売上の入金が来ない!どうする?【個人事業主編】

会社員からフリーランスになると、今まで会社がやってくれていたことも自分で行わなければならなくなります。税務処理もそうですが、それ以上に大変なのが、入金管理ではないでしょうか。依頼を受けて納品すればそれで仕事が終わりではなく、請求書を出して報酬が振り込まれて初めて仕事が完了ということになります。しかし、すんなり支払いをしてくれる取引先ばかりとは限りません。もし、取引先から支払いがない場合、フリーランスはどう対処すべきなのでしょうか。
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目次
- POINT
-
- 支払いの督促を行う
- 貸倒損失として計上する
- サインを見逃さない
段階に応じて催促していく
すでに納品したにもかかわらず、なかなか支払いが行われない――。
そんな経験をしたことのあるフリーランスの方は少なくないでしょう。僕のようなライターにとっても無関係な話ではありません。この出版不況のなか、とりわけ雑誌は軒並み部数が落ちているので、休刊や廃刊が相次いでいます。もちろん、廃刊になっても原稿料が支払われれば問題ありませんが、出版社ごと倒れてしまうことも……。
支払いがなされない場合、まずは支払日もしくは振込日の確認を行いましょう。社内的な事情で遅れていることもあれば、同じプロジェクトのなかで自分が関わったところ以外の箇所がまだ終わっておらず、すべてが完了してから支払うつもりなのかもしれません。現状確認をしたうえで、必要に応じて、支払いを促しましょう。
催促しても支払いに応じてもらえない場合は、請求書を再発行します。あまりにも相手の態度が悪質な場合は内容証明郵便で出して、支払いの催促や督促を行う方法も検討しましょう。
最終手段は、60万円以下の支払請求の場合に行える小額訴訟となりますが、それなりに手間がかかるうえに、回収できるかどうかも定かではありません。時間と費用が制約されやすいフリーランスが実際に行うのは、困難が伴うといえそうです。
3タイプある「貸倒損失」
いろいろ手は打ったけれども、どうしても回収できないこともあるでしょう。
取引先が業績悪化によって、経営的に支払不能に陥っている場合などがそうです。もはや回収の見込みのない売掛金や貸付金は、貸倒損失処理を行うことで、経費(損金)にすることができます。
貸倒損失が認められるケースは3つあります。
まずは、「金銭債権が切り捨てられた場合」です。これは例えば、業績悪化によって取引先に会社更生法や民事再生法が適用された場合、規定によって切り捨てられた金額は、その事実が生じた事業年度の経費(損金)の額に算入することができます。
このように、法律上の債権の切り捨てや債務免除があった場合を「法律上の貸倒れ」と呼びます。
それ以外に、「事実上の貸倒れ」というものもあります。これは「金銭債権の全額が回収不能となった場合」です。この場合も、それが明らかになった事業年度において貸倒れとして経費(損金)に計上することができます。ただし、担保がある場合は、その担保を処理した後でなければ、経費)(損金)にすることはできないので注意しましょう。
1年以上回収できなければ……
3つ目は、取引停止後1年以上回収できない場合や、回収コストが債権額を上回る場合です。これを「形式上の貸倒れ」と呼びますが、もっとも身近なパターンかもしれません。
この場合は、その債務者に対する売掛債権について、その売掛債権の額から備忘価額(1円)を控除した残額を貸倒処理することができます。ただし、損金にできるのは、売掛債権に限るため、貸付金などそれ以外の債権については、この方法は使えないことを覚えておきましょう。
フリーランスならば、誰もが直面するリスクのある取引先の「未払い」。取引先の経営状態が悪くなった場合はどうしようもないですが、未払いに至るまでに支払いの遅延などの前兆があるものです。サインを見逃さないようにして、危ないと思えば、仕事から手を引くのも、防御策の一つです。
しかし、たとえ業績が危ない取引先でも、本当にきちんとした担当者がついていれば、自社の業績が危ないと見れば、まず取引先を優先してしかるべき対応をとるものです。逆に、いくら取引先の経営状態がよくても、担当者がいい加減だったり、問題社員であったりすれば、フリーランスが不当な扱いを受けることにつながりかねません。報酬の未払いがその典型的な例です。
会社が守ってくれる会社員とは異なり、フリーランスは自分で自分を守る必要があります。未払いを初めとした報酬トラブルに陥らないように、本格的に仕事に取りかかる前の打ち合わせ段階で、問題が起きそうな相手かどうかを見極めたうえで、受注するかどうかを決めるのがベストかもしれません。個人的な経験としては、メールのレスポンスが遅いところは、トラブルになりやすく、かつ、こじれる傾向にあります。
やはり、肝心なのは「人」なので、会社の規模や知名度に惑わされることなく、信頼して気持ちよく仕事ができる相手と、お互いにとって良い環境で、仕事をしていきたいものですね。
photo:Thinkstock / Getty Images