有期契約労働者の無期転換について

今回は少々お堅いイメージがあるテーマかもしれませんが、有期雇用労働者の無期転換についてご説明します。
「契約社員」「派遣社員」「嘱託」「アルバイト」「パート」と呼ばれる、いわゆる「正社員ではない形」で働いている方や、そういった方を雇っている社長さんなどに、もれなく関係のあるお話です。
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目次
- POINT
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- 有期雇用と無期雇用の違いは「契約期間が決まっているか否か」
- 契約期間や更新の有無など、雇用契約の確認をしよう!
- 企業の強い味方・キャリアアップ助成金の活用
有期雇用労働者ってなに?
まず「有期雇用労働者」とはどのような人のことをさすのでしょう?
これは「6カ月契約」「1年契約」などのように、契約期間が決まっている労働者のことです。
一般的に「正社員」と呼ばれる方は契約期間が決まっておらず、原則「定年まで雇用される人」です。ですから有期雇用労働者に該当しません。
無期雇用労働者ってなに?
「有期」があるということは、「無期」もあります。
「無期雇用労働者」とは、契約期間が決まっていない労働者という意味なので、前述した「正社員」も該当しますが、無期雇用労働者イコール正社員のみ、というわけではありません。
正社員以外の方、例えば「アルバイト」「パート」「派遣社員」「嘱託」と呼ばれる方でも契約期間が決まっていなければ「無期雇用労働者」となります。
無期転換ルールとは?
国は、労働者が安定した仕事に就くことを応援しています。そのために労働契約法が改正されました。その目玉となっているのが「無期転換ルール」です。これは平成25年4月1日に施行されています。
このルールは、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた時は、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換できるルールです。
ポイントは、労働者の意思で無期転換の申し込みができるということです。そしてこの申し込みを会社側は原則断ることができません。断るとしたら「解雇」と同じ扱いになりますが、「解雇」はそう簡単にできるものではありません。
無期転換申し込みのタイミング
では、具体的にどのようなタイミングで無期転換の申し込みができるのでしょうか。下図をご参照ください。
図:厚生労働省「労働契約法改正のあらまし」より抜粋(一部、筆者加筆)
最初の契約が平成25年4月だった場合の申し込みタイミングは、それぞれ以下のとおりです。
A. 契約期間が1年の場合:平成30年4月の契約更新の時
B. 契約期間が3年の場合:平成28年4月の契約更新の時
Bの方が申し込みができるタイミングが早いのは、次に契約を更新すれば、労働契約期間が5年を超えることが更新時にわかっているからです。契約期間によっては、かならずしも契約時から5年経過していなければ申し込みができないわけではないことは覚えておきたいところです。
雇用契約の確認をしよう
ところで、会社で働く時(または人を雇う時)や契約更新の時に、きちんと契約書をかわしていますか? 労働基準法では、雇用期間や働く時間・場所・賃金などの労働条件を書面で通知することが会社の義務となっています。口約束ではあてになりませんし、トラブルになりかねないからです。いま一度、確認をされることをおすすめします。
なお、現在、厚生労働省が公開している労働条件通知書のモデルには無期転換ルールについての記載があります。この記載自体は義務ではありませんが、あった方が望ましいと私は思います。
キャリアップ助成金を活用しよう!
キャリアアップ助成金は、積極的な雇用への取り組みを実施した企業や事業主に対して助成をするもので、無期転換に活用することができます。
無期転換へのパターンを挙げると以下のとおりです。
- 有期雇用から無期雇用へ
- 有期雇用から正規雇用へ
- 無期雇用から正規雇用へ
上記の「正規雇用」とは一般的にいう「正社員」だとお考え下さい。
東京都の場合は、この助成金にさらに上乗せして「東京都正規雇用転換促進助成金」が支給されますので、要件が合えばかなりお得ですね。
(※平成28年5月30日現在の情報です。詳しくは、都道府県労働局や社会保険労務士にお尋ねください)
参考:厚生労働省 キャリアアップ助成金
photo:Thinkstock / Getty Images