電子帳簿保存法が改正されて何が変わる?

確定申告では、帳簿づけの大変さばかりに目がいきがちですが、終わった後の資料の保存に頭を悩ませている人も少なくないでしょう。膨大な紙の資料を7年、場合によっては10年も保存しなければなりません。そこで、にわかに注目を集めているのが、「電子帳簿」です。2016年1月1日から適用された「改正電子帳簿保存法」の内容について解説したいと思います。
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目次
- POINT
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- 契約書等のスキャナ保存は原則すべてOK
- 電子署名の廃止
- カラーでの保存が不要に
3万円以上の契約書もスキャナ保存が可能に
2016年1月1日から「改正電子帳簿保存法」がスタートしました。「電子帳簿保存法」というのは、国税関係の帳簿書類を税務署などの承認を条件に電子データとして保存してもいいよ、と認める法律です。
今回の改正でスキャナ保存の条件が緩和されたため、ペーパーレス化がより進むのではないかと期待されています。全く知らない人も多いと思うので、どんな点が改正されたのか、説明していきましょう。
改正の背景として踏まえておいてほしいのが、帳簿の電子保存は普及してきた一方で、紙文書のスキャナ化がどうも進んでいないということ。そこで、スキャナによる保存を浸透させるように、もう少し条件を緩めていこうよ、というのが、改正の方向性の一つとなります。
まずは、これまで契約書や領収書については、3万円未満の場合のみ、スキャナ保存が認められていました。3万円以上の契約書・領収書は、その重要性からスキャナ保存が認められていなかったのですが、今回の改正によって、金額にかかわらず、スキャナ保存の対象となることになりました。
以前は、スキャナ保存するには、3万円の金額基準によって業務を分ける必要があったことを思えば、大きなポイントの一つと言えるでしょう。
「電子署名」も必要なし
また、簡単で便利なスキャナ保存で問題となるのが、偽造される恐れがあるということ。偽造を防ぐために、これまでスキャンしたデータについては、入力者もしくは監督者が「電子署名とタイムスタンプ」を行わなければなりませんでした。しかし、電子署名は、面倒で手間のかかる準備が必要なため、スキャナ保存のハードルを上げていました。
そこで、今回の改正では、電子署名が廃止されることが決定。その代わりに、入力者もしくは監督者に関する情報を確認できればよい、ということになったんですね。そして、電子文書が「いつの時点で存在していたか?」を証明する「タイムスタンプ」を付していればOKということになりました。
それ以外にも、これまでは見積書、注文書、検収書などの資金や物の流れに直結・連動しない書類もスキャンする際には、カラー階調で読み取らなければなりませんでしたが、改正後はグレースケールでの読み取りが認められることになりました。さらに、これまで必要だった「書類の大きさ情報」の保存が必要なくなるなど、スキャナ保存の要件がかなり緩和されたのが、今回の改正ポイントです。
3カ月前に申請書を提出しよう
それならばぜひ、という人は、電子データでの書類の保存に切り替える3カ月前に、申請書を提出する必要があります。申請書は税務署の窓口でももらえますが、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。マイナンバーの記載も必要なので、忘れないようにしましょう。
【参考】国税庁:申請書等様式
ペーパーレス化が実現できれば、経理事務のスピードも上がってくるはず。紙での資料の整理が苦手、もしくは、スペース的に厳しい人は、電子帳簿にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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