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強固なブランドはお客様マーケティングとコミュニケーションから生まれる ごちクル主宰・濱野亜紀氏

ブランディングの戦略は、なにもダイナミックな広告を打つといった方策だけではありません。日々の“顧客との接点”を頼りにじわじわと自社の個性(ブランド)を浸透させていくこともまた、ブランド力向上につながっていきます。
それを実践しているのがスターフェスティバル株式会社です。同社は800ブランド8,200種以上の商品を取りそろえるお弁当宅配・ケータリングの総合モール「ごちクル」を運営しています。設立から約7年という短期間で、いかにして累計販売数1,000万食を突破する力を築いたのでしょうか。同社執行役員で「ごちクル」主宰の濱野亜紀さんにお話を伺いました。

――御社が運営するお弁当宅配・ケータリングの総合モール「ごちクル」は、今年(2016年)1月にお弁当の累計販売数1,000万食を突破されたそうですね。具体的にどのような方がご利用されているのでしょうか?

「ごちクル」利用者は95%以上を法人のお客様が占めています。重役会議、イベント、社員研修、ケータリングパーティなどのご利用シーンが多く、秘書の方、総務・人事部門やイベント運営のご担当者様から直接ご注文をいただいています。

――七夕の日にあたる2009年7月7日に「スターフェスティバル( = 英語で”七夕”の意)」という会社がはじまり、「ごちクル」サービスが開始されてからこれまでの間、どのような変化がありましたか?

当初は東京・大阪・名古屋の大都市圏を中心に展開していましたが、2013年12月から47都道府県にサービスエリアを拡大しました。最近は単にさまざまなお弁当を提供できるだけでなく、「東京の有名店の味を札幌・大阪・福岡でも食べられる」といった要望にお応えすべく、「ほかでは食べられない味を提供できる」というところが強みに加わりました。会議・イベント・研修・接待など、お客様のさまざまなシーンで必要なお弁当を提供するため、いまも日々商品やサービス改善に取り組んでいます。

――お弁当の品揃えは「800ブランド8,200種」を超えるそうですね。これらのお弁当を製造するパートナーさんとは、どのようなつながり方をしているのでしょうか?

お弁当の製造業者様とパートナーシップを結び、「製造」以外の部分にあたる「商品開発」「販売促進」「受注」「配達」を当社が提供する、というのが「ごちクル」の基本的なビジネスモデルです。

製造パートナー様からモールへの出店料をいただくことはいっさいなく、出店数もKPIに設定していません。当社から製造パートナー様にお声がけをし、しっかりと信頼関係を築いたうえで商品開発をサポートしています。進むべき道を共有できる方々にパートナーとなっていただいています。

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――テスト期間を経て2015年8月からは「シャショクル」なるサービスも開始されました。こちらはどんなサービスなのでしょうか?

大口の受注生産によってお客様に最適なコストパフォーマンスで商品を提供できるのが「ごちクル」の強みです。一方で「おなかが空いたから、今日みんなでランチを頼もう」という気軽なニーズに対応できずにいました。

有名店のメニューのなかから日替わりでお弁当をお届けする「シャショクル」は、そんな利用シーンに対応するデリバリー型の社員食堂です。「ごちクル」がBtoBなら、「シャショクル」はBtoE(Business to Employee、Employeeは従業員のこと)。契約は企業様と行わせていただき、サービスを利用されるのはその企業の個人の社員様になります。社内に販売スタッフを派遣する「対面販売プラン」と「定期配送プラン」があります。

――ランチ時間の混雑などで困っている “お弁当難民”にも対応できますね。

大規模な企業ですと、エレベーターで外に出たり、混んでいる飲食店に並んだり、コンビニで行列するなどで、貴重なランチの時間が削られてしまいます。その点「シャショクル」は、日替わりで異なる商品を組み合わせて、オフィス内で商品を提供しておりますので、ご利用者様にとても喜んでいただいています。

――ところで「ごちクル」「シャショクル」のいずれも、大きなテレビCMなどを打っているわけではありません。それでも利用者が堅調に伸びているのはなぜなのか……。ターゲットとなる企業の総務・人事部門のイチ担当者に対し、どのようなブランディング戦略をとってきたのでしょうか?

サービス開始当初は「こういう企業で利用されるだろう」「こういうシーズンならば需要が高まるかも」という仮説をもとに、総務・人事の方々が使う媒体に出稿したり、そうした方が集まる場でちらしを配ったりするなどの施策を続けてきました。それを継続することで、おのずと注文履歴がストックされていきますので、ここからご利用の多い業界・業種を洗い出したうえで、さらなるプッシュ型のアプローチをかけることができます。

あとは、電話注文に対応するコールセンターとWebを通じたマーケティング/ブランディングですね。

――Webだけではなく、コールセンターもマーケティング機能を持っているのですか?

「ごちクル」へのオーダーは、電話・インターネット・FAXのいずれかです。インターネット経由のご注文比率は拡大傾向にはあるのですが、私たちはこのうち常時30〜40名の人員を配置するコールセンター(電話注文)の窓口業務についても重要視しています。

お弁当発注のご担当者様は、大切な会議の時など含めてお弁当選びに失敗できない状況にあります。たくさんの方々の「お食事」の用意というのはまさに責任重大な業務のひとつなのですが、なるべく時間はかけずに、場に適したものをご用意したい…というのがご担当社様の本音だと思います。インターネットでも条件に合わせて簡単に商品を検索する機能をご用意していますが、お電話で注文や相談をしたい、というお客様へはコールセンターがお弁当選びのお手伝いをします。

――たしかに100人分のお弁当を注文するのはなかなか責任の伴う業務ですもんね。

我々のコールセンターは単にオーダーを受けるだけではなく、お客様のシーンにあったお弁当の紹介を行う”コンシェルジュ”の機能を備えています。オペレーターも研修期間から始まって「オペレーター→コンシェルジュ→チーフ→キャプテン」とステップアップしていきます。ごちクルで扱う多彩な商品についての知識を備えています。日時・ご予算・人数といったご利用シーンくらいしか定まっていなくても「それならば、こんなお弁当が人気ですよ」とおすすめすることができるんです。

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――かなりコミュニケーションを重視されたオペレーションですね。

はい。ご担当者様の多くは、ご注文の決裁権を持っていらっしゃらないこともあります。会社の決済を取るためには段階を踏まなければならないため、複数回電話のやりとりを繰り返しながら決めていくこともあります。再びご注文いただくときにも、ご利用シーン・ご予算は前回とは異なる場合も多々ありますので、その都度ご相談に応じます。

――効率性だけをとれば「ネット注文」のほうに分があるのでしょうが、密に連絡が取れるであるとか、「電話注文」ならではの良さもあるというわけですね。

ネットからのご注文件数、比率はどんどん伸びております。一方、電話で注文したい、少しマニアックなことも含めて相談したい、という場合にコンシェルジュをお選びいただく方も多くいらっしゃいます。1回あたりのご注文額を比較すると、ネット注文より電話注文のほうが平均4,000円ほど多くご注文いただいている、という結果が出たりもします。もちろん、すでに決まっているご予算を引き上げることは難しいですが、他社にしようかどうかで悩んでいるとき、コンシェルジュの対応が当社を選んでいただく決定打になったりしているようです。たまにオペレーター指名で注文が来るときもあるんですよ。

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――きめ細かな商品提案ができるからこそ、お客様も納得いくかたちで注文するのでしょう。ほかにコンシェルジュ機能があるからこそ得られるメリットを挙げるとするといかがでしょう?

お客様とのお話が盛り上がるなかで、次のご利用機会や普段のご利用シーンを伺ったり、リピーターのお客様に対しては前回ご注文時のフィードバックをいただいたりもしています。実はそうしたご意見が、次の商品開発に活かせるんです。

ご利用が人気商品だけに偏ってしまうことは避けたいので、常に競争力のある商品ラインナップを取りそろえたいのですが、では、競争力がある商品は何なのか――。それが”ナマの声”としてコールセンターに集まってきます。お客様が「これ、おいしかった!」と思われた商品をベンチマークにすることで商品開発に活かせますし、また、ご予算・ご注文日時の関係で注文を受けられないケースなどを記録しておけば、そんなケースにも対応できる商品・店舗を新たに増やすことができる。実は、お客様との接点となるコールセンターは、Webマーケティングと並び非常に重要なマーケティングセクションなんです。

――今後「ごちクル」というブランドの戦略は?

BtoBのサービスとしての信頼性を上げ、「ここに頼めば大丈夫」という安心感を与える存在になることが大前提ですが、単にブランド力を上げるだけではなく、法人サービスとしてのしっかりとした基盤をつくりたいです。

――それはどういうことでしょう?

当社のようなサービスは、お客様からリピートされる仕組みが必要です。当社のこれまでのマーケティングは発注担当者「個人」に向けられたものでした。しかし、せっかく新規のお客様を獲得しても、その方が “自動的に卒業していく”ということに対応できていませんでした。ご担当者様に人事異動があり、別の人に業務が引き継がれれば、ゼロから関係をやり直さなければいけなくなりますから。

――つまり、取引先でサービスを引き継いでもらう仕組みをつくる、ということですね。その点でいうと、御社は2014年にアスクル株式会社と業務・資本提携契約を締結しました。

そうですね。アスクルさんは、法人同士の契約ながらも「会社の経費で文房具を頼むなら、アスクル」というルールを企業の中に浸透させています。これと同じような仕組みを「ごちクル」でも構築していきたいと思います。

――御社が目指す、誰もが手軽にごちそうを食べられる世界、期待しております。

はい。これからは、法人だけではなく高齢者施設、学校、保育園など、これまでアプローチできなかった新しい顧客層も念頭に置き、「弁当」という世界に誇れる日本の商品を世界にも届けていきたいです。

――本日はありがとうございました。

濱野 亜紀はまの あき

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慶応大学理工学部卒業後、株式会社日立製作所に入社。その後、楽天株式会社にて6年、野村證券株式会社にて2年、企画・マーケティングに従事。出産後は専業主婦に。しかし、働きたい気持ちが沸き上がり、2012年1月にスターフェスティバルへ入社。宅配弁当の総合モール「ごちクル」のサービス立ち上げに携わり、ブランド管理、マーケティング、カタログの発行企画、編集長を務め、2013年7月よりごちクル主宰となる。商品戦略、コールセンターまでを含めたごちクル全般を統括するごちクル事業責任者として活躍し、2015年より執行役員にも就任。

お弁当宅配総合モール「ごちクル」:https://gochikuru.com/
デリバリー型 社員食堂「シャショクル」:https://shashokuru.com/
スターフェスティバル(株):https://stafes.co.jp/

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