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『儲かる会社の会計と経営がよくわかる本』に学ぶ! 意外と知らない儲けの仕組み

会社の経営をする人におススメな一冊が、『ダンゼン得する 知りたいことがパッとわかる 儲かる会社の会計と経営がよくわかる本』(ソーテック社・刊)です。著者は税理士の村田栄樹氏。会社経営に必要な会計の知識を、誰でもすぐにつかめるように、わかりやすくポイントをまとめています。

意外と知らない儲けの仕組み

自分の給料がいかに生み出されているのか――。給与の額には高い関心を持つ一方で、会社がどのように利益を生んで、自分の給与として還元されているのかを知っている人は、それほど多くない。

サラリーマンならば、それでも日々の仕事をやっていくことはできる。だが、自ら会社を経営する立場になれば、そうはいかない。会社の会計と経営について理解を深めることは、会社が儲ける仕組みを理解することに他ならないからだ。

とはいえ、事業を起こすとなると、やらなければならないことが山積みである。じっくり会計を勉強する暇なんてない、という個人事業主がほとんどではないだろうか。

そこで、これから会社の経営に乗り出そうとする人におススメなのが、『ダンゼン得する 知りたいことがパッとわかる 儲かる会社の会計と経営がよくわかる本』(ソーテック社・刊)だ。著者は税理士の村田栄樹氏。会社経営に必要な会計の知識を、誰でもすぐにつかめるように、わかりやすくポイントをまとめた一冊だ。

儲かっていても、倒産する!?

「会社がどんなふうに利益を出しているかなんて知ってるよ」

なかには、そう思う人もいるかもしれない。確かに「収入―支出=利益」は、多くの人が理解していることだろう。だが、利益を出しているだけでは「お金がある」とは限らない。

一例を挙げれば、取引きをして、すぐに現金で支払われるケースばかりではない。月末で締めて、翌月で支払われるケースもあれば、クレジットカードで支払われるケースもあるだろう。「収入」が入るより前に、「支出」が行われたならば、たとえ「収入―支出=利益」の計算が成り立っていても、「お金が足りない」という事態も起こり得るのだ。

お金の流れが止まると、利益が出ていても倒産になってしまう。そうしないためには、どうすればよいのだろうか。

《「貯金を取り崩す」「借金をする」「入金日を早めてもらう」「支払期日を延ばしてもらう」といった何かしらの対策をして、お金の流れを止めないようにしていく必要があります。まずは、あなたの会社の1カ月の入金・支払いのスケジュールを書き出してみましょう》
 

そして、《お金は血液と同じなので、流れが止まらないようにする》ことが大切だと、本書では書かれている。そのための、会計の知識が必要になるというわけだ。

会計の目的はシンプルの2つ

「会計」という言葉を聞いただけで、拒否反応を示す人もいるかもしれない。税理士任せにしてしまいたいという気持ちもあるだろう。だが、「会計について知ること」は、専門家と同じように決算書を読めるようになることではない。経営者は、「決算書を使えればいい」のです。

本書が示す会計の目的はいたってシンプルだ。次の2点に集約される。

  1. 「ある期間にいくら儲かったのか」を明らかにする
  2. 「今、いくら持っているのか」を明らかにする

会計だからといって、難しく考える必要はない。シンプルに上の2つを明らかにしておけばいい。そして会計の目的を明らかにしてくれるのが決算書である。決算書類の中でも「ある期間にいくら儲かったのか」を示す「損益決算書」、次に、「今、いくら持っているのか」を示す「貸借対照表」の2つだけまずは押さえて、使えるようになればよい。

本書では、それぞれのフォーマットを挙げながら、使い方のポイントが解説されている。決算書が使えれば、売上に一喜一憂して、全体の経営状態を見失うこともなくなるはずだ。「何かを得れば何かを失う」「何かを失えば、何かを得る」と、会社経営には、必ず2つの事象があることを押さえるべきだと本書はいう。

《「お金が増えた!」だけでは、喜んではいけないということなのです。大切なのは「そのお金が”どんなお金”なのか?」ということです。「自分で稼いだもの」なのか、あるいは「返さなくてはいけないもの」なのか。必ず2つの事象があることを意識しましょう。》
 

「月給の3倍稼げ」は妥当な要求?

