理美容の確定申告ガイド

理美容業は、全業種の中でもトップクラスの利益率(約17%)を誇る仕事です。
利益率が良いのは、基本的には好ましいことですが、それは納税額が多くなるというのも事実。個人事業で理美容をされているあなた、「確定申告時に計算してみたら、納税額が多くて驚いた」という経験はありませんか? あるいは、適当に確定申告をしていた結果、税務調査で多額の税金を取られた経験がある人もいるかもしれません。理美容は、税務署に目をつけられる可能性が高い反面、青色申告制度の特典を活用すれば、そのメリットを充分に得られる業種でもあります。
次の3つのポイントをしっかりと押さえて、正しい申告・節税を行いましょう。
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目次
- POINT
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- 青色申告制度の特典を活用しよう
- 開業時の支出の扱いに注意
- タブレットのレジ、会計ソフトなどで手間を省く
帳簿を記帳することが義務化された
理美容は基本的に現金商売。収入については、施術などの「サ-ビス売上」とシャンプ-・トリ-トメントなどの「物販売上」の大きく2つに分けられます。あとでわからなくなることがないように、それぞれの金額を毎日記帳するように心がけましょう。
経費は、カラ-・パーマ関連の「仕入高」と、人を雇っていれば人件費(「給与手当」や「賞与」など)、テナントであれば「地代家賃」、それから「水道光熱費」や「広告宣伝費」が主な勘定科目となります。また、お客様用の雑誌や、キッズル-ムのおもちゃなども経費にできますので、領収書はきちんと保管しておくことが肝心です。
平成26年分から、白色申告でも帳簿を記帳することが義務化されました。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
どうせ記帳するのなら、取引ごとに日付・金額・相手先・内容を記して、このあと説明する青色申告制度の特典をゲットしてしまいましょう。
青色申告制度の特典を活用しよう
青色申告をするメリットとしては、次のようなものがあります。
青色申告控除として65万円(または10万円)が所得から控除される
経費が少ない理美容業にとって、年間65万円も引けるのはとてもうれしいことです。そのために多少の手間がかかったとしても、ぜひ青色申告を選択したほうがいいでしょう。
家族への給料を経費で落とせる
15歳以上で他で働いていない家族、例えば専業主婦である奥さんに経理業務をしてもらっている場合などは、青色事業専従者給与として給料を支払って、それを経費で落とすことができます。
赤字が出た場合その損失を3年間繰り越せる
理美容は利益率が高いので、あまり赤字が出ることはないのですが、開業1年目などさまざまな出費があり、一時的に赤字が出ることがあります。そんなときは、その損失を3年間まで繰り越して、黒字が出た年の所得から控除することができます。
30万円未満の固定資産を、支払った年の経費にできる
通常、10万円以上の備品の購入は固定資産となり、その支払った年で一括では経費になりません。しかし、青色申告をしていれば、30万円未満のシャンプ-台、待ち合い用いす、ハサミ、サインポ-ルなどが、その年の経費になって所得税が減るわけですから、うれしいですね。
なお、青色申告や青色事業専従者給与の特典を得るためには、一定期間内に申請または届出が必要となりますので、国税庁のホームページをチェックするか、最寄りの税務署に直接問い合わせてみてください。
開業時の支出の扱いに注意!
理美容でも、店舗デザインは非常に重要で、特に開業時は自分のこだわりや思い入れもあり、良いものを作ろうとするため、ついつい支出が多くなってしまいます。注意が必要なのは、その支出の取り扱い。お金を払ったのだから、すべて経費だと考えがちですが、実は大間違いです。
先ほども固定資産の話がありましたが、原則として10万円以上の物を購入した場合は、固定資産となるため一括の経費で落とさず、その物が使える年数として便宜的に決めたもの(耐用年数と言います)の期間において少しずつ経費で落としていきます。この経費を減価償却費と言います。
固定資産を間違えて全額経費としてしまった場合、あとで税務署から指摘を受けて、多額の税金を支払うことになりかねませんので、充分に注意してください。
もう一つ、開業時に日本政策金融公庫や銀行から融資を受けて、それを毎月返済している場合、返済額のうち利息部分は経費になりますが、元本部分は経費になりませんので、こちらも注意が必要です。
タブレットのレジアプリや会計ソフトなどで手間を省く
では、青色申告の承認を受けて、さっそく毎日記帳をしてみましょう! と言っても、実際には日々の仕事に追われて、どんどん後回しになってしまうのが現実です。そこで、タブレットのレジアプリや会計ソフトを使ってラクに記帳をしてみてはどうでしょうか。
一つは、iPadなどのタブレットにレジ機能を持たせて使うというもの。日々の売り上げが自動で集計され、クラウドの会計ソフトに直接連携させることができます。通常のレジよりも費用負担が少なくて済み、レジまわりもすっきりして、見た目もスマ-トです。
そして、売上を連携させた会計ソフトで、経費も入力してしまえば、基本的にはそのまま確定申告の書類を作成することができます。それで青色申告特別控除が使えると思えば、システム料も安いものですね。
このように理美容は、開業時の固定資産などの取り扱いに気をつけて、最初に税務署への届出関係やレジ・会計ソフトの環境を整えてしまえば、あとは同じことの繰り返しが多く、比較的ラクに確定申告までできてしまうはずです。そして、いまは白色申告をしている人も、ぜひ会計ソフトを使って、青色申告にチャレンジしてみてください。
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