最大65万円の特別控除も!不動産所得の基本を知ろう

一昔前は、不動産所得の確定申告といえばアパートや貸家の「大家さん」がするもの、というイメージでした。しかし最近では、サラリーマンが都市部の投資用ワンルームマンションのオーナーになるなど、会社等から給料をもらいながら不動産所得を得る新しいタイプの大家さんも増えており、不動産所得は意外と身近なものになりつつあります。今回は、不動産所得の概要をお話しいたします。
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目次
- POINT
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- 幅広く「大家さん」の収入は不動産所得
- 青色申告者は10万円の特別控除がある
- 一定要件を満たせば特別控除は最大65万円に!
こんな方は、不動産所得の確定申告を!
不動産所得とは、原則として次の1~3の所得のことをいい、こうした所得のある方は、不動産所得の確定申告が必要になります。
- 土地や建物などの不動産の貸付け
- 地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け
- 船舶や航空機の貸付け
大雑把に言うと、いわゆるアパートや貸家の「大家さん」としての収入は不動産所得になる、と考えてよいでしょう。最近、若い方を中心に増えているという投資用ワンルームマンションのオーナーも例外ではなく、その家賃収入は不動産所得として申告する必要があります。また、ビルの屋上や道路沿いの土地に看板を設置して広告料を受け取るような場合、その広告料は不動産所得となります。
ただし、次のものは不動産の賃料収入であっても不動産所得には該当しません。
- 個人の不動産業者が販売(転売)目的で購入した物件を販売するまでの間に一時的に貸し付けた場合
- 保管責任がある有料駐車場・有料駐輪場など
- 下宿等の貸付で食事を提供する場合
ただし、1の場合で、不動産賃貸業(大家さん)として不動産を購入し「何年先かはわからないけれど、いずれ売るかも知れない」と考えているようなときや、2の場合で、月極駐車場として駐車スペースを賃貸しているだけのときなどは、不動産所得になります。
実は単純?不動産所得の計算方法
不動産所得の計算方法は、とてもシンプルです。
総収入金額-必要経費=不動産所得の金額
さらに、青色申告者に対しては、不動産所得の金額から65万円もしくは55万円、10万円を上限に、「青色申告特別控除」を受けることができます。
平たく言うと、シンプルに計算した不動産所得の金額から、65万円もしくは55万円、10万円をさらに差し引くことができ、不動産所得をより小さくすることができるオトクな制度がある、ということです。
青色申告特別控除を受けるためには、原則としてその年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出することも必要になります。オトクな制度を使うためには、帳簿を付けて領収書などをきちんと保存し、税務署に申請を提出してくださいね、というしくみになっています。
65万円と55万円、10万円、何が違うの?
青色申告特別控除は65万円もしくは55万円、10万円が上限、と申し上げましたが、その差は最大55万円。
できれば最大の65万円の控除を受けたいところですが、まず最大55万円は、次の3つを全て満たすことが条件となります。
- 不動産貸付けが事業として行われている(事業的規模)であること
- 取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること
- 記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること
事業的規模とは、原則として社会通念上、事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します。ただし、建物の貸付けについては、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます。(5棟10室基準、などと呼ばれています)
- 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
- 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
最大55万円の特別控除の要件を満たしたうえで、e-Taxによる申告(電子申告)もしくは、承認を受けて電子帳簿保存をしている場合は、最大65万円の控除ができます。
なお、55万円の控除を受けるための3要件を満たさない場合は、青色申告特別控除の金額は10万円が上限となります。
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