飲食の確定申告ガイド

飲食店は現金売上が多く、また、クレジットカード売上は利用日と入金日が異なるため、売上の計上もれが発生しやすいのが特徴です。お店の商品を自ら飲食した場合や、酒類メーカーからの専属契約料等も収入になります。また食材や飲料の仕入や経費に個人的な食費等が混在してしまうことも多く、公私混同が生じやすいのも飲食業の特徴。
ここでは、飲食店の個人事業主が確定申告の際に気をつけるべきポイントを説明します。
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目次
- クレジットカード売上の計上は「入金日」ではなく「利用日」
- 高額なものは数年にわたって経費にする
- 賄い費の半額は従業員負担とする
売上の計上漏れをなくそう
飲食店のような現金売上がメインの業種は、税務署は、「売上をごまかしているんじゃないか」とみています。POSレジを使用せず、手書き伝票の場合は故意に過少申告していなくても、集計ミスにより結果的に過少申告になってしまうことがあります。営業終了時に現金残高が伝票の売上金額と合っているかどうか、必ず毎日確認しましょう。レジを使用している場合は、レジペーパーの金額と実際の売上が一致していることを確認してください。
また、できれば、売上入金専用の銀行口座を用意し、日々の売上毎にいったん口座に入金するようにします。これにより、通帳に記録が残りますので、後で売上の確認がしやすいうえ、現金の流れもわかるようになります。
クレジットカード売上は口座への入金日ではなく、お客様の利用日に売上を計上します。入金額だけを売上に計上するのではなく、売上総額を計上し、カード利用手数料は経費に計上します。
なお、酒類メーカー等から受け取った専属契約料や協賛金等もお店の収入になります。もれやすいので注意しましょう。
厨房機器はいつの経費になる?
飲食店は、物件の取得や内装等の初期投資が多額となります。以後、何年にもわたって経営を続けていきますので、支払ったときにすべて経費に計上するのではなく、何年間かに分割して経費にしていきます。これを減価償却といいます。厨房用機器は8年、内部造作はおおよそ15~18年、3年以内に取替えが見込まれるような簡易装備は3年で経費にします。
日本料理店などでは、絵画や彫刻等の美術品を店内に飾る場合がありますが、原則として1点100万円未満のものについては、主として金属製のものは15年、その他のものは8年で経費として減価償却できます。例えば、800万円の厨房機器を導入した場合は、1年あたり100万円ずつ経費にしていきます。
なお、10万円未満のものは、1回で経費にできます。また、青色申告の場合は特例があり、1組30万円未満のものは、年間合計300万円まで購入した年の経費にできます。
飲食業に多い「自家消費」とは
食材の仕入れと一緒に自宅で使うための食材を購入することがあると思います。また、商品を店内で飲食したりする場合もあると思います。これを「自家消費」といいます。
自家消費は、1.通常の販売価額、2.その購入金額、あるいは3.販売価額の7割のいずれかの金額を売上に計上しなければなりません。
なお、自宅で使うための食材費を仕入金額からマイナスして原価から除いている場合は、上記の売上計上処理をする必要はありません。
従業員の賄いの扱い
多くのお店では従業員に賄いを提供していると思いますが、タダで提供している場合は、従業員はその分だけ得をしていますので、その賄いの食材費は従業員に対する給与となります。
ただし、従業員が食材費の半額以上を負担し、お店の負担額が月額3,500円以下であれば、給与にはならず、福利厚生費になります。
例えば、1食当たり300円で従業員が150円負担、月20日の場合は、店の負担額は(300円-150円)×20日=3,000円となりますので給与にはなりません。この、従業員が負担した賄い代は収入になりますので、売上計上もれにご注意ください。
なお、残業時や宿直時の食事は、お店の営業上の都合によるものですので、タダで提供しても給与にはなりません。福利厚生費になります。
他店視察でかかった飲食費は経費になる?
飲食店は競争が激しいので、お店の経営に活かすため、新しくオープンしたお店や繁盛店を視察する機会も多いと思います。その際に支払った飲食費は、お店の経営に役立つものですので、経費になります。
ただし、必ず、日時、そのお店の特徴やメニュー等視察したポイントを記録に残しておいてください。記録がないと、単なる私的な飲食として税務署に否認される場合がありますので、ご注意ください。
まとめ
飲食店の売上は、大部分が現金です。そのため、後で税務署から集計ミスによる売上計上もれを指摘されることが多くあります。営業終了時に、レジ内の現金と売上を照合することを習慣化し、極力ミスをなくすようにしましょう。
また、飲食店の経費は、大部分が食材や飲料です。そのため、食材が余ったからと持って帰ったり、休憩中に飲み物を飲んでしまったりと公私混同しやすいものです。これらはお店の商品ですので、無料で消費することは許されるものではありません。公私の区別をはっきりさせるためにも、定期的に棚卸表を作成するなど、日頃からしっかり管理する意識を持ちましょう。
photo:PIXTA