口座名義人が亡くなったら、預金が下ろせない!?

愛する家族のために。そんな気持ちで、コツコツと貯金をされている方もいると思いますが、実は「口座名義人が死亡すると、預金が下ろせない」ことがあるってご存じですか? そうなってしまったなら、お葬式をするのも大変ですよね。今回は、そうしたリスクとともに、万一の時に役立つ「遺言代用信託」についてご紹介します。知っておいて、損はありませんよ!
[おすすめ]法人の会計業務をかんたんに!無料で使える「弥生会計 オンライン」
目次
- POINT
-
- 口座名義人が死亡すると、手続きなしでは家族でも出金できない
- 生前に「遺言代用信託」を契約しておくと出金可能
- 新しいサービスだが、メリットが大きく人気に
誰もが起こり得る突然の不幸。ココに潜む資金リスクを知っておこう
誰もが理解していることですが、不幸は突然やってきます。
近年では「終活」がブームになったこともあって、持病がある方、高齢の方を中心に遺言状の作成や早期の相続対策をする人が増えています。
しかし、それでも依然として「自分は元気だから」「それほど資産を持っていないから」と、とくにアクションを起こさない人が多いのも実状。そして残念ながら、万一の時になってから慌ててしまったり、どうにも手が打てない状況に陥ってしまったりというケースが後を絶ちません。
今回取り上げた「預金が下ろせない」ということも、よくあるトラブルの一つ。現金は遺産として分割する財産に当たるので、口座名義人が亡くなった後はたとえ家族であっても出金できません。
そうなってしまうと、お葬式の費用は家族や親戚で負担することになりますが、お葬式の平均費用はおよそ200万円と言われており、それだけの費用をまかなうのは大変。また預金について、法定相続人すべてから承認が得られれば出金も可能なのですが、それをお葬式と同時並行で進めるということは困難であり、現実的ではないといえます。
さらに、亡くなった方が個人事業主だった場合、その影響は社員、また取引先にまで及びます。事業用口座であっても、名義は法人でなく個人であるため、万一の時は出金ができないのです。そうして事業資金が確保できなければ、会社としての存続は難しく、最悪のケースとして倒産・失業という可能性まで考えられます。
最近耳にする「遺言代用信託」って何?
こうしたリスクは発生してから対処できませんが、事前に回避することができます。それが、最近ニュースや雑誌・Webメディアでよく耳にする「遺言代用信託(金融機関によって商品名が異なります)」です。
遺産代用信託は言葉通り、契約したお客さんに代わって金融機関がお金を支払うという”遺言に代わる”ように設定することができます。契約時、自身が逝去した場合に金融機関が支払う相手(受取人)を指定すると、金融機関は受取人の求めに応じて、お金を支払われる仕組みとなっています。
具体例で考えてみましょう。
妻と2人の子どもがいる50歳男性のAさんは、「自分に何かあった場合に、家族だけでは葬儀費用を捻出できないから」と生前に遺言代用信託を契約しました。それから数年後、Aさんは不幸にも交通事故で急逝。ここでAさんのご家族は、葬儀費用を捻出しなければなりませんが、遺言代理信託によって費用の確保ができ、Aさんの恩師や友人、親交があった方々とともに送り出すことができました。
また、この商品は当面の事業資金を確保するという利用方法も考えられます。
とくに個人事業主は個人名義の口座で事業の運転資金を管理していることも少なくありませんが、こうしたケースでも口座名義人が逝去すると、口座は凍結されてしまいます。しかし、遺言代用信託を利用すると、事業の後継者として指名した方は支払いを受けることができ、当面の事業資金が確保できるのです。
同じような仕組みが設定できる商品として、生命保険も考えられます。ただ、支払保険料から契約初期費用が差し引かれたり、高齢になってからの加入が難しかったりなど、いくつかのデメリットもあり、この点から遺言代用信託を選ぶ方も多くいます。
郵送申込み、中途解約OKなどニーズに対応した商品も
遺言代用信託は、多くの金融機関で商品を取り扱っています。ここで注意したいのが、商品の内容や契約方法の違い。「どこだって同じでしょ?」と思われる方がいるかもしれませんが、決してそうではないのです。いくつかポイントをご紹介しましょう。
●信託金額
すべての商品は、上・下限の金額設定があります。ただ、金額の幅は各社とも広く、下限では100万円以下、上限では3000万円以上とする商品も多くあります。
●申込方法
多くは来店し、窓口申込が必要です。ただ、オリックス銀行の「かんたん相続信託」のように、一部商品は必要書類を揃えて郵送する形での申込みが可能。移動が大変な方にはとても便利です。
●元本受取方法
信託した分をすべて引き出す「一時金型」と、毎月一定額を支払う「年金型」があります。
●受取人
基本的には1名のみですが、一部商品には複数人設定が可能、複数契約が可能など柔軟に対応した商品もあります。
●中途解約の可否
他の信託商品も同様ですが、信託の基本的な仕組みは「お客さまから預かったお金をもとに運用する」ことで利益を得ていますから、商品によっては原則不可という商品が比較的多いです。他方で、オリックス銀行の「かんたん相続信託」のように手数料なしで中途解約が可能なものもあります。
●予定配当率
信託する金額が大きくなれば、やはり気になるのは配当率。この点を踏まえて商品を選ぶ方も少なくないでしょう。基本的には普通預金より高めの設定ですが、こちらも商品ごとに違いがあるため、複数の商品を比較・検討したいものです。
遺言代用信託は2010年ごろに登場しましたが、メリットの大きさと契約のかんたんさから、契約者が急増しています。ご自身、またご両親や親戚の方のために、ぜひ一度チェックされてはいかがでしょうか。
photo:Thinkstock / Getty Images