翻訳家・通訳の確定申告ガイド

翻訳家・通訳の売上である報酬が振り込まれる際には、源泉所得税が差し引かれています。謝礼・研究費・取材費・旅費等の名目であった場合でも、その実態が報酬と同じであれば源泉徴収の対象となり所得税を先に差し引かれています。
さまざまなことを踏まえながら、翻訳家・通訳の方が、確定申告で注意したいポイントをご紹介します。
[おすすめ]確定申告はこれひとつ!無料で使える「やよいの青色申告 オンライン」
目次
- POINT
-
- 経費になるものは何があるか? 経費の範囲を確認する
- 入金額が売上ではない
- 取引先から支払調書を集める
通訳・翻訳家の経費の範囲
通訳・翻訳家の経費になるものとしては、取引先との打ち合わせや取材などにかかった交通費・駐車場代・タクシー代・飲食費、インターネットを使うことによるプロバイダー料や通信費、パソコンソフトや資料の購入費などがあります。交通費などの取材費については、本当に事業で使ったことがわかるよう、領収書の裏面にどこに行ったか、どの仕事のために使ったかを記載しておくといいでしょう。
自宅で仕事を行う場合には、事務所費・水道光熱費、ガソリン代などの経費を仕事で使った分だけ按分して経費に計上することを忘れないようにしましょう。按分の方法は、自家用車の場合は、走行距離で按分する等、また自宅の一部で仕事をしている場合は、全体の面積に占める仕事場の面積で按分するなどがあります。
国際電話等には消費税はかかっていません。消費税課税事業者の場合は、課税仕入れの判断に気を付けましょう。
パソコン等の備品をインターネットで購入する際は、納品書、請求書等を印刷して保存するか、またはフォルダを作って画像で保存しておきましょう。後から印刷する際に、期限切れで印刷できないことがあります。購入時に印刷しておく癖をつけましょう。
源泉所得税の計算方法
通訳・翻訳家の報酬は、源泉所得税を差し引かれて入金されることがほとんどではないでしょうか。たとえば報酬が10万円(消費税込)だった場合は、10,210(100,000円×10.21%)が差し引かれた89,790円(円(100,000円-10,210円)が振り込まれます。
差し引かれた10,210円は、請求した自分の所得税です。取引先が税務署へ自身の代わりに前払してくれます。
そのため通訳・翻訳家が確定申告を行う際には、計算した所得税額から取引先が支払った源泉所得税を必ず差し引いて申告しましょう。なお、差し引かれた源泉所得税は報酬額が記載された「報酬の支払調書」が、取引先から送付されてこないこともあります。ぜひ、取引先へ請求書を提出する際には、自ら源泉徴収税額を記載した請求書を発行し、請求書をもとに売上計上するのが間違いの無い方法です。
なお、手話通訳は、源泉徴収制度の対象とはならないため、源泉徴収はされませんのでご注意ください。
雑所得か事業所得か
サラリーマンがアルバイトとして翻訳・通訳をしている場合に気をつけなければならないのは、所得の区分です。この場合は、「雑所得」として申告を行います。もし、翻訳・通訳による所得(収入から費用を差し引いた金額)が20万円未満のときは、所得税の確定申告を省略することもできますが、市役所などへ住民税の申告はしなければなりません。これらの報酬については、仕事の発注先が税務署へ「報酬の支払調書」を提出しています。
もし、確定申告をしないでおくと、税務署に届いた支払調書にきされている報酬額のみで税額を確定されてしまうこととなりますので、経費が少しでもある場合には、所得税の確定申告を省略せずに出したほうが節税になることもあります。
支払調書を合わせる
取引先から送付される「報酬料金等の支払調書」に記載されている合計金額が、売上金額の合計また源泉徴収税額の合計金額となるのが原則です。
しかし時折「報酬料金等の支払調書」が送付されてこない場合、合計金額が合わない場合もあります。合わない理由としては、支払いベースで記載しているなどです。その場合は自身が発行した請求書と照合し、合わない理由を確認します。「報酬料金等の支払調書」は取引先が取引先の所轄税務署へ提出しています。そのため合わない場合は問い合わせがある場合もありますので、事前に準備しておきましょう。
まとめ
通訳・翻訳家が他の個人事業と大きく相違するのは、所得税が事前に源泉徴収されていることです。確定申告時に事前に先払いしている源泉所得税を精算する形の確定申告となります。そのため還付申告の可能性もあります。今から確定申告の準備をはじめて、賢く節税してはいかがでしょうか?
【関連記事】
・簿記初心者でも大丈夫!青色申告はすべて会計ソフトにおまかせ
photo:Thinkstock / Getty Images