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知らないうちに著作権侵害していませんか? 〜著作権知識入門〜

このたび、脱サラして念願だったカフェを開業したAさん。カフェはオープン間もなく人気店となり、テレビ番組の取材を受けました。番組放映後、Aさんは店の入口にテレビを設置し、番組の録画映像を店のPR目的に利用しています。
実はこれ、著作権侵害で訴えられるかもしれない、とても危ういケースなんです。今回は一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の専務理事・事務局長で、デジタル著作権に詳しい久保田裕さんに、昨今の著作権侵害について話をうかがいました。

出版物や新聞記事を複写利用するときは?

「出版物や新聞記事の複製に関しては、公益社団法人日本複製権センター(JRRC)に問い合わせるのもよいでしょう」と久保田さん。

JRRCでは”複写”にかかる著作権者の権利を管理しています。組織内での利用、組織外への頒布などに応じて、複写使用料を徴収し、使用料を著作権者に分配することで、著作権者に代わって著作物を管理し、著作権者の権利を保護しています。

「ちなみに複写をせず、雑誌・新聞記事そのものや該当箇所を切り取って、掲示することは、自分で購入したものを掲示しているのに過ぎませんから、著作権侵害に当たりません。複写し、許諾なく私的利用以外に使えば著作権侵害になる、そう肝に銘じておきましょう」(久保田さん)

悩んだら許諾を取るのが最善策

また、ネット上で起こる著作権侵害の事例では「それが引用か、引用でないのか」という議論が起こりがちです。

引用(著作権法第32条)とはすなわち、著作権者から許諾を得なくても、合法的に自分の著作物に他人の著作物を引用して利用できるルールのこと。文章の引用なら「引用される文章が公表されている」「公正な慣行に合致する」「引用の目的上正当な範囲で行われている」「引用される文章と自分の文章との主従関係において、自分の文章が主である出典が明記されている」がその条件と言われています。しかしその”線引き”を個人で判断するのは難しいところがあります。

「文章だけではなく、写真や楽曲など、ネットにある情報のすべてがフリーだと思われています。そうではなく、ほとんどは著作物として保護されています。気に入った文章を自分のSNSに無断で転載したり、プロじゃない方の写真だからと言ってブログに無許可で貼り付けたりしたら、それは著作権法侵害になります。また、楽曲の利用にしても、3秒以内とか5秒以内なら無条件に使用してもよい、という話を聴いたことがありますが、そんな都市伝説を信用してはダメです(笑)。著作権法では基本的に『許諾を得ない利用が違法』なのです。まずは”悩んだら許諾を取る”ことが最善策といえるでしょう」(久保田さん)

パソコンの5台に1台で違法コピーが稼働している

最後に1つ、個人事業における著作権侵害として忘れてはいけないのが、法人内におけるソフトウェアの不正コピーです。

そもそもACCSはコンピュータプログラムをはじめとするデジタル化された著作物の著作権保護を目的に活動している協会で、ソフトウェア会社や出版社など、151社(2016年4月1日時点)が加盟しています。「法律・ルール」「技術的保護手段」「啓発・教育」3つの観点からさまざまな活動を行っており、組織内の不コピー対策も行っています。

「BSA|ザ・ビジネス・ソフトウェア・アライアンス」の調査によると、違法コピーの率は1992年まで9割くらいでした。それが90年代半ばから次第に減少し、現在(2015年)は18%まで下がっています。それでもまだ5台に1台は違法なソフトウェアがインストールされているということで、被害金額にすると1,100億円くらいにものぼります」

個人事業でも、さまざまなケースで会計ソフトをはじめとしたソフトウェアやアプリケーションが欠かせないものになっています。「安いから」「手に入れやすいから」といった誘惑に負けず、正規品を適法に利用しましょう。また、法人内のソフトウェアについては、きちんと管理をすることが重要です。

久保田裕 くぼた・ゆたか

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一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事・事務局長。山口大学特命教授。日本大学法学部卒業後、出版社勤務を経て1988年に社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA、現コンピュータソフトウェア協会)事務局に入り、JPSA事務局内に「ソフトウェア法的保護監視機構」を設置。1990年、ソフトウェア法的保護監視機構をJPSAより独立させ任意団体・ACCS設立に参加。翌1991年、ACCSの社団法人化に伴い同時に事務局長就任。1996年より理事、1999年より専務理事を兼任している。

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