請求書や領収書に電子印鑑は使える?法的な効力からみる押印の意味

発注書、請求書、領収書…事業を行なっていると様々な書類を扱うことになります。一昔前までは、各書類をプリントアウトして押印し封筒に詰めて郵送するのが当たり前でしたが、今ではこういった書類もメールでやりとりすることが増えてきました。印刷しなくて済むのは助かりますが、そこで気になってくるのが『押印』の仕方。これまでハンコを手で押していた代わりに使う電子印鑑に、本来の押印と同じ効力はあるのでしょうか?個人事業主ならずとも気になるハンコ事情を調べてみました。
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目次
- POINT
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- 本当に押印が必要な書類は少ない
- ハンコによる押印と電子印鑑に、法的な効力の違いはない
- 押印は、お互いの信頼を担保する形式上の仕組み
そもそも押印ってどんな意味があるの?
書類をパソコンで作成・管理するようになって劇的に減ったのは『紙』の使用量でしょう。何でもかんでもプリントアウトして保存していたら、プリンタのインク代もバカになりません。個人事業主ならこのあたりのコスト感覚を持つことも必要になってきますね。
しかし押印が必要となると、一旦書類をプリントアウトし、押印したあとスキャナーで読み取り、あらためてPDF形式で保存して原本はシュレッダーへ…。こんな手間をかけている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
あまり知られていませんが、実は本当に押印が必要な書類は少ないのです(賃貸借契約書など)。それでは押印することにどのような意味があるのでしょうか?
押印は信頼を担保する形式上の仕組み
「書類に印鑑が押されていないと、正式な書類として認められないのでは…?」と思いがちですが、そもそも押印に法的効力は、基本的にありません。例えば発注書や請求書を押印無しで取引先に送っても、受け取り側に支払い義務は発生します。ただ、会社のルールとして押印されていない書類は処理できないと定めているところもあると思います。
ここで「押印していなくても法的には問題ありません!」と貫き通すのも結構ですが、円滑な関係を築くのなら、素直に押印しておいた方が無難です。先方からすると「押印されていないこの書類は、本当にその会社(個人事業主)から発行されたものなのだろうか」と不安になることもあるでしょうから。
発注書にしろ請求書にしろ、証憑書類を作成する意味は書かれた内容の約束を明確にしておくということに他なりません。書面がなくても成立する契約は多いですが、「言った・言わない」のトラブルを回避するためにつくる意味合いが強いのですね。本来契約は双方の合意があれば問題ないとされていますから、押印に法的な効力はないことがわかるかと思います。
要するに押印は、「お互いの信頼を担保する形式上の仕組み」と捉えるとよいのではないでしょうか。あくまでイメージとして正式な書類に見えることも、関係性の上では大事になってきます。「慣習」のようなものと考えるとわかりやすいですね。
ハンコによる押印と電子印鑑の効力は違う?
押印に法的な効力がないことからもわかるように、電子印鑑にも法的な効力はありません。なので、もし取引先から「電子印鑑はちょっと…」と言われてしまった場合、それは法的にダメだから受け取れないのではなく、その会社のルール的にダメなだけだと考えて差し支えありません。
電子印鑑の便利なところは、一度もプリントアウトせずパソコン上で作業が完了するところです。さらにその書類をメールなどで送ってしまえば、バカにならない郵送料の節約にもなりますし、紙の面倒なファイリングからも解放されますね。
電子データで送る場合の注意点として、WordやExcelなどの形式だと相手がデータを編集できてしまうため、PDFなどの編集できない形式で送ることをオススメします。しかも、PDFを読み取るAdobe Acrobatにはデフォルトで『電子印鑑機能』が備わっていますので、作成から押印までがスムーズに行えます。
他にも電子印鑑を作成してくれるWebサービスはたくさんありますので、好みの書体やデザインにこだわって作ってみてはいかがでしょうか。
photo:Thinkstock / Getty Images