個人事業主の通帳に預金利息が入ったら?

銀行などで預金口座を持っていると、預入残高に対して利息を受け取ることになります。個人事業主の場合、事業用の預金口座につく利息は事業の収入に入れるのでしょうか?
今回は、個人事業主が受け取る利息の経理方法について解説していきます。
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目次
- POINT
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- 預金利息は源泉分離課税につき、確定申告の必要がない
- 貸付金の利息は、事業所得や雑所得などとして確定申告が必要
- 事業に関係のない収入は、「事業主借」として経理する
預金利息の取り扱いは?
個人事業のために事業用として普通預金口座を開設した場合、普通預金では日々の残高に対してその日の金利で利息を計算し、半年に一度などの期間で預金利息が預金残高に組み入れられます。利息を受け取ったということで、少しでも簿記をかじったことがあれば、「受取利息」という勘定科目が頭に浮かぶ方が多いでしょう。ましてや事業のために使っているお金に利息がついているので、当然に事業の収入だと思いますよね。
じつは、この預金利息というのは所得税の10種類の所得区分の中で「利子所得」というものに分類され、たとえ事業のために使うお金の利息であっても、事業所得ではなく利子所得として区分することになります。
では、確定申告ではどうしたらよいでしょうか。個人事業主でもサラリーマンでも、預金利息を確定申告したという話は聞いたことがないと思います。
この預金利息、所得税では「源泉分離課税」という方式が採用されています。どういうものかというと、預金利息を受け取る段階で、銀行などが15.315%の所得税・復興特別所得税と5%の住民税を天引きし、代わりに国などへ納めてくれるというものです。これによって納税が完結し、確定申告では何もしなくてよいということになるのです。
預金以外の利息の場合は?
さて、上記は預金利息の場合の話でした。それでは、お金の貸し借りなどで受け取る利息などについてはどうでしょうか。
事業のために取引先や従業員に対して貸し付けたお金の利息は、事業に付随する収入として、事業所得の収入に含めることになります。例えば、取引先が資金繰りに行き詰まっているときに、今後の取引の重要性を考えて支援するような場合などがあてはまりますね。
一方で、事業とは関係のない友人へ個人的にお金を貸し付けた場合はどうでしょうか。事業と関係がありませんから、友人への貸付金に対する利息は事業に付随する収入とは言えませんね。しかし、利子所得も預貯金の利息などに限定されていますから、利子所得にも該当しません。どうなるかというと、どの所得にも該当しないものは「雑所得」に分類されるのです。
当然ですが、これらの貸付利息などは預金利息のような源泉分離課税は適用されませんから、事業所得や雑所得として確定申告の対象になる収入となります。
実際の経理方法は?
それでは、預金利息などを受け取った時の経理方法をご紹介しておきます。
預金利息を受け取った場合
例:普通預金口座に利息100円から源泉所得税等20円を差し引かれた80円が入金された
普通預金 80 / 事業主借 80
事業主貸 20
預金利息は利子所得に分類され、事業には関係のないお金の入金として、「事業主借」勘定を使用します。なお、上記は実際に入金された金額で記帳する純額主義という簡単な経理方法ですが、源泉所得税等もわかるように記帳する総額主義では以下のようになります。
普通預金 80 / 事業主借 100
事業主貸 20
従業員に貸し付けたお金について、元金10,000円の返済とともに500円の利息を現金で受け取った
現金 10,500 / 貸付金 10,000
/ 受取利息 500
従業員に貸し付けたお金の利息は、事業に付随する収入として事業所得に分類されます。
友人へ個人的に貸し付けたお金について、元金10,000円の返済とともに500円の利息を現金で受け取った
現金 10,500 / 事業主借 10,500
従業員の場合とは違い、事業所得にも利子所得にも該当しないものとして雑所得に分類されます。このときは個人事業の経理上では全額を事業主借としたうえで、利息部分の500円は、雑所得の収入として確定申告で所得税の計算に入れる必要があります。
まとめ
いかがでしょうか。
預金利息については、源泉分離課税で利息の入金時に所得税などが天引きされて納税が完結するため、確定申告の必要がありません。そして、経理方法も単に事業主借とするだけです。会計ソフトなどで帳簿づけをされるようであれば、ソフトの辞書機能などで定型の取引として登録しておくとラクですね。
photo:Getty Images