知らないうちに著作権侵害していませんか? 〜著作権知識入門〜

このたび、脱サラして念願だったカフェを開業したAさん。カフェはオープン間もなく人気店となり、テレビ番組の取材を受けました。番組放映後、Aさんは店の入口にテレビを設置し、番組の録画映像を店のPR目的に利用しています。
実はこれ、著作権侵害で訴えられるかもしれない、とても危ういケースなんです。今回は一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の専務理事・事務局長で、デジタル著作権に詳しい久保田裕さんに、昨今の著作権侵害について話をうかがいました。
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- POINT
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- 窃盗罪に相当する重い刑事罰も
- 許諾なく複写を使用したら著作権侵害になる
- まだまだなくならない違法・不正コピーの不正使用
10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金が課せられることも
論文、写真、楽曲、絵画など、さまざまな著作物に関する著作権侵害のニュースをよく耳にするようになりました。これらは著作権者が訴えを起こした一部のケースであり、”氷山の一角”に過ぎません。
著作権者が著作権侵害者を告訴すれば、当然ながら侵害者は相応の刑罰を受けることになります。近年の著作権法の改正により、罰則は「10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金またはその両方」(著作権・出版権・著作隣接権の侵害)。法人等の両罰規定(※)は「3億円以下の罰金」にまで強化されています。
※編集部注:違反者だけでなく、その違反者が所属する法人にも罰則を科す規定のこと。
ACCSの久保田裕さんは、これら著作権侵害の罰則について「窃盗罪にも相当する、とても重たい罰則」と指摘し、次のように続けます。
「なぜこれだけ重たい法定刑が設けられているのか、そこを考えてもらいたいです。高度情報社会のなかでは、情報を持つ者が産業を動かしています。今の自動車も一見すればハードウェアですが、制御している大半はソフトウェア。すなわちプログラムという著作物で管理されているんです。デジタル化された情報を持つ者が経済のイニシアチブをとっている今、著作権および著作権侵害はとても重要な論点になっていると思います」(久保田さん)
個人事業で起こしがちな複製権侵害
久保田さん曰く、個人事業やスモールビジネスで起こりがちな著作権侵害が「複製権侵害」(著作権法第21条)です。どんなケースが当てはまるのでしょうか。
カフェを開業したAさんのケース。カフェはオープン間もなく人気店となり、人気テレビ番組の取材を受けました。番組放映後、Aさんはこれを喜び、店の入口にテレビを設置。店が紹介されたテレビ番組の録画映像を流し、店のPR目的に利用しています。
複製権とは、著作物の複製(コピー、録音、録画等)を独占的に行える権利のこと。この場合、テレビ番組の映像は著作物であり、著作権者はテレビ局(もしくは制作会社)となるため、著作権者ではないAさんには、公に向けて映像を流すために著作権者の許諾なくテレビ番組を複製することはできません。さらに、録画した映像を広く不特定の人に見せるために店の入り口にて流して行為は上映権(著作権法第22条の2)侵害となります。
「雑誌で取り上げられた記事をコピー(複製)して店に掲示したり、配るのもNGです。企業でも、自社商品などが取り上げられた新聞記事のコピーを社内回覧するといったケースが多く見受けられますが、実はこれらすべて複製権侵害に当てはまってしまうんです」(久保田さん)
著作物を複製する際の例外として「私的利用目的の複製」は法律でも認められていますが、店のPR、社内教育などはいずれも「私的利用目的」の範疇を超え、すべて著作権者の許諾が必要となるケース、というわけです。