「お金を回すための会計」もしくは「お金を回すための決算書」という観点を持つことができれば、コストの考え方もこれまでとは違ったものになる。

例えば「給与」についても「従業員にとっては、ただ高ければよい」「経営者にとっては、ただ安ければよい」というものではない、ということがわかってくるはずだ。従業員のためを思って給与を高くした結果、会社の経営状態が悪化し、倒産しては本末転倒だ。また、コスト削減のために給与をギリギリまで下げた結果、従業員が次々に辞めてしまっては、採用コストがかかり、かえって人件費がかさむことにもなりかねない。

本書で示されているひとつの目安は、粗利を「人件費」「運営費」「内部留保」の3つに分けて、人件費は3分の1までにするというもの。つまり、従業員の立場からすれば、20万円の月給をもらうには、粗利で60万円を稼がなければならないと、本書では書かれている。

《「自分の給料の3倍は稼いで来い!」これが言えない社長が意外と多いのですが、会社を続けるためにはとても大切な考え方なのです》
 

脱サラをして個人事業を立ち上げた人のなかには、会社員時代の給与の低さが不満だった人もいるかもしれない。しかし、いざ自分が経営する側になると、人件費の考え方を180度変えなければ、コストばかりかさんで、経営は立ち行かなくなってしまうだろう。

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「ひとつ上の仕事」をやるためには

本書では、給与のほかにも、オフィスの家賃や、備品などのコストの考え方も示されている。例えば、オフィスは経営者の見栄で分不相応で家賃が高い場所を借りがちだが、家賃は固定費なので、ホントにこれが必要なのか?を立ち止まって考えられるかが重要になってくる。店舗ではなく事務所としても条件を上げるのであれば、優先すべきは「駅の近さ」と、検索に引っかかりやすいキーワードがビル名に入っていることだという。

一方で、ただケチケチすればよいということではなく、「コピー機は最新のものを使わせるべき」だと本書では書かれている。古い機種で時間をとられれば、その分、人件費がかかってしまうからだ。コストは常に大局的な視点で洗い直す必要がある。

「経営者がそんな細かいところまで考えるべきではないのではないか」

そう思う人もいるかもしれない。かくいう私も、現場に細かく口を出す経営者は、全体が見えていないケチな人間だと、本書を読むまで誤解していた。だが、本書では、むしろ経営者は堂々とケチを貫くべきだと書いている。

《経営者になったからには、「ケチと思われたくない、大きいところを見せたい」そんな思いがあるからか、細かいことを言わないというか、言えない人も多いようです。でも、これではいけません。「お金にうるさいと周りに思われるくらい」でないとダメなのです》
 

このように、経営者にとって重要な会計の考え方が分かりやすく示されている本書は、実は、サラリーマンにとっても役立つ内容だ。経営者がどんな考えでコストを削減し、「売上を上げろ」と現場の尻を叩くのか。その理由を知ることで、他の人よりも俯瞰して、会社全体の仕事を理解することができる。

私の好きな名言のひとつに、野村證券元社長の奥村綱雄による、こんな言葉がある。

「ひとつ上の仕事をやれ。社員は主任、主任は課長の、課長は部長の、部長は役員の、それで初めて大きな仕事ができる」

トップに立つ経営者の視点で仕事をしていれば、おのずと自分のポジションは変わるだろう。経営者もまた、さらなる高みを目指して日々の仕事にあたらなければ、会社の成長はない。

この本は「ひとつ上の仕事をする」ための基礎となる一冊といえそうだ。

【ここでご紹介した本】
『ダンゼン得する 知りたいことがパッとわかる 儲かる会社の会計と経営がよくわかる本』(村田栄樹・著/ソーテック社・刊)

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photo:Getty Images

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