マイナンバーを請求書や領収書に書いたほうがいいのか?

2015年10月から通知カードが発行され、2016年1月からマイナンバー制度がスタートしています。自分のマイナンバーである12桁の数字を自ら管理しなければなりません。
個人情報の固まりといっても過言ではないだけに、漏洩しないように気をつけたいところですが、相手から求められると、あまり考えずについ提示してしまいそうです。
今回は、請求書や領収書などにマイナンバーを書くように求められた場合に書いてもいいのか、について考えてみたいと思います。
[おすすめ]「弥生の給与計算ソフト」なら目的や業務別に選べる!まずは無料体験
2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!
目次
- POINT
-
- 請求書、領収書にはマイナンバーの記載は必要なし
- 支払調書と源泉徴収票にはマイナンバーの記載が必要
- 法人番号は利用に制限がない
請求書にマイナンバー記載を求められたら?
2015年10月、通知カードが発行され、ニュースでマイナンバー制度について取り上げられることも増えてきました。
しかし、内閣府がマイナンバー制度に関する世論調査を行ったところ、「内容を知らない」という回答が5割超に上り、まだまだ理解が進んでいない実態が浮き彫りになっています。これから「こういう場合はどうするの?」という疑問がたくさん上がってくると思います。
マイナンバーで今後よく出てきそうな疑問の一つが、「こういうとき、マイナンバーを教えてもいいのか?」ということではないでしょうか。
取引のあるクライアントとは、日々さまざまな書類のやりとりを行っているはずです。請求書、見積書、領収書……。これらの書類について、もし、個人事業主がクライアントから「マイナンバーを記載してください」といわれた場合、教えてよいのでしょうか。
その答えは、マイナンバー制度の目的を考えればわかるはずです。
税務署に提出する法定調書には必須
マイナンバーとは「住民票を持つすべての人に1人1つの番号を付して、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されるもの」です。
上記の目的を踏まえると、マイナンバーを提供する相手は主に行政機関ということになります。しかし、マイナンバーを扱うのは行政機関だけではありません。民間事業者でも、下記のケースで、マイナンバーを相手から取得して記載する必要があります。
- 従業員やその扶養家族のマイナンバーを、給与所得の源泉徴収票や社会保険の被保険者資格取得届などに記載して、行政機関などに提出するとき
- 税務署に提出する法定調書を作成するとき
1.は従業員とその扶養家族についてなので、勤務先から求められればマイナンバーを提供してよいということがわかります。
問題は2.で、民間業者は税法上、税務署に提出する法定調書にはマイナンバーを記載しなければなりません。
つまり、民間業者が、従業員や取引先の法定調書(税務署)を作成するためには、マイナンバーを把握する必要があるということです。
一方、請求書、領収書、見積書などのように法定調書ではないものについては、マイナンバーの記載は必要ありません。
税務署に提出する支払調書や源泉徴収票へのマイナンバーの記載については、2016年分の支払いにかかわる分からです。2015年分までの報酬については、記載が必要ありませんので、間違えないようにしましょう。
注意!法人番号は記載OK!
ちなみに、マイナンバー制度では個人に番号が割り当てられるだけではなく、企業などの法人には、国から13桁の「法人番号」が与えられます。
そこで誤解されやすいのですが、「法人番号」は「マイナンバー」ではありません。法人番号は、利用・用途に制限はなくインターネット上でも公開されるオープンなものです。
法人番号が必要になる場面は、支払調書、源泉徴収票はもちろん、許認可書類や社会保険関係書類など多岐にわたります。マイナンバーは記載する必要がない「請求書」や「領収書」などにも法人番号を付記するケースも出てくることが考えられます。
自分のもとへ送られてくる書類に、今後、取引先の法人番号が記載されてくることもあるかもしれません。それは「マイナンバー」ではないということを頭に置いておいてください。
自分のマイナンバーが漏えいしないように気をつけるだけではなく、自分が他人のマイナンバーを預かる立場になることも考えられます。そうなったときに、適切な対応が取れるようにさまざまなケースを想定しておきましょう。
(編集部注)2015年(平成27年)10月2日に所得税法施行規則等の改正が行われ、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行後の2016年(平成28年)1月以降も、給与などの支払を受ける方に交付する源泉徴収票などへの個人番号の記載は行わないこととされました。
なお、税務署に提出する源泉徴収票などにはマイナンバーの記載が必要ですのでご注意ください。
(参考)改正前は、支払を受ける方に対して交付する源泉徴収票などについて、本人等の個人番号を記載して交付しなければならないこととされていました。
記載不要となる税務関係書類などの詳細は国税庁HP「平成28年度税制改正によるマイナンバー(個人番号)記載対象書類の見直しについて(改正内容のお知らせ)」参照
photo:Thinkstock / Getty Images