販売促進費とは?混同しやすい勘定科目との違いや仕訳例などを解説

2024/04/09更新

この記事の監修齋藤一生(税理士)

販売促進費とは、取り扱い商材の販売促進のために支払った費用を計上する際に使う勘定科目です。広告宣伝費や交際費といったその他の勘定科目と間違えやすいため、どのような支出が販売促進費に該当するのかを知っておくことが大切です。

ここでは、販売促進費の仕訳例や、販売促進費を経費計上するときのポイント、販売促進費を補助してもらえる補助金などについて詳しく解説します。

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販売促進費とは、販売促進のために使った費用を経費計上する際の勘定科目

販売促進費とは、自社の製品やサービスの販売を促進するために支出した費用を経費計上する際に利用する勘定科目です。

例えば、「新たに販路を拡大したいが、該当の地域には既に力を持った競合他社がいる」といった場合に、自社の魅力を伝えるためにサンプルを配布したり、キャンペーンやイベントを開催したりする際にかかる費用などが該当します。

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広告宣伝費や交際費との違い

販売促進費は、広告宣伝費や交際費と区別しにくいことがあります。仕訳をする際、迷わずに済むように似た勘定科目との違いを把握しておきましょう。

なお、会計ソフトの中には、支出の内容を基に勘定科目の提案をしてくれたり、取引例と該当する勘定科目を表示してくれたりするものもあります。勘定科目に悩んだときは、このようなサービスを活用するのもおすすめです。

広告宣伝費と販売促進費の違い

広告宣伝費は、企業やブランド、商品などを宣伝するための費用を支出した際に使用する勘定科目です。例えば、ウェブ広告を出稿したり、チラシを配布したりといった行為にかかった費用は、広告宣伝費に該当します。

一方、販売促進費は、商品の販売を促進するために支出した費用です。不特定多数に向けた大々的な広告費などではなく、多くの場合、一定の範囲内の顧客への働きかけに必要な費用を指します。

ただし、広告宣伝費と販売促進費は明確に区別しにくい勘定科目でもあります。例えば、自社製品に興味を持った顧客と商談を行い、サンプルを渡した場合は販売促進費です。それでは、不特定多数に対してプレゼントキャンペーンを行った場合はどうでしょうか。不特定多数への宣伝に必要な費用は広告宣伝費に該当しますが、プレゼント自体は当選した個人に対して提供します。

このような場合は、それぞれの企業の考え方に応じて勘定科目を決めることになるでしょう。そもそも、該当の支出が少ない場合、広告宣伝費と販売促進費を分けずに同じ科目で処理する場合もあります。広告宣伝費と販売促進費の区別に厳密な定義はありませんが、社内での統一は必要です。

経費を正しく把握するために、広告宣伝費と販売促進費の処理方法について社内ルールを作り、担当者が変わっても同じ運用を行えるようにしておくことが大切です。

交際費と販売促進費の違い

交際費は、特定の関係者に対して広告宣伝目的以外の支出を行った場合に使用する勘定科目です。例えば、得意先に手土産を持参したり、食事代を支払ったりした場合の費用は、交際費に該当します。

一方、販売促進費は、あくまでも商品などの販売促進をするために支出した金額です。取引先に手土産を持っていくのも、好感を抱いてもらって取引を円滑に進めるための行為であるため、広義の販促活動ともいえます。しかし、直接的に商品の販売を促すための支出ではないため、交際費に該当します。

なお、正月などに、取引先に自社のロゴ入りグッズやタオルなどを持参することがありますが、これは販売促進費です。手土産と同じように取引先に持参し、贈呈するものであっても、自社のロゴが入った商品は商品の販売促進目的が強いため、交際費ではなく販売促進費として扱います。

販売促進費の仕訳例

販売促進費の仕訳は、どのように行えばよいのでしょうか。ここでは、販売促進費を支払った場合の代表的な3パターンの仕訳例をご紹介します。仕訳を行う際の参考にしてください。

販売促進費を普通預金から支払った場合

まず、販売促進費を普通預金から支払った場合の仕訳について、考えてみましょう。

例えば、ノベルティグッズを作成し、グッズ作成業者に対して普通預金から15万円の代金支払いを行った場合の仕訳例は、下記のとおりです。

販売促進費を普通預金から支払った場合の仕訳例
借方 貸方
販売促進費 150,000 普通預金 150,000

商品を受け取った日の翌月に振り込んで支払うケースが多いと思うのですが、そのような場合は以下の仕訳となります。購入時と支払時の日付で下記の各々の仕訳を作成します。

購入時
借方 貸方
販売促進費 150,000 未払金 150,000
支払時
借方 貸方
未払金 150,000 普通預金 150,000

販売促進費を現金で支払った場合

次に、販売促進費を現金で支払った場合の仕訳について、考えてみましょう。

例えば、プロモーションを行う際にスタッフが着用するオリジナルTシャツを作成し、2万円を現金で支払った場合の仕訳例は下記のとおりです。

販売促進費を現金で支払った場合の仕訳例
借方 貸方
販売促進費 20,000 現金 20,000

販売促進費と交際費を分ける場合の仕訳

最後に、販売促進費と交際費を分ける場合の仕訳について、考えてみましょう。

販売促進費は、その他の経費と一体となる形で支出することがあります。ここでは、お得意さまを温泉旅行に招待し、その場で商品販売のためのデモンストレーションも行ったという場合についてご紹介します。

