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棚卸しとは何か?在庫管理の方法

事業者が頭を悩ませることの一つが、在庫管理です。顧客からの注文が殺到したので、どんどん注文や製造をしたところ、ぱたりと売れなくなって、たちまち在庫の山に……。在庫には、商品代だけでなくや保管料などの管理費がかかり、大きな経営的な負担になります。

そんな在庫を管理するのが「棚卸し」です。よく聞く用語ですが、なぜ棚卸しは必要で、どんな点をチェックするのかなど説明していきます。

お知らせ

2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!

POINT
  • 経営状態を把握するのに在庫管理は不可欠
  • 棚卸し表を作成して7年間保管する
  • 時期は年度末から多少前後してもOK

なぜ、棚卸しを行うのか?

「棚卸し」は、誰もが聞いたことがあるかと思いますが、具体的に何を行うのかというと、一言で言えば、「在庫管理」です。商品の在庫を数えて、売上に対応する商品原価を把握するのが、棚卸しです。

例えば、商品Aを「1個600円で仕入れて、800円で売る」としましょう。100個売れば、売上は「100個×800円=80,000円」、仕入は「100個×600円=60,000円」ですから、差額として20,000円の利益が出たことになります。

  売上 仕入
価格 800 600
個数 100 100
合計金額 80,000 60,000

しかし、実際はそう簡単に売り切ることはできません。
半分の50個しか売れなかった場合、余った在庫は「50個×600円=30,000円」となります。

この場合「売上総利益」は

「売上(40,000円)-(仕入(60,000円)-在庫(30,000円))=10,000円」となります。

  売上 仕入 在庫
価格 800 600 600
個数 50 100 50
合計金額 40,000 60,000 30,000

完売した場合は20,000円の利益が出ていましたから、利益が半分になってしまいます。しかも、30,000円の在庫分は費用にできません。
商品を買って仕入れた段階では、すべてが費用になるわけではなく、売れた分だけが費用として計上できるからです。早く商品を売って極力在庫を減らす(=少しでも売上を増やして、費用にする)必要があります。特価やワゴンセールが行われているのもその一貫です。

いろいろと書きましたが、つまり、在庫がどれくらいあるかによって、純利益が大きく変わってくるため、しっかりと在庫の計算をしなければなりませんよ、ということです。

もちろん、在庫があることは悪いことばかりではなく、販売機会を逃さないなどのメリットもあります。ただし、倉庫代などの費用もかかりますので、総合的に判断するためにも在庫の有無を把握することが大切になってきます。

「期首棚卸高」と「期末棚卸高」

在庫には2種類あります。

「期首棚卸高」=会計年度の開始日にあった商品・製品の総額のこと
「期末棚卸高」=期末(会計年度末)にあった商品・製品の総額のこと

この2つです。

「売上総利益」は売上高から売上原価を差し引くことで計算できますが、その売上原価を算出するために「期首棚卸高」と「期末棚卸高」を知っておく必要があります。

売上原価を算出するための式は下記のとおりです。

「売上原価=期首棚卸高+仕入高-期末棚卸高」

つまり、開始日にあった在庫に仕入を足して、年度末の在庫を引けば、その期に使った売上原価を出すことができるということです。

在庫をきちんと計算することで、経営状態を把握し、今後の計画に活かす――。それが、棚卸しで在庫管理をする目的になります。

どんな項目を確認しなければならないのか?

棚卸しの対象には、商品、製品だけではなく、原材料、副産物なども含まれます。さらに、まだ使用していない消耗品(事務用品など)や貯蔵品(印紙や切手)も棚卸しを行います。

棚卸しをするときには、「棚卸表」を作成します。
棚卸し表は7年間の保存が義務づけられている(*)大切な資料ですから、きちんとつけて、きちんと保管しておきましょう。

在庫の金額は「数量×単価」で算出するので、棚卸表には「棚卸し実施日」のほか、「商品名」「数量」「単価」を記載します。下記のような書式になります。

商品名 数量 単価 金額 在庫状態
商品A 50 600 30,000 通常品
商品B 100 30 3,000 不良品

上記の表では「在庫状態」という欄を設けましたが、「概要」や「備考」でもよいので、商品の状態を記す欄を作りましょう。
なぜかと言うと、通常の販売を行えない場合(商品に破損、型崩れ、たなざらし、品質変化があった時など)に、評価損を計上して損金の額に算入することができるからです。

また、季節商品が売れ残った場合や、型式、性能、品質が全く違う新製品が発売された場合など、今後通常の価額では販売することができない場合も、評価損の算入が可能です。在庫をただの数値としてではなく、今後、販売する価値の面でも見ていくようにしましょう。

返品された場合に在庫はどう計算する?

在庫が増えるのは仕入があったときだけではありません。販売した商品が様々な理由で返品されてくるときも在庫に入れることになります。そんなときに、どう計算を行えばいいのでしょうか。

ここまでで紹介した2つの式を組み合わせると、下記になります。

「売上総利益=売上高-売上原価(期首棚卸高+仕入高-期末棚卸高)」

返品されて在庫が増えるということは、期末棚卸高が増えることになります。すると、その分、売上原価が減ることになりますので、返品分を在庫に組み入れた場合は、売上の取り消しだけを行えばよいということになります。

最後に、棚卸しの時期についてご説明します。
個人事業者の場合は、原則として年度末(12月31日)になります。ただし、要は在庫の数が定まればいつ作業してもよいので、年度末の実施が難しい場合は、その年の最終の営業日以降ならば、年度末から多少前後してもかまいません。

どの時期に行うのがスムーズなのか微調節しながら、1年の区切りとして、棚卸しを正確に行うようにしましょう。

(*)法人の欠損金が生じた事業年度は、帳簿書類の保存期間が9年間です。また、平成27年度税制改正により、平成29年4月1日以後に開始する欠損金額の生ずる事業年度においては、帳簿書類の保存期間が10年間に延長されています。(編集部注)

photo:Thinkstock / Getty Images

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