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銀座セカンドライフ片桐社長「成功=お金とは限らない。仕事のやりがいこそが成功なんです」

年々拡大を続ける起業支援市場。そんな中にあって、シニアの起業サポートに特化した企業が銀座セカンドライフ株式会社である。

「第2の人生を充実させたい」「元気なうちはまだまだ働きたい」。そんな50代や60代の思いを形にするため、コンサルティングや事務サポート、起業家同士の交流会やセミナーを実施。また2010年からはレンタルオフィスの運営にも取り組んでいる。代表を務めるのは片桐実央社長。柔らかな物腰とは裏腹に、自身も大企業の正社員という立場を捨て、わずか27歳で起業した若きアントレプレナーだ。そんな片桐社長に、シニア起業の現状はどうなっているのか聞いてみた。

自分の身の丈にあった「ゆる起業Ⓡ」を

ところで、シニアを取り巻く起業の状況はどうなっているのだろうか。

内閣府が平成20年に行った「シニア層の就業意欲に関する調査」によれば、65歳以降になっても働きたいと考えている人の割合は約8割。また「中小企業白書」によれば、1979年には全体の2割に満たなかった50歳以上の起業家の割合は、2007年には4割を超えたことが統計で明らかになっている。
起業家というと、とかく働き盛りの若い層が注目されがちだが、その陰でシニアの起業者が確実に増加しているのだ。では、そうしたシニア層と、若い起業家の違いはどこにあるのか。

「まず50代の方は、早期退職制度を使って独立する方が増えています。共通していえるのはやりがいを重視し、身の丈にあったビジネスを志すことではないでしょうか。」

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若年層との最大の違いはこの点にある。
「将来的には株式公開を目指す」「従業員を雇って事業規模を拡張する」といったガツガツした野望ではなく、サラリーマン時代に培ったスキルを生かし、より自分の好きなこと、やりがいを感じられることを仕事にする。大きなリスクをとるよりも実績を大切に、一人社長でも法人化にするなど信頼をベースにした重きを置いているのだ。片桐社長が提唱する「ゆる起業」も、まさにこうした考えに基づいている。

当然ながら、元手はそれほど多くないほうが理想的だ。相談者の多くは資本金200万円以下で、ほとんどが前職に関連した職種を選び、身ひとつで仕事ができるコンサルタントや経営顧問、アドバイザーといった仕事から始める人が多いという。目安となる目標は、「サラリーマン時代の年収と同額の年商を2~3年で実現すること」なのだとか。

「成功=お金とは必ずしも言えないのがシニア起業の特徴です。むしろ、やり甲斐を感じることこそが、いちばんの成功なんです」これまで身を粉にして働いてきた企業戦士たちにとって、「ゆる起業」は目指すべき第二の人生のオアシスなのかもしれない。

経験豊富さが、かえって落とし穴になる恐れも

現在、片桐社長の元には毎月150人以上もの起業希望者が相談に訪れており、多くのシニア世代たちが紆余曲折を経て、それぞれの思いを形に変えている。

たとえば2013年、株式会社JP企画販売サービスを立ち上げた清水次朗社長(66歳)。プラン段階では大好きだった靴の製造販売を考えていたものの、片桐社長は考え直すよう進言した。
「未経験の分野で起業するのはリスクが高いので、これまでの実務経験を活かした仕事から始め、徐々に靴の事業の準備をしてはいかがですか」、と。

以前、食品会社に勤務していた清水社長はそれまでのキャリアを活かし、ひとり暮らしのお年寄りに向けた食品や日用品の宅配サービスを開始。本来の夢の実現へ向けて一歩を踏み出している。

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「現役時代のツテや自分の肩書きをあてにし過ぎたり、経験豊富なあまり他人に相談しないまま独断でプランを進めてしまうなど、シニアならではの落とし穴もあります。構想時点で軌道修正をした方がいいケースも少なくありません」

シニア起業には、己を過信しない謙虚さも必要ということだろうか。最後にメッセージをお願いしますとお願いすると、片桐社長はおもむろにホワイトボードに3つの円を描き始めた。

「相談者の中には、起業したいけど、何をやればいいのかいまいち分からないという相談者もいらっしゃいます。そういう方には起業のアイデアを発見する手法をご紹介しています。最初にまず、自分が1)好きなこと、2)得意なこと、3)市場価値、という起業に必要な3大要素が重なるところで起業した方が、成功し易いです。在職中からこれを意識しておくことは、起業する際きっと役に立つと思います」

片桐社長は決して「こうしたほうがいいですよ」とは言わないが、その人が自らよい選択をチョイスできるよう傾聴し、相手を尊重しながらアドバイスする。
右肩上がりの経済成長など、もはや期待がもてなくなった時代に、片桐社長の言葉は今後の日本社会を生き抜くヒントとなるのかもしれない。

片桐実央 かたぎりみお

片桐実央

1980年、千葉県生まれ。銀座セカンドライフ株式会社代表取締役。学習院大学法学部卒業後、花王株式会社、大和証券SMBC株式会社を経て2008年銀座セカンドライフ株式会社を設立。定年前後での起業支援会社として起業コンサルタント『起業相談サロン』や、事務サポートを手がける傍らセミナーや交流会を実施、レンタルオフィスを運営。著書に『「シニア起業」で成功する人・しない人』『実践!ゆる起業』がある。

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