「確定申告の疑問」を税理士にズバリ聞いた!第4回経費編
監修者 : 宮原 裕一(税理士)

個人事業主にとって尽きないものといえば「経費の悩み」ですね。こんにちは。フリーライターの岸田です。確定申告で経費を計上できる、できないの基準は何なのか、どう判断すればいいのか。今回も税理士の宮原先生にぶっちゃけ話を聞いてみました。
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目次
第1回「領収書編」、第2回「青色申告編」、第3回「白色申告編」は、こちら。
一緒に働いている妻との食事代は経費になる?
岸田 さてさて。今回は経費の問題です。まずいちばん気になるのが、何が経費になって、何が経費にならないのかという。
宮原 それはもう漠然としか答えられないですけども、事業に関連して必要であるものという風にしか。
岸田 いくつか質問を受け取っているので、具体例を挙げていきますね。まずは「妻と食事をしながら仕事の話をしました。このときの食事代は?」というケースですが。
宮原 基本は経費にならないですよね
岸田 これは奥さんが青色事業専従者で同じ職場で働いているケースでしょうかね。
宮原 そもそも「生計一親族」に対する経費は認められないのが原則で、青色事業専従者(*)は特別に給与を認めているということですからねぇ。
(*)「しらぬが損!奥さんに給料払って節税できる?専従者控除を活用しよう!」の記事もご参考に(編集部注)。
岸田 そうですよね。これを認めたら、家で奥さんと食事をしていたらぜんぶ落ちるの?って話になっちゃいますよね。でもこの場合、仮に奥さんが自分の取引先で働いている人というケースだったら、OKですか?
宮原 そのときは奥さんとじゃなくて●●会社(取引先名)さんと、という付け方になりますよね。
岸田 ホントに仕事の打ち合わせだったら許されるだろう、って話ですかね。
宮原 ただ、実際の裁決で「弁護士の主人が税理士の奥さんに報酬を払っていたのが全否認された」というのはあるんですよ。別々に事務所も持っているんだけども、それはもう「生計を一にしている」状態なので経費じゃないですという理由で。
カフェで仕事をしたときのコーヒ―代は経費?
岸田 続いてのケースは「1人でスタバで仕事をしながらコーヒーを飲みました。このときのコーヒー代は経費になる?」のかという。
宮原 私は経費にしてもいいと思います。ただ、税理士さんによっては「まったくダメ」という人もいるかもしれませんね。
岸田 これってボクも他人事じゃないんですよ。ノートパソコンは持っていて、ちょっと外出先で作業しなきゃ、みたいなケースはあるんですけど。
宮原 その場所を借りるためにコーヒーを一杯飲まなきゃいけない、と考えるとアリじゃないですかね。
岸田 漫画喫茶で仕事をしている、なんて話も聞いたことがありますよ。
宮原 「経済的合理性」という言葉があります。たとえば、時間いくらで場所を使えるコワーキングスペースとの比較。あそこで仕事をするよりはスタバの一杯、漫画喫茶のパック料金のほうが安いから、安いほうを選んでいます、ということもありますよね。
岸田 コワーキングスペースの代金だったら、文句なく経費で落としてもいいわけですよね。でもスタバの使い方も似たようなもので、どっちもノートパソコンを持ち込んで仕事をしているわけで、使っているほうとしては同じ感覚なんですけどね。
宮原 要は「業務上、必要であれば」ということですね。まず大前提として仕事に必要かどうかという。そっちが先ですから。
岸田 ちょっと極端な例えで「居酒屋でビールを一杯頼んで、ノートパソコンで仕事をしました」というのはどうですか。
宮原 支出自体が「普通に食事ですね」というところまでいくと、私もダメだと思います。ただビールの一杯くらいならOKじゃないかな、とは思いますね。
岸田 これも税理士さんによって判断