このようなケースでは、お得意さまへの接待費用である温泉旅行代を交際費、デモンストレーションに必要な会場の予約費用やデモンストレーションに利用する設備レンタルにかかる費用などを販売促進費に分けて経費計上を行います。

それぞれの費用が、30万円と20万円で、料金を普通預金から振込で旅館宛てに支払ったのであれば、下記のように仕訳します。

販売促進費と交際費を分ける場合の仕訳例
借方 貸方
販売促進費 300,000 普通預金 500,000
交際費 200,000

販売促進費を計上するときのポイント

販売促進費を計上する際には、課税・非課税をきちんと区別しておくことが大切です。

日本国内で行われる取引には、課税取引と非課税取引の2種類があります。課税取引とは、消費税がかかる取引のことで、例えば「100円のペンを買い、10%の消費税が付いて110円を支払った」といったケースが該当します。

一方、非課税取引とは、消費税がかからない取引のことです。例えば、土地の売買は非課税取引です。非課税取引では、消費税を支払う必要がありません。

企業は、課税取引と非課税取引を厳密に区分する必要があります。課税取引による課税売上高に応じた消費税を納税しなければいけません。販売促進費の多くは課税取引ですが、一部非課税取引となる費用もあります。何が課税取引で、何が非課税取引になるのか、判別できるようにしておきましょう。販売促進費の場合はほとんどが課税取引になるとは思いますが、一応は注意しておきましょう。

また、余った販促品のグッズなどは貯蔵品の勘定科目に振り替えて管理する必要があるので注意しましょう。貯蔵品とは、期中に経費処理した消耗品などのうち、決算時において未使用のものを処理する勘定科目のことです。

販売促進に使える「小規模事業者持続化補助金」とは?

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や業務効率化を支援するための補助金です。販路開拓につながる販売促進費の支出も対象になるため、利用できる事業者は積極的に活用しましょう。

ここでは、小規模事業者持続化補助金の補助額、対象者、対象となる経費、申請方法、申請にあたっての注意点について、それぞれご紹介します。

小規模事業者持続化補助金の補助額

小規模事業者持続化補助金では、補助率と補助上限額がそれぞれ設定されています。一定の用途に使用した経費のうち、一定割合が上限額までの範囲内で補助を受けることが可能です。

通常枠の補助率は、経費の3分の2、補助上限額は50万円です。賃金引き上げや創業など一定の要件を満たす場合は、補助上限額が200万円まで上乗せされます。

小規模事業者持続化補助金の対象者

小規模事業者持続化補助金の対象となる事業者は、常時使用する従業員数が一定以下である事業者に限られます。具体的には、下記のとおりです。

小規模事業者持続化補助金の対象となる事業者
業種 常時使用する従業員数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) 5人以下
宿泊業・娯楽業 20人以下
製造業その他 20人以下

全国商工会連合会「小規模事業者持続化補助金」新規タブで開く

また、小規模事業者持続化補助金の対象になるためには、下記の要件も満たす必要があります。

小規模事業者持続化補助金の対象者になるための要件

  • 法人の場合、資本金または出資金5億円以上の法人に100%株式保有されていない
  • 直近3年間の課税所得の年平均額が15億円以下
  • 「卒業枠」で採択されて事業を実施した事業者ではない
  • 持続化補助金で採択を受けて補助事業を実施した事業者については、別途一定の要件を満たす必要がある

小規模事業者持続化補助金の対象となる経費

小規模事業者持続化補助金の対象経費は、下記のような支出です。

小規模事業者持続化補助金の主な対象経費

  • チラシの作成や配布、看板設置
  • ウェブサイトの構築や運用
  • 展示会などのイベント出店費用や交通費、アルバイトスタッフの雇用費用

ただし、上記に該当しても対象にならないこともあるため、詳細については商工会議所地区のウェブサイト「小規模事業者持続化補助金新規タブで開く」などをご確認ください。

小規模事業者持続化補助金の申請方法

まずは、小規模事業者持続化補助金のウェブサイトから申請書類をダウンロードして、必要事項を記載します。申請書類が完成したら、経営計画書や補助計画書の写しなどを添えて、商工会・商工会議所窓口に提出します。商工会・商工会議所から「事業支援計画書」の交付を受けた後、電子申請または郵送で補助金の申請を行ってください。その後、審査を経て採択されれば補助金を受け取ることができます。

小規模事業者持続化補助金申請時の注意点

小規模事業者持続化補助金申請時の注意点としては、「交付決定通知書」を受け取った後に行った施策にかかった経費のみ補助金の対象という点です。また、補助事業実施期限までに発注と支払いを完了させなければいけません。補助金を受け取るためには実績報告書の提出も必要です。

なお、小規模事業者持続化補助金の申請は、販売促進活動を実施する時期に合わせて応募しましょう。ただし、応募から採択までには一定の時間がかかるため、余裕を持って手続きを行う必要があります。

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会計ソフトで販売促進費に関する経理処理を効率良く行おう

販売促進費は、広告宣伝費や交際費などと混同しがちな費目です。また、消費税が課税されるかどうかについても意識しておく必要があるでしょう。販売促進費の性質を正しく理解したうえで、自社の仕訳ルールを定めておくことが大切です。

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この記事の監修者齋藤一生(税理士)

東京税理士会渋谷支部所属。1981年、神奈川県厚木市生まれ。明治大学商学部卒。

決算書作成、確定申告から、起業(独立開業・会社設立)、創業融資(制度融資など)、税務調査までサポート。特に副業関連の税務相談を得意としており、副業の確定申告、税金について解説した「副業起業塾 新規タブで開く」も運営しています。

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