個人事業主・スモールビジネス事業者の味方「下請法」とは?

どうしても弱い立場に置かれてしまう個人事業主や、スモールビジネス事業者。「下請法」は、大規模な企業と小規模な企業又は個人の間の取引について、小規模事業者を守るための法律です。是非ともチェックしておくべき法律といえるでしょう。
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目次
- POINT
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- 個人事業主、スモールビジネス事業者を守るための法律
- 「納品日から60日以内」の代金支払などが要求される
- コンプライアンスの観点から下請法遵守を求めればカドが立ちにくい
「下請法」はどのような契約に適用されるのか
会社から独立して個人で事業を行う個人事業主や、スモールビジネス事業者にとって、自分より大きな会社から仕事を受注することには、良い側面と悪い側面があります。「大きな会社の仕事を行った」ということで箔が付きますが、一方で、相手が大きな会社であり、強い立場であるために、様々な条件で相手のいいなりにならざるを得ない…という問題もあるからです。
特に大きな問題が、お金の支払時期でしょう。
大きな会社に「支払は翌々月末払いで」などと言われた時、「それではキャッシュフローが悪化してしまうので、翌月末払いでお願いします」とは、なかなか言いにくいものです。
≪下請代金支払遅延等防止法≫
通称「下請法」は、弱い立場に置かれる下請業者を保護するための法律で、スモールビジネス事業主が行う契約のうち、規模についての条件と業務内容についての条件、両方が満たされるものに適用される法律です。
まず規模についての条件ですが、適用対象は「大きな会社」と「小さな会社や個人」の間の契約です。その組み合わせは、公正取引員会のサイト「下請法の概要」にある記載通りなのですが、分かりやすく言えば、個人事業主や資本金1千万円以下の会社の場合、相手が資本金1千万円以上の「大きな会社」であれば適用されます。取引先企業の資本金が1千万円以上かどうか、ウェブサイト等でチェックしてみましょう。
次に業務内容についての条件ですが、大まかに言えば、「大きな会社」から細かな指定を受け、「大きな会社」のビジネスのために仕事を受ける場合に適用されます。「大きな会社」が販売する製品のパーツを作る、「大きな会社」が販売するポスターのデザインを行う…といった場面が典型です。
下請法が適用される場合の効果
下請法が適用される契約においては、「大きな会社」による、立場の強さを利用した様々な行為が禁止されます。
一番重要なのが、お金の支払時期に関する規律。納品日から60日以内のできるだけ短期間内でなければならないと定められています。ポイントは、「納品日から」ということ。例えばポスターのデザインの場合、デザイン納品からポスター販売まで期間が空くこともあり得るわけですが、起算点は納品日である、ということです。
また、一度合意した後に代金を減額することも禁止されます。ポイントは、下請側に問題がある場合(責に帰すべき理由がある場合)を除き、理由を問わない、ということ。例えばパーツの製造業者に対して「原材料価格が下落したから」という理由で代金を減額することなど、あらゆる名目、方法での減額が禁止されています。
その他にも、下請業者からの納品(給付)の受領を拒むことの禁止、下請業者に対して指定する商品やサービスを利用するよう正当な理由なく強制することの禁止など、様々な規律が行われています。
「大きな会社」と条件面で交渉を行うコツ
しかしそうは言っても、弱い立場に置かれているスモールビジネス事業主の立場として、「大きな会社」に対して「その要求は法律違反です」ということはなかなか難しい…という問題はあります。
ただ、以下のような「言い方」もあります。
「その条件、私以外の人についても同じですか?私は構いませんが、他の人が法律違反だと言い出すとまずいですよ。」
「大きな会社」は、当然ながら、コンプライアンスを重視しているはずです。そして下請法は、違反時には公正取引員会の勧告や立ち入り検査、50万円以下の罰金などが規定された法律です。
下請法違反の契約は、現場レベルでコンプライアンスなどを特に意識せず、慣習として行われていることも多いものです。自分以外の下請業者を引き合いに出し、「大きな会社」を心配するという姿勢で、カドを立てずに是正させられるケースも少なくないのです。
弱い立場の個人事業主やスモールビジネス事業主を守る「下請法」、概要を理解し、なるべく良い条件で仕事ができるように活用してみてください。
photo:Thinkstock / Getty Images