雇用に関する助成金について

「助成金」ってなんでしょう? それは「融資」とは違い、返済する必要のないお金です。そう聞くと「なんてお得なんだ!」と思いますよね。今回お話をするのは、厚生労働省系の雇用に関する助成金についてです。これは、国が企業に対して支給するものです。
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目次
- POINT
-
- 助成金の財源は企業が負担している雇用保険料の一部
- 助成金をもらうために最低限必要な条件がある
- 助成金をもらって働きやすい職場づくりを
どんな助成金がある?
雇用に関する助成金にはどのようなものがあるのでしょうか。沢山あるなかからご紹介しましょう。
キャリアアップ助成金
有期契約や派遣労働者などを正社員化したり、人材育成・処遇改善などの取り組みを実施した企業に対する助成金
キャリア形成促進助成金
専門的な知識や技能の習得のための職業訓練などを実施したり、人材育成制度を導入した企業に対する助成金
職場定着支援助成金
雇用管理制度の導入などを通じて従業員の離職率の低下に取り組む企業に対する助成金
国としては「安心して働ける職場づくりや働く人のスキルアップに取り組む企業を応援しますよ!」と言っているわけです。
助成金と雇用保険の関係
雇用保険に加入している企業は、当然保険料を納めます。保険料は企業だけではなく従業員も負担します。給与明細書の中に「雇用保険料」という欄がありますね。毎月の給与から保険料が控除されているはずです。保険料率は以下のとおりです。
事業の種類\負担者 | ① 労働者負担 |
②事業主負担 | ② ①+② 雇用保険料率 |
||
---|---|---|---|---|---|
失業等給付の保険料率 | 雇用保険二事業の保険料率 | ||||
一般の事業 | 4/1000 | 7/1000 | 4/1000 | 3/1000 | 11/1000 |
例えば、従業員に10万円の給与を支払った時の雇用保険料はいくらになるでしょう。
10万円×11/1000=1,100円
内訳:
1. 企業(事業主)の負担 10万円×7/1000=700円
2. 従業員(労働者)の負担 10万円×4/1000=400円
全くの半分ずつではなく、企業側が300円多く負担していることがわかります。
企業と従業員が400円ずつ負担し、合わせて800円が失業等給付(失業した時の給付金など)に使われます。また、企業だけが負担する300円は雇用保険二事業に使われます。助成金はその一部です。
つまり、助成金の財源は企業が負担している雇用保険料の一部です。
雇用保険に加入していたら必ずもらえる?
「うちの会社は雇用保険料を納めてるんだから当然助成金はもらう権利はあるよね?必ずもらえるんでしょう?」そんな社長さんの声が聞こえてきそうです。でもちょっと待ってください。必ずもらえる、というわけではありません。
最低限必要なこと
助成金をもらうために最低限必要なことは以下のとおりです。
- 労災保険・雇用保険に加入しており、きちんと保険料を納めている
- 正しい給与計算をして、賃金台帳を整備している
- 正しい勤務管理をしており、出勤簿やタイムカードに出退勤を記録している
つまり、当たり前のことをしていれば良いのです。逆に言うと、当たり前のことができていない企業は助成金をもらうことはできません。
支給申請は意外に面倒?
では、当たり前のことをしてさえいれば助成金をもらえるのでしょうか? 残念ながらそれほど簡単ではありません。実際に助成金の申請をするには主に以下のことが必要です。
- 情報収集(雇用情勢や国の予算の関係で、受給要件がクルクルと変わります)
- 申請書類の作成(様々な種類の書類があり、記載のしかたにも独特のコツが必要です)
- 期限を守ること(1日でも遅れるとどんなにお願いしても聞いてもらえません)
企業の社長さんや人事総務の担当者さんが助成金申請をするには、もしかしたら日頃の業務に支障をきたすかもしれませんね。
社会保険労務士にご相談を
そんな時、お手伝いできるのは社会保険労務士です。「おカネのことは税理士では?」と思われるかもしれませんが、税理士は雇用に関する助成金申請はできませんのでご注意ください。
社会保険労務士は働くヒトに関する専門家です。単に書類作成をするだけではなく雇用管理制度や人材育成制度などを導入する時に必ずお力になれると思います。
企業として正しい雇用管理をすること。これは従業員の満足につながります。ひいては業績アップにもつながります。
助成金を活用して、ますます働きやすい職場づくりを実現しませんか?
photo:Thinkstock / Getty Images