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スマホ・ICアプリカード入力で先行する経費精算アプリ「Staple」にかける思い――クラウドキャスト株式会社代表取締役・星川高志さん

会社の規模や従業員数にかかわらず、日々の経費精算は従業員や経理・会計担当者の業務を切迫するものです。そんなときに業務効率化の手助けとなるのが、経費精算の業務アプリではないでしょうか。

スマホで経費をカンタン入力ができる経費精算アプリ「Staple」を開発・販売するクラウドキャスト株式会社。同社代表取締役社長・星川高志さんはMicrosoftの元社員で、「弥生スマートフォンアプリコンテスト」のグランプリ受賞者でもあります。数々のご経験を積んだ星川さんが日々の開発にどんな思いを込めているのか、お話を伺いました。

星川高志さん

“業務の必須アイテムに”という願いを込めて

――「Staple」というアプリ名の由来は?

ホチキスが「Stapler」(ステイプラー)と呼ばれることからもわかるように、本来的には「書類を綴じる・留める(=Staple)」という意味合いがありますが、実は「Staple」には「必需品・定番」という意味もあるんです。このアプリが日々の業務において従業員や経営者、そして経理・会計担当者の「必須アイテム」になってほしい、という思いを込めています。

――アプリの特長をいくつかあげるとすると?

外出時でもスマートフォンを使い、交通費などの経費入力ができる点です。Android版では交通系ICカードの履歴取り込みにも対応しています。

あとは、法人プランがあることですね。基本的にアプリのダウンロードは無償ですが、有償の法人プラン(月額1ユーザー600円)が備わり、そこに承認ワークフローが実装されています。

――開発にあたって意識されたのはどんな点ですか。

つねに意識していることは”エンドユーザー視点”で開発にあたることです。

これまでの業務アプリは、その多くが使い勝手の悪いものだったように思います。特にスマホがない時代の「経費精算アプリ」はそうしたものがたくさんあった。これは、その”ユーザー自体”、日常的に使う側の従業員や管理者視点ではなく、専門家視点で一方的にアプリを開発・制作していることが起因しています。他方で、小規模の会社ではいまだ表計算ソフトを使った紙ベースの経費精算の慣習が残っています。従業員の数が増えれば増えるほど、管理する側の承認フローも追いつけなくなるでしょう。

そうした業務アプリ自体の利便性、さらには経費精算の慣習を踏まえ、私は今こそ、アプリの”ユーザー”が中心になるべきだと考えます。その点、私たちは「Money-Note」というコンシューマ向けアプリを開発した経験があり、「Staple」のUI/UX、機能の面にもそれが表れていると思います。

ユーザーのイメージ

Stapleを支えるアーリーアダプターの存在

――クラウド経費精算の競合他社が参入するなか、「Staple」はヒットアプリになっているようですが、玉石混淆の世界で勝ち抜くにあたり、星川さんはどんな戦略を練ったのでしょう?

今はどんなアプリでもリリースした後に性能・価格・デザインなどを比較検討されますから、リリースされてからも勝負です。

その点でいえば、「Staple」はほぼクチコミだけで広がっているんですよ。Googleで「経費精算 アプリ」と検索してみるとわかりますが、上位にひっかかる経費精算アプリはいずれも「広告」(Google AdWords)として出稿されたものです。しかし「Staple」は有償の広告を打っていないにもかかわらず、ユーザーから高い評価をいただいているおかげで常に検索結果の上位に表示されます。こうした結果は、個人ユーザーでも無償ダウンロードできるアプリとしてリリースした点が大きく寄与していると思います。

――使い勝手のよいアプリをリリースし、より多くのユーザーに使ってもらうことでSEO対策となり、さらには、そうしたクチコミが経理・会計担当者にも届けば、自社で導入を検討してもらえる、ということですね。

はい。なかでも私たちにとってアーリーアダプター(新たに現れた革新的商品やサービスなどを、比較的早い段階で採用するユーザー)の存在は大きいと思います。つまりはStapleを導入したスタートアップや飲食店経営者の方々ですね。

例えば、2016年の電子帳簿保存法規制緩和により、スキャナ保存できる文書が大幅に広がります。「Staple」は領収書などの画像データの添付も可能(*)ですから、そうしたことを彼らがクチコミで拡げてくれます。最近は「クラウドキャストが経費精算市場を盛り上げようとしている」という企業の活動・マインドを拡げてくれる方々も増えていて、喜ばしいことです。
(*)「Staple」は電子帳簿保存法にも今後対応予定です。

星川高志さん

――最後に開発ベンダーとして、今のアプリ市場をどのように見ているのか、教えてください。

昨今の開発の現場では「何が完成品か?」という議論が巻き起こります。すなわち「100」と思ってリリースした完成品もユーザーからすると「100に至っていない」。反対に、未完成の状態でもユーザーに喜ばれることがある、ということです。

アプリ開発の領域では、すでにそんなパラダイムシフトが起こっていると思います。だから製品をつくる側も完璧を求めず、機能をお客様の反応を見ながらリリースする。トライ&エラーを意識し、ユーザーからのフィードバックを機能の追加や改善に活かす――。そんなふうに2~3週間ごとにアップデートしていくような思い切りのよさが求められているのではないでしょうか。

ある意味、ユーザーと共同開発することが自社のR&Dの一環でもあると考えています。そして自分たちが日常業務でも使い込んでいる、それこそが私たちの大切にしている開発プロセスでもあるのです。

――製品の開発・リリースの手法やSEO対策など、アプリ開発者だけでなく、多くの事業主にとって示唆に富むお話だったと思います。本日はありがとうございました。

星川高志 ほしかわ・たかし

星川高志

大学卒業後、DEC(現・ヒューレット・パッカード)を経て、マイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に移籍。米本社直属の開発部門で、法人向けモバイルアプリ部門の中心メンバーとして活動した。オフショア開発などのマネジメントを経験した後、SQL Serverの開発部門を統括。2009年、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)に入学。在学中にクラウドキャストを設立し、2011年、株式会社として法人化。経営管理修士(MBA)。

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