この経費は固定資産?消耗品費?減価償却資産の判定基準を分かりやすく解説

2021/03/31更新

この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

減価償却資産。帳簿づけを始めたら必ず耳にする言葉ですね。その内容が複雑なこともあり、どう判断して取り扱ったらよいか迷ってしまうものとして一番に挙げられるものでしょう。今回は、減価償却資産の判定方法について解説していきます。

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POINT

  • 10万円以上の備品などは、原則として数年に分けて経費化する
  • 10万円の判定は、買った金額に付随費用を加えた金額になる
  • セットになってひとつの機能を果たすものは、1組単位で判定する

事業に必要なものでも一度の経費にはならない

事業の経費になるものは、その事業に必要であるかどうかが判断のポイントですね。しかし、必要なものを買ったらなんでもその年度の経費になるという訳ではありません。
会計や税務上のルールで、備品など使用していくに伴ってその価値が減っていくものは、減価償却資産(げんかしょうきゃくしさん)としてそれぞれの種類に対して定められた年数で各年度に配分して経費化していくことになります。ただし、使用できるのが1年未満のものであったり10万円未満のものは「消耗品費」などとして、その年度の経費にすることになります。また、商品や製品などの棚卸資産や有価証券、繰延資産などはこの判断から除かれますし、土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しないものは減価償却に該当しません。
減価償却資産には建物、建物附属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、器具備品など、大分類として勘定科目(以降、便宜的に固定資産と言います)があり、細かい種類ごとにその経費化する年数が国税庁で定められています。

参考

国税庁:耐用年数表新規タブで開く

例えば、個人事業主が7月に20万円のパソコンを買って預金から支払った場合、7月購入時の帳簿づけは器具備品として固定資産の項目に計上します。

器具備品 200,000 / 預金 200,000

この時点では、器具備品という事業用の財産を買ったというだけで経費にはなっていません。
つぎに経費化するのですが、個人事業主の場合は原則として定額法という方法で期間配分します。パソコンの耐用年数(経費化する年数)は4年となっていますので、20万円を4年間で経費化することになり、以下の算式で計算され、当年度は2万5千円となります。

200,000円×0.25(定額法4年の償却率)×6/12(月割計算)=25,000円

  • 月割計算は1か月未満の端数は切り上げて1か月として計算します。

実際の帳簿づけでは「減価償却費」として器具備品から経費化していきます。

減価償却費 50,000 / 器具備品 50,000

  • 青色申告の場合、30万円未満の減価償却資産であれば、年間300万円(法人で事業年度が1年未満の場合は月割計算)を上限として、一度に経費化できる特例もあります。

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10万円以上かどうかの判定は?

固定資産にあたるかどうかは、金額が10万円以上かどうかが判断基準となります。この金額のことを「取得価額」といいますが、その判定などについてはいくつかポイントがあります。

取得価額は、購入対象物そのものの金額だけではない

例えばエアコンを購入するとき、送料や取り付け工事費がかかりますよね。事業で使えるようにするための費用(付随費用)は、個別の経費ではなく金額に含め、取得価額にすることとなります。
例えば99,800円のエアコンを買ったとして、工賃が5,000円かかったとしたら合計で104,800円が取得価額となりますから、固定資産の対象となりますね。

取得価額に含めないことができるものもある

上記のとおり、付随費用は原則として取得価額に含めるのですが、例外的に含めなくてよいものもあります。

  • 不動産取得税や自動車取得税など
  • 登録免許税や登記にかかる費用など
  • ローンで購入した場合の割賦手数料など

消費税の経理方法で判断が変わる

消費税の課税事業者となっている場合は、帳簿づけの方法で税込経理と税抜経理とを選ぶことができますが、選択した経理方法によって取得価額の判断が違ってきます。

税込経理の場合

消費税を含めた総額で取得価額を判定します

税抜経理の場合

消費税を除いた本体価格のみで取得価額を判定します

個人事業主で家事按分する場合

個人事業主の場合、事業と生活との両方で使っているようなものについては、事業に使用している割合を算定して部分的に経費にする家事按分を行いますね。家事按分が必要な固定資産については、取得価額は家事按分をする前の金額で判定します。
例えば120,000円のパソコンで80%を事業に使っているといった場合、120,000円×80%=96,000円で10万円未満となりますが、家事按分前の120,000円をもとに判定しますので、固定資産にしなければなりません。

1個ずつの金額で判定できる?

固定資産の取得価額が10万円以上かどうかは、通常ひとかたまりとして機能したり、取引される単位ごとで判定します。例としてつぎのようなものがあります。

応接セット

テーブルや椅子は単品でも買うことができますが、応接室に置くとなると、テーブルと人数分の椅子が揃っていないと応接セットとして成り立たないですよね。この場合は椅子・テーブルの一式を1単位として取得価額を判定します。

カーテン

カーテンは1枚1枚買うことができますが、その部屋に応じた枚数を揃えないとカーテンとしての機能が中途半端になりますね。特に飲食店などお店のイメージにあわせて揃いで購入した場合や複数の部屋にカーテンを購入したような場合は、その部屋ごとにカーテンを合計した金額を1単位として取得価額を判定します。

簡易間仕切り

事務所を商談スペースなどと分けるために、移動可能なパーティションで間仕切りを作る場合がありますね。通常パーティションは1枚単位で販売されていますが、間仕切りとして機能するためには複数枚を組み合わせてセットする必要があります。この場合は実際に設置した状態を1単位として取得価額を判定します。

まとめ

いかがでしょうか。購入した備品などを安易に消耗品費などとして経費処理をしてしまうと、場合によっては10万円以上のものとして税務調査で指摘をうける可能性があります。固定資産になるかもという意識をもって帳簿づけをするようにしてみましょう。

photo:Getty Images

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この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

宮原裕一税理士事務所新規タブで開く」代表税理士。弥生認定インストラクター。
弥生会計を20年使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。経営者のサポートメンバーとして会計事務所を営む一方、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。

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