集まったお金は、リターンを期待しない寄付金です。対価性のない寄付金についての税金の取扱いは、個人か法人かで変わってきますので注意が必要です。
寄付型 | 資金を受けた側(A) | ||
---|---|---|---|
個人 | 法人 | ||
資金を提供した側(B) | 個人 | (A)個人: 贈与税の対象 (基礎控除110万円あり) (B)個人: 申告等の必要はなし (寄附金控除もなし) |
(A)法人: 収入計上 (消費税は対象外) (B)個人: 申告等の必要はなし (特定の寄附金に該当すれば 所得税の寄附金控除あり) |
法人 | (A)個人: 所得税の対象 (一時所得として50万円の控除あり) (B)法人: 一般の寄附金として 一定の限度額内まで経費 |
(A)法人: 収入計上 (消費税は対象外) (B)法人: 一般又は特定の寄附金として 一定の限度額内まで経費 |
まず、資金を受けた側が個人である場合、もともとリターンの必要なお金をもらうことになるので、実質的に贈与を受けたことになります。このとき、個人から受けた贈与であれば贈与税の対象となり、1/1~12/31までの受け取り額が110万円を超える場合には、受取額から贈与税の基礎控除額110万円を差し引いた額に、贈与税がかかります。そして、法人から受けた贈与であれば所得税の対象で一時所得に分類されます。
つぎに、資金を提供した側が法人である場合、寄附金の経費算入については制限が設けられています。一般または特定の寄附金として、その法人の利益や資本金をベースにして計算した限度額までの範囲内で、提供した資金を経費にすることができます。
まとめ
いかがでしょうか。クラウドファンディングを利用した資金調達は、少額のプロジェクトから始められるので、スモールビジネスでもチャレンジしやすい仕組みになっています。しかし、その集め方によって税金の取り扱いがさまざまですので、しっかりと理解したうえでどの方法でクラウドファンディングを行うかを考えましょう。
【関連記事】
・税理士が教える!今流行のクラウドファンディング
・事業資金はこうやって集める!困ったときに考えたい事業資金の調達方法
photo:Getty Images