賞与計算の実務を解説

ゴールデンウィークが明けると、すっかり初夏という感じですね。そろそろ夏のボーナス(賞与)が気になりはじめる頃でしょうか。
さて今回は賞与の計算についてです。賞与明細書を見ると、給与明細書よりもシンプルだと感じると思います。じゃあ給与計算より簡単なんでしょ?……と思うかもしれません。ところが給与計算と違う点がけっこうあるのです。以前お話ししました「給与計算の基礎と実務」もあわせてご覧ください。
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目次
- POINT
-
- 給与計算と似ているけれど計算方法が違う
- 賞与支払届も忘れずに
- 同じ月に給与と賞与の支払いがある月は、段取りも重要
まずはしくみから
賞与計算とはどんなしくみになっているのでしょう。以下のような計算式です。
これは給与計算とまったく同じですね。
支給額(額面)の中身
支給額(額面)には何が含まれているのでしょう。これはいたってシンプルです。
一般的にこれだけでしょう。給与と違って通勤手当や残業手当などはつきません。
控除額(天引き)の中身
主な控除額(天引き)の内訳はこのようになっています。
給与計算とよく似ているのですが、賞与計算では住民税の控除はありません。パッと見ただけでは、その部分だけが給与計算と違うように思われがちです。ところが大きく違う点があります。
まず、(1)と(2)の社会保険料です。これは「標準賞与額×保険料率」です。給与計算の時は標準賞与額ではなく標準報酬月額でした。この2つは何が違うのでしょうか。
- 標準報酬月額 = 給与月額を等級表にあてはめて求めたもの
(「社会保険|算定基礎届とは何か?」参照) - 標準賞与額 = 賞与額の千円未満を切り捨てたもの(※一定の上限あり)
標準賞与額を求める時は等級表を使いません。間違えて等級表を使っているケースがたびたび見受けられますが、保険料の額が違ってしまいますから要注意です。
次に(4)の所得税です。「前月の給与の課税対象額(支給額-非課税通勤手当-社会保険料)×所得税率(※一定の控除額あり)」です。「前月の給与」とは賞与支給月の前月に支払った給与のことです。例えば7月支払いの賞与から所得税を控除する時は、6月に支払った給与の課税対象額が関係してくるというわけです。
(3)の雇用保険料は、給与計算の時と同じで「支給額(額面)×保険料率」です。実は給与計算と共通するのはこれだけです。
給与計算ソフトを使うと何がラク?
給与計算ソフトを使えば、賞与計算は支給額を入力するだけで各控除額を計算してくれるのでとてもラクです。給与計算の時のように、勤怠の集計は必要ありません。
賞与計算の根拠を把握しておきましょう
では給与計算ソフトに任せっきりで大丈夫なのでしょうか。そんなことはありません。賞与明細書を見た従業員からこんな質問をされるかもしれません。
「社会保険料が毎月の給与の時と違うんだけど、どうして?」
「去年の夏の賞与と同じ額なのに所得税の額が違うんだけど、どうして?」
答えは、これまでのご説明でわかりますよね。やはり、ソフトを使っていたとしても計算の根拠を把握しておくことはとても大切です。
忘れてはいけない賞与支払届
賞与計算を終えたらすぐに、「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届」と「総括表」の届出をしましょう。用紙は年金事務所等から会社へ送られて来ています。もしも予定していた賞与の支払いが無かったとしても「総括表」だけは金額を0円として提出する必要があります。
いちばん苦労するところは?
賞与計算業務でいちばん苦労するところはどこでしょう。これは会社にもよりますが、なかなか支給額が決まらず、支給日までに賞与計算業務を行う時間が非常に圧迫されることでしょうか。賞与の支給額は会社の業績や従業員個人に対する会社の評価で決まるのが一般的ですから、決定に時間がかかるのも無理はありません。
もちろん、賞与が支給される月には、毎月の給与も支給されるわけですから少し忙しくなります。支給日が近い場合は特に、上手に段取りを組む必要があります。
まとめ
みんながワクワク心待ちにしている賞与。この計算業務の中にも担当者の苦労が隠れているのです。明細書と同様に計算方法もシンプルなのかと思いきや、そうでもないのですから意外ですね。
photo:Thinkstock / Getty Images