スモールビジネス(個人事業主、中小企業、起業家)の
業務や経営にまつわる疑問や課題をみんなで解決していく場
検索
メニュー
閉じる
ホーム 税金 所得税の扶養と健康保険などの社会保険の扶養の違いとは?

所得税の扶養と健康保険などの社会保険の扶養の違いとは?

ある日、従業員のAさんから「結婚してパート勤めを始めた妻(B子)を扶養に入れたら、税金とか社会保険料は変わりますか?」と聞かれました。さてあなたは答えられますか?「扶養」という、よく使われる言葉。実は所得税の扶養と健康保険の扶養では意味合いが違います。今日はその違いをしっかり理解しておきましょう。

POINT
  • 扶養家族がいることで所得税と健康保険料は変わる?
  • 「103万円の壁」と「130万円の壁」の違い
  • 130万円の壁の話より優先することがある

所得税と健康保険料などの社会保険料

従業員のAさんから「結婚してパート勤めを始めた妻(B子)を扶養に入れたら、税金とか社会保険料は変わりますか?」と聞かれました。
一般的に「扶養に入れる」という言い方をした時、扶養に入る人のことを所得税では「控除対象配偶者」「控除対象扶養親族」と呼んでいます。ではこの「控除対象」とは何でしょう? これは「所得控除の対象になる」ことを意味しています。所得控除が増えれば当然、所得税は安くなりますね。
では、健康保険の方はどうでしょうか。こちらは「被扶養者」と呼びます。健康保険料はその分、安くなるのでしょうか? それともB子さんが被扶養者用の保険証を使って病院にかかる分、高くなる? いえいえ、そんなことはありません。Aさんの給与から控除される健康保険料はAさんの標準報酬月額で決められており、B子さんを扶養に入れたからといって健康保険料が変わることはありません。

所得税と健康保険などの社会保険の扶養条件の違いはいろいろある

冒頭のAさんの質問の答えはもう出たわけですが、話はこれで終わりません。
毎月の所得税や健康保険料が変わるかどうかという前に、「扶養者になるか」の判断が必要です。判断するためには親族の範囲や同居の有無、年齢、内縁関係、年収など実にいろいろなものがあり、扶養対象となる条件は所得税と健康保険では異なるのです。
図表にまとめましたのでご覧ください。

所得税と健康保険の扶養の違い

以下は、主な項目です。健康保険については「協会けんぽ管掌」のものを使用しています(健康保険組合の場合は、異なる場合があります)。

扶養対象となる条件
所得税 健康保険(協会けんぽの場合)
呼び方 控除対象配偶者
控除対象扶養親族
被扶養者
給与からの控除 安くなる 変わらない
範囲 6親等内の血族及び3親等内の姻族 3親等内の親族
同居の有無 原則、同居 親族の範囲によっては同居が必要
年齢 16歳以上 75歳未満
内縁関係 NG OK
年収 103万円以下 130万円未満
(60歳以上又は障害者は180万円未満)
その年の1月~12月 この先1年間
通勤手当(非課税分)は入れない 通勤手当(非課税分)も入れる

さて、冒頭の質問ではAさんがB子さんを扶養に入れることが前提になっていましたが、実務の中ではそもそもそれが可能なのか? ということをいろいろな事柄について確認しなければならないことがおわかりになるでしょう。
今日はその中の「年収」にスポットを当ててみましょう。実はこの扶養家族の年収に関する話は少しややこしいのです。

103万円の壁と130万円の壁

「103万円の壁」「130万円の壁」という言葉は「扶養」とセットになってよく使われており、双方の違いは壁の高さだけだと思っていらっしゃる方も多いでしょう。
しかし違うのです。まず、所属税の「103万円」はその年の1月から12月までの収入を指しています。所得税の額を出す時は「平成○年でいくら」という計算をするのです。そして非課税通勤手当は除きます。
一方、健康保険の「130万円」はこれから先の1年間を指しています。こちらは非課税通勤手当も含みます。

では、B子さんがAさんの扶養に入ることができるのか計算してみましょう。

B子さんの勤務データ

それまでは仕事をしておらず、10月から時給950円で1日7時間、週4日(月16日)勤務。通勤手当は無し。

パート収入月額:950円×7時間×16日=106,400円

所得税の扶養に入れるか
今年10月~12月のパート収入見込み
106,400円×3ヵ月=319,200円⇒年収103万円以下

健康保険の扶養に入れるか
この先1年間のパート収入見込み
106,400円×12ヵ月=1,276,800円⇒年収130万円未満

上記の計算ですと、今年の1月~12月の年収が103万円以下で、これから先の1年間の年収は130万円未満ということがわかります。「じゃあ所得税と健康保険、両方の扶養に入れるね!」と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。実は落とし穴があります。

実は落とし穴が

B子さんの働き方に注意してください。働く時間や日数によっては、B子さんはお勤め先で社会保険(健康保険と厚生年金保険)に入ることになるかもしれないのです。
同じ職場のフルタイムの方の①労働時間②労働日数の概ね3/4以上であれば、パートさんやアルバイトさんでも社会保険に入る義務があります。これは本人やお勤め先の意思とは関係ありません。また、①か②どちらかではなく両方クリアした場合です。

さっそく確認してみましょう。B子さんのお勤め先のフルタイムの方の労働時間と労働日数は以下のとおりです。
①労働時間 週35時間
②労働日数 1ヵ月21日

それぞれに3/4をかけてみます。
①×3/4=26.25時間
②×3/4=15.75日

つまり、B子さんの勤務先では①週26.25時間以上で、②1ヵ月15.75日以上勤務のパートさんは社会保険に入ることになります。
B子さんは①では週28時間、②では月16日勤務です。①②どちらもクリアしていますので、お勤め先で社会保険に入ることになりAさんの扶養には入れません。
つまり、所得税の扶養には入れますが、健康保険の扶養には入れないということになります。健康保険では労働時間と日数の要件を満たしていたら、たとえ130万円未満の年収でも扶養に入れないのです。

さらに、労働時間・労働日数がフルタイムの方の3/4未満であっても注意が必要です。
2016年10月より短時間労働者の適用範囲が拡大され、被保険者数が501人以上の企業では3/4に満たない場合でも一定の要件に該当すれば被保険者になることになりました。該当する場合はその要件も確認が必要です。

まとめ

所得税と健康保険の扶養について、制度の違いからいろいろな点が見えてきたと思います。それぞれきちんと整理して理解しておくことが大切です。

【平成30年(2018年)3月30日 追記】
平成29年度税制改正により、平成30年(2018年)から配偶者控除(所得控除)38万円の対象となる配偶者の給与収入の上限が、103万円(合計所得金額38万円)から150万円(合計所得金額85万円)に引き上げられました。
本記事のB子さんのケースは、もともと所得税の扶養に入れる条件に当てはまりますが、配偶者控除等の適用される納税者本人(記事では、従業員Aさん)に新たな収入制限が設けられ、給与収入1,120万円(合計所得金額900万円)を超える場合には、控除額が逓減・消失する仕組みになります。以下の記事をあわせてご覧ください。

photo:Thinkstock / Getty Images

c_bnr_fltblue_online-2
閉じる
ページの先頭へ