「雑費」とはなにか?

どこに分類すべきかわからない――。帳簿づけをしていて勘定科目に迷ったとき、安易に「雑費」としてしまっている人は、ちょっと待ってください。「その他」という印象が強い「雑費」ですが、本来はどんな意味合いがある勘定科目なのでしょうか。また、雑費の金額が多すぎると、どんな影響があるのか。合わせて解説していきたいと思います。
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目次
- POINT
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- 雑費が巨額になると税務署の調査理由となる場合がある
- 既存の経理項目で対応できないものを雑費とするが、金額が大きくなる場合は、新たな勘定科目を作って区分すること
- 雑費のなかに消耗品費に区分すべきものがないかどうかを確認すること
使い過ぎてはいけない「雑費」
年末に大掃除をした人は、誰しも思い当たるところがあると思いますが、「何でもいれてよい箱」を設置すると、大抵そこに物が溢れてしまいがちです。同じように「雑費」という勘定科目に対して、「どこの勘定科目に入れてよいかわからないときに、何でも入れてしまってよいもの」というイメージを持っている人もいるかもしれません。
しかし、「雑費」の金額が増えることは、望ましいことではありません。あとで会計の結果を分析したときに、支出の傾向がつかみづらくなってしまいます。目安として、雑費は経費の5~10%程度に収まるようにしたいところです。
また、雑費が巨額なものになると、税務署の調査理由となる可能性もあります。金額として、どれくらいまでが許容範囲なのかといえば、例えば青色申告をする中小企業者等は、「少額減価償却資産の損金算入の特例」が認められています。その場合、2024年3月31日までに購入した30万円未満の減価償却資産は、原則として、その合計額が年300万円以内であれば、即時償却して経費に算入できますので、その範囲内が「雑費」ということになります。
「雑費」を用いるのはどんなとき?
そもそも雑費とは、「既存の経費項目に当てはまらない」というときに用いる勘定科目です。
既存の経費項目は、所得税の青色申告決算書や収支内訳書に記載されている経費の勘定科目でいえば、「給料賃金」「外注工賃」「減価償却費」「貸倒金」「地代家賃」「利子割引料」「租税公課」「荷造運賃」「水道光熱費」「旅費交通費」「通信費」「広告宣伝費」「接待交際費」「損害保険料」「修繕費」「消耗品費」「福利厚生費」があります。「雑費」にしてしまう前に、これらの勘定科目で本当に対応できないかどうかをよく検討しましょう。
従来の勘定科目に該当しない場合は、「雑費」ということになりますが、さきほど説明した通り、雑費が増えすぎるのは問題です。雑費が巨額になる場合は、新たな勘定科目を作って区分すること。私の場合は、執筆が主なので「書籍・資料費」は必須ですね。
既存の経費項目にはあてはまらず、一時的な費用や、高額でない費用などが、雑費に区分されると覚えておきましょう。
「消耗品費」が妥当の場合も
上記を踏まえると、雑費は消耗品費に似ているところがあります。消耗品費とは「価格が10万円未満」で「使用できる期間が1年に満たないもの」です。
消しゴム・糊・はさみ・筆記具・ノートなど文具全般はもちろんのこと、名刺や伝票類も「消耗品費」となります。そのほか、電球や花、印鑑、来客用のコーヒーカップなども消耗品費として区分できます。意外と幅広い範囲をカバーしているのですね。
消耗品費は、何も小さなモノに限られているわけではありません。事務用机・掃除機・ロッカー・本棚などや、仕事で使うスマホアプリも、10万円未満であれば、消耗品費です。「雑費」として区分しているもののなかに、こうした消耗品費に該当するものがないかどうかはチェックしておきたいところです。
以上、「雑費」についての解説でした。便利なだけに多用しないように気をつけましょう。
とはいえ、新たな勘定科目をたくさん作って、どれも年に数回使用する程度でいずれも少額のものならば、むしろ「雑費」としてくくってしまったほうが、かえって整理されるという面もあります。1年の数字をまとめる確定申告の時期だからこそ、「雑費」が、多くなっていないかを確認するとともに、正しい理解ができているかどうか、あらためて確認してみてください。
photo:Getty Images