どうすればいい? 外注先への源泉徴収

個人事業を立ち上げて、うまく事業が軌道に乗れば、一人では手が足りなくなることも出てくるでしょう。嬉しい悲鳴とはいえ、一人で大量の業務を抱えるのは、健康面でも支障を来してしまいます。外注を活用したり、従業員を雇ったりすることも視野に入れる必要があります。そんなとき、知っておきたいのが源泉徴収のことです。個人事業主でも源泉徴収は行わなければならないのでしょうか、また、行うとすればどのようにすればよいのか。意外と見落としがちなところなので説明したいと思います。
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目次
- POINT
-
- 自分が源泉徴収義務者にあたるかを確認すること
- 100万を境に源泉徴収のパーセンテージが変わる
- 源泉徴収の納付は給与や報酬を支払った翌月10日までに
源泉徴収の義務があるのは?
個人事業主が報酬を支払った場合に、支払う段になって戸惑いがちなのが、
「源泉徴収ってしなきゃいけないんだっけ?」
ということ。
源泉徴収を行うケースとして、一般的によく知られているのが、会社が従業員に支払う「給与」です。しかし、源泉徴収をしなければならないのは、会社だけではありません。人を雇って給与を支払ったり、報酬を支払ったりした場合、会社・個人・学校・官公庁なども源泉徴収を行わなければならない「源泉徴収義務者」にあたることになります。
ただし、個人の場合は、下記の2つのうち、いずれかに当てはまれば、源泉徴収をする必要はありません。
(1)常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与や退職金を支払っている人
(2)給与や退職金の支払がなく、弁護士報酬などの報酬・料金だけを支払っている人
個人事業主の方は「2」にあてはまる人が多いと思います。つまり、給与を支払うような従業員は誰も雇っていないケースです。この場合は、例えば、確定申告などをするために税理士などに報酬を支払っても、源泉徴収をする必要はありません。
源泉徴収の対象となるものは?
もし、上記のいずれにもあてはまらない場合は、個人事業主でも源泉徴収をしなければなりません。どんな支払いが源泉徴収の対象になるのか、それは支払う相手が個人か法人かで変わってきます。
支払いを受けるのが個人の場合は、以下が源泉徴収の対象となります。
- 原稿料や講演料など
- 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
- 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
- ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
- プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
- 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
ちなみに、懸賞応募作品の入選者などへの支払いについては、一人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
一方、法人の場合はというと「馬主である法人に支払う競馬の賞金」が、源泉徴収の対象となります。法人に支払う場合は、源泉徴収が必要なケースはほぼないと思ってもらってよいでしょう。
源泉徴収はいくら払うのか?
源泉徴収の必要がある場合は、報酬の振込み時にいくら引けばいいのでしょうか。
自分の報酬で考えてみると、10.21%引かれていることが多いかと思います。つまり、支払金額をAとすると「A×10.21%」ということになります。ただし、これは100万円以下の場合です。
もし、100万円を超えた場合は「(A-100万円)×20.42%+102,100円(*)」という計算式になります。例えば200万円を支払う場合ならば「(200万円-100万円)×20.42%+102,100円」という計算になり、34万4100円を源泉徴収として引いた額を、先方に支払います。
(*)100万円×10.21%=102,100円(編集部注)
額としてかなり大きいですよね。源泉徴収を行う際は、その旨を事前にお伝えしておいたがほうが無難でしょう。
源泉徴収の支払い方
源泉徴収した額を先方に振り込んだあとは、税務署にその額を納めなければなりません。「報酬・料金等の所得税徴収高計算書(納付書)」を添えて、最寄りの金融機関若しくは所轄の税務署の窓口で納付しましょう。
用紙には「年度」「税務署名」「整理番号」「納期等の区分」「合計額」などを記入します(ただし、弁護士、税理士、司法書士などの報酬について、源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税を納付する場合は「給与所得・退職所得等の納付書」を使用すること)。
支払い期限は、源泉徴収の対象となる所得を支払った月の翌月10日まで。ただし、納付期限の日が日曜日、祝日などの休日や土曜日に当たる場合、休日明けの日が納付期限になります。
「ええ! 給与から所得税を源泉徴収したうえで、それを税務署に毎月納めるなんて、仕事が忙しくて、とてもじゃないけどできないよ。やっぱり人を雇うなんて無理かも……」
そんなふうに思う方もいらっしゃるかもしれませんが、従業員数が10人未満の個人事業主であれば、源泉所得税の納付が1月と7月の年2回で済むという特例があります。ただし、事前に「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」を提出しておくのを忘れないようにしましょう。
個人事業主で源泉徴収義務者にあたる方は、そんなに多くないかもしれません。
しかし、事業が大きく成功すれば、従業員の雇用や法人化も選択肢に入ってきます。そのときに慌てないためにも、源泉徴収の仕組みはしっかりと理解しておきましょう。
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