設立後に後悔しないための定款作成のポイント

事業を始めるにあたって、会社を設立するためには、会社の基本事項を記載した会社定款を作成しなければなりません。ひと昔前までは、定款の作成と言うと、行政書士などの専門家に依頼しなければ作ることは難しい状況でした。最近ではインターネットで検索するだけで定款のひな形などが簡単にダウンロードできるため、定款を作成するだけであれば、素人でも可能でしょう。しかし、定款は設立後の会社の方向性を決める非常に重要なものですから、ただ作れば良いというものではありません。そこで今回は、設立後に後悔しないための定款作成時のポイントについて解説したいと思います。
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目次
- POINT
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- 資本金の設定金額次第で税金に影響があることに注意
- 事業目的は、主要事業だけではなく関連事業もできる限り網羅すること
- 電子定款の作成で定款作成コストを削減できる
資本金の額で税金が変わるってホント?
皆さんも知っての通り、会社を設立するためには「資本金」が必要です。以前の法律では株式会社設立のためには1,000万円を準備する必要がありましたが、今では起業を促すために法律が改正され、資本金が1円でも会社を設立することが可能になりました。
資本金の金額は定款の絶対的記載事項ではありませんが、定款の附則などに記載する場合があるため、定款作成前にはあらかじめ資本金をいくらにするのかの目処をたてておく必要があります。
通常、資本金を決める際には、会社の社会的な信頼度を考えて最低でも1,000万円以上に設定するという考え方が一般的にあります。実は、これは必ずしも正しいとは言えません。
なぜなら、創業時に資本金を1000万円未満に設定すると、次のようなメリットがあるからです。
消費税が免除される
資本金を1000万円未満で設定すると、2年間は消費税が免税となります。開業当初の中小企業は事業が軌道に乗るまで非常に大変ですので、この2年間の消費税免除は非常に有り難い制度なのです。
法人住民税の均等割額が安くなる
法人住民税の均等割額は、資本金額や人数等で決定します。例えば、東京都千代田区に事務所のある企業で従業員が50人以下の場合は、資本金が1,000万円以下ならば均等割額が7万円、1,000万円超1億円以下ならば、均等割額が18万円となり、資本金が1,000万円以下の方が11万円も税金が安くなるのです。
このように、資本金をいくらに設定するのかによって、設立後の税制面が大きく変わってくるため十分注意しましょう。なお、定款作成後に資本金が変わる可能性がある場合は、あえて定款には資本金の額を記載しないようにしましょう。
事業目的を書く際のポイント
定款を作成する際に、事業目的は絶対的記載事項となっていますので、必ず記載しなければなりません。逆に言えば、ここに書いていない事業はできないことになりますので、今すぐに始める事業だけではなく、将来的に行う可能性が高い事業についても必ず記載するようにしましょう。
この際のポイントは、会社の主たる事業に付随して発生する可能性がある事業ももれなく記載することです。
例えば不動産屋を開業する場合、事業目的として「不動産の仲介」や「不動産の売買」、「不動産の管理業務」といった事業目的の記載が漏れることはまずないでしょう。
ただ、不動産を人に紹介して契約する際には、それに合わせて火災保険を同時にあっ旋することがあります。
このとき「損害保険の代理店業務」などといった事業目的の記載が漏れていると、保険の募集行為ができません。また、この事業目的が定款をもとに行った会社登記に記載されていないと、金融庁や財務局から代理店として許可が下りません。そのあたりのことも含め、主たる事業に付随して生じる可能性がある事業については、現段階でその予定が定まっていなくても、とりあえず記載しておくことをおすすめします。
行政書士に依頼した方が自分で定款を作るよりも安いってホント?
定款作成のプロと言えば行政書士ですが、実は自分で定款を作成するよりも、行政書士に作成を依頼した方が安く株式会社が設立できることがあるって知っていましたか?
通常、株式会社を設立するためには、概ね以下のような費用がかかります。
- 定款に貼る印紙代……4万円
- 公証人認証手数料……5万円
- 謄本交付手数料……2,000円前後
- 登録免許税……15万円(資本金×0.7%)
これは、自分自身ですべて手続きを行ったとした場合でも、最低限かかる費用となります。
実は1の「定款に貼る印紙代」ですが、行政書士に依頼すると「電子定款」を作成することができるため、印紙代4万円がまるまる免除になるのです。電子定款とは、簡単に言うとPDFで作成した定款のことですが、ただPDFに変換しただけでは使えず、そこに行政書士が電子署名の処理をしてはじめて使うことができます。
行政書士が電子定款の作成を4万円以下で請け負ってくれるケースもあるため、そうなると自分で定款を作成するよりも費用が安く抑えられるのです。
会社設立当初は、開業を急ぐあまり定款の内容がおろそかになってしまうケースもありますが、仮に後から定款の内容に変更が生じると、その都度、株主総会で変更を決定し議事録に残さなければなりません。さらに、変更が登記事項に影響する場合は、変更登記も必要となりその都度登録免許税がかかります。そのため、定款を作成する際には、その後のことも考えて焦らず慎重に作成するようにしましょう。
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