【飲食業・小売業】ロスがあった場合の経理処理

飲食店や小売店などでは、食材の廃棄やおつりの渡し間違い、商品の盗難など、さまざまなロスが生じます。このロスについては、どのような経理上の処理をしたらよいのでしょうか。
今回はさまざまな理由で「ロスがあった場合」の経理処理について解説します。
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目次
- 現金があわないときは、現金過不足で経理する
- 廃棄ロスがあったときは、仕入れと別に経理すると経営状況がわかりやすい
- 盗難や災害などに遭ったときは、盗難届など事実がわかるものを取っておく
レジのお金があわないとき
お店のレジを締めて日計を出したとき、実際にあるお金と計算上のお金の残高があわないことがあります。お釣りの渡し間違いなどが原因で、人が関わる以上はどうしても避けられないものですね。このあわない金額については、「現金過不足」として経理しておきます。
実際の現金が1,000円少ないとき
現金過不足 1,000 / 現金 1,000
実際の現金が1,000円多いとき
現金 1,000 / 現金過不足 1,000
決算時には、この現金過不足の集計金額を雑損失、雑収入へと振り替えます。
現金過不足の集計金額が10,000円のプラス(実際の現金が少なかった)
雑損失 10,000 / 現金過不足 10,000
現金過不足の集計金額が10,000円のマイナス(実際の現金が多かった)
現金過不足 10,000 / 雑収入 10,000
なお、1,000円単位の現金過不足が頻繁に生じるような場合は、単なる渡し間違い以上の問題があることが多いので、現金の扱いについて管理方法の見直しなどを検討する必要がありますね。
食材の廃棄ロスが生じたとき
食材の期限切れやオーダーミスなどによって、食材などを廃棄するときはどのように経理したらよいでしょうか。
じつは、経理の上で一番簡単な方法は「何もしない」ことです。というのも、もともと食材を仕入れたときに「仕入」として経費としていますから、決算で期末に残っている食材(在庫)の金額を「仕入」から除けば、廃棄した分は「仕入」として経費になったまま、というわけなのです。
とはいえ、このままでは数字を経営に活かすことができません。例えば、売上に占める材料費の割合を「原価率」と言います。帳簿を集計して計算した原価率が目標とする原価率を超えているときに、材料費のなかにロスの金額が一緒になっていると、その原因について「ロスが多いから」なのか、「材料費が高騰しているから」なのかといった問題の切り分けが出来なくなってしまうからです。
そこで、「廃棄ロス」「廃棄損」などの勘定科目を用意して、ロスの金額を以下のように振り替える経理を行います。
期限切れの食材1,000円分を廃棄したとき
廃棄ロス 1,000 / 仕入 1,000
このとき、材料の期限切れの場合はまだ廃棄する金額がわかりやすいですが、オーダーミスなどで使用した分については廃棄の金額を出すのは難しいですね。すでに調理などをしたものについては、予定していた原価率を代金にかけるなどして金額を計算するとよいでしょう。この経理はあくまでも会社の管理上の処理で、経費の総額には影響しないのでご安心ください。
盗難や災害などによる損害が生じたとき
お店を構えていると、空き巣に入られたり、火災や豪雨などの被害を受けたりといった損害を受けることがあり得ます。
例えば空き巣に入られてお店の現金や商品が盗難にあった場合。単純にお金やモノがなくなっただけでなく、壊された扉などの修理代もかかります。これらは「盗難損失」「雑損失」「修繕費」などとして経理します。
空き巣に遭い、現金50,000円、商品50,000円が無くなっていた。また、壊された扉の修理に100,000円かかった
盗難損失 50,000 / 現金 50,000
盗難損失 50,000 / 仕入 50,000
修繕費 100,000 / 預金 100,000
被害の事実を確認できるように、盗難届出証明書や罹災証明書などを取っておきましょう。なお、災害などによる損失についてその年度が赤字になった場合は、白色申告でも救済措置として赤字の繰越し制度が用意されています。
- 法人の場合……災害による損失金の繰越し(現行9年間)
- 個人事業主の場合……被災事業用資産の損失の繰越し(現行3年間)
また、個人事業主の場合で事業と関係のない生活用の資産について災害などで損害を受けた場合は「雑損控除」という制度もあります。詳しくは税務署や税理士へお尋ねください。
まとめ
いかがでしょうか。ロスといってもさまざまなものがありましたが、現金管理や在庫管理、オペレーション管理などを検討していくと、これらは改善されるはずです。経理をしっかり行って、数字として経営状況を把握することが大切ですね。
photo:PIXTA