【社会保険】算定基礎届の時期に残業すると損?算定基礎届とは何か?

「算定基礎届」とはどのような届け出なのでしょうか。いちばん基本的な部分をご説明します。
※2020年6月25日、標準報酬月額の特例改定について国民年金機構より発表がありました。
新型コロナウイルス感染症の影響により休業した方で、休業により報酬が著しく下がった方について、事業主からの届出により、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、通常の随時改定(4か月目に改定)によらず、特例により翌月から改定可能となりました。
詳細は、以下をご確認ください。(2020年6月26日 スモビバ!編集部追記)
【参考】
国民年金機構:【事業主の皆さまへ】新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合における標準報酬月額の特例改定のご案内
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目次
- POINT
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- 健康保険料と厚生年金保険料は、「標準報酬月額」で決まる。
- 「標準報酬月額」を1年に1回届け出ることを「算定基礎届」と言う。
- 「標準報酬月額」は支払う保険料だけではなく、将来の年金額にも反映される。
社会保険料の基本的な決め方
毎月の給与から控除される社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)は、どのように決めるかご存知ですか? 支払われる給与額に保険料率を何パーセントか掛けて計算するのでしょうか?
…答えはNOです。毎年4月~6月の3ヶ月間に支払われた給与額の平均を等級表にあてはめ、該当する「標準報酬月額」に保険料率を掛けたものが社会保険料になります。
高給取りほど高い保険料
自動車保険の等級は事故率で決まりますね。事故率の高い方は高い保険料を支払うことになります。一方、社会保険料の等級はその人がもらっている給与額で決まります。つまり、給与額が高い方は高い等級となり、それに見合った社会保険料が給与から控除されるということになります。
実際に「標準報酬月額」を求めてみよう
例えば、4月に24万円、5月に26万円、6月に25万円の給与を支払われたAさんの標準報酬月額はいくらになるでしょう?
(24万円+26万円+25万円)÷3=25万円
3ヶ月間の平均給与月額は、25万円ですね。これを「報酬月額」と言います。そして等級表にあてはめると「標準報酬月額」は26万円ということがわかります。
※標準報酬月額等級表(平成28年3月現在適用:抜粋)
- 3ヶ月間の平均給与月額=「報酬月額」
- 1を等級分けしたもの=「標準報酬月額」
1「報酬月額」と、2「標準報酬月額」。名前が似ているのでややこしいですね。
給与ソフトを使って給与計算をしていれば、1と2を求める作業はソフトがやってくれますのでとても便利です。
標準報酬月額の届け出
毎年4月~6月の3ヶ月間の平均給与月額から標準報酬月額をもとめ、7月1日から7月10日の間に年金事務所(又は健康保険組合)へ届け出ます。これを「算定基礎届」と言います。届け出ることで、各人の社会保険料が決まり、原則その年の9月分から翌年の8月分までの保険料として適用されます。算定基礎届は、1年に1回の大切なイベントです。
なお、労働保険の年度更新の提出期限も同じく7月10日ですので注意しましょう。(※)
※令和2年(2020年)度の労働保険の年度更新期間については、新型コロナウイルスの感染症の影響を踏まえ、6月1日~7月10日から6月1日~8月31日に年度更新期間を延長することが、厚生労働省から発表されました。(2020年5月11日 スモビバ!編集部追記)
準備のポイント
算定基礎届を提出するにあたり、以下の点に気をつけて準備しましょう。
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- 7月1日現在、在職している社会保険加入者が算定の対象者です。
6月中旬頃、年金事務所(又は健康保険組合)から算定基礎届の用紙が会社に送られてきます。そこには社会保険に加入している方の氏名や生年月日等があらかじめ印字されていますが、少し古い情報のため既に退職された方の名前が入っていることがあります。退職された方は算定の対象外になりますので二重線で消しましょう。
- 7月1日現在、在職している社会保険加入者が算定の対象者です。
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- 在職はしているが、海外駐在や休職中で姿が見えない方も算定の対象です。
7月1日現在、社会保険に加入しているものの海外駐在中の方や、病気やけがで休職している方、又は産前産後休業・育児休業・介護休業などでお休み中の方も算定の対象者です。
- 在職はしているが、海外駐在や休職中で姿が見えない方も算定の対象です。
- 6月1日以降に新たに社会保険に加入した方は、標準報酬月額を届け出たばかりなので算定の対象外になります。
算定基礎届の時期に残業すると、損?
標準報酬月額は、基本給の他役職手当や通勤手当、そして残業手当なども含んで計算します。「4~6月に残業すると損だよ。」とよく言われているのは、この3ヶ月間に残業手当が多くつくと標準報酬月額が高くなり、高い保険料を給与から控除されることになるという理由からです。
でもちょっと待ってください。実は将来もらう年金額の計算の時にも標準報酬月額が関係してくるのです。サラリーマンやOL時代の標準報酬月額は、入社してから退職するまでいろいろと変わるでしょうが、その平均額を元にして年金額を計算します。つまり、たくさん保険料を払っていた方は将来たくさん年金をもらえるということです。長い目で見れば、決して損だとは言えないでしょう。
まとめ
算定基礎届は保険料という「支払うお金」と、年金という「もらうお金」の元になる標準報酬月額を決める、大切な届け出だということがおわかりいただけましたでしょうか。このような届け出業務を単なる書類作成と捉えずに、内容を理解しながら取り組まれるとより有意義になると思います。心に余裕を持って算定基礎届の時期を迎えましょう。
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