今年退職して起業した人のための確定申告のポイント

学校を卒業していきなり起業する人よりも、脱サラして起業に踏み切った人のほうが多いことでしょう。しかし、退職時の確定申告で、所得税の還付を受けられることは意外と知られていません。今回は退職した年の確定申告のポイントについて説明したいと思います。
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2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!
目次
- POINT
-
- 退職した年は所得税の納め過ぎに注意
- 所得税の還付は退職してから5年以内
- 退職金の所得税還付も忘れずに
「年末調整」は会社員だけ
脱サラして独り立ちを始めたところで、会社がしてくれていたことに気づく人も多いでしょう。そのうちの一つが、「年末調整」ではないでしょうか。12月に給与明細とともに源泉徴収票が同封されているのを見ると、会社員は「今年ももう終わりか」と思うものです。
この年末調整とは何かといえば、会社員は毎月、給与から所得税が引かれていますが、その額は毎月の給与を年換算して弾き出されたものです。つまり、本来その年に支払わなければならない所得税の額とはズレが出てしまいます。
その過不足額を精算するのが「年末調整」です。この年末調整をもって、大半の会社員は所得税の納税が完了することになります。そのため、会社員は確定申告の必要はないというわけです。
中途退職すると所得税が納め過ぎに
そこで気をつけてほしいのが、退職した年の所得税です。その年の年末調整をする前に退職すると、所得税が納め過ぎになってしまうケースがあります。
もちろん、同じ年に転職していれば新しい勤務先で年末調整を受ければよいだけの話なのですが、退職して独立した場合は年末調整を受けないままになってしまいます。そのため、翌年に所得税の確定申告をして、還付してもらう必要があるのです。
その際には、辞めた勤務先から給与所得の源泉徴収票をもらって確定申告書に添付する必要があるので、忘れないようにしましょう。また、受付は退職してから5年以内です。忘れていた人も期限内であれば慌てる必要はありませんが、その一方で、あまり後回しにしていると、あっという間に5年経ってしまうので注意が必要です。
退職金の所得税はどう計算する?
さて、もう一つ退職といえば、退職金についても忘れてはなりません。退職金にかかる税金がどうなるかについては、当事者になるまではほとんどの人が知らないままでいます。
退職金は、原則として他の所得と分離して所得税の額を計算します。
まず下記のような計算で、退職所得を弾き出します。
退職所得=(退職金-退職所得控除額)×0.5.
さらに、退職所得控除額については、下記のように計算します。
◎勤続年数が20年以下
40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
◎勤続年数が20年を越える場合
70万円×(勤続年数-20年)+800万円
例えば、勤続30年で退職した場合は、
70万円×(30年-20年)+800万円=1,500万円
となり、退職所得控除額は1,500万円となります。
退職金が1,500万円以下ならば所得税は支払わなくてよいということです。
もし、退職金が2,000万円ならば、下記のようになります。
退職所得の金額=(2,000万円-1,500万円)×0.5= 250万円
つまり、2,000万円の退職金のうち、250万円分だけにのみ所得税がかけられることになります。
退職所得は支給時に税金が源泉徴収されるので、「退職所得の受給に関する申告書」さえ出せば、確定申告は不要です(ただし、役員としての勤続年数が5年以下の法人役員などの退職金については、計算過程で2分の1にしない)。
ところが、この退職金についても、退職前の給与が少ない場合は、確定申告をすることで、所得税の還付が受けられるケースがあります。退職金についても、しっかりと確定申告を行うのが良いでしょう。
以上、退職時における所得税の還付について説明しました。後ろを振り向かずに前進するエネルギーは大切ですが、所得税の還付を受ける確定申告だけは忘れないようにしましょう。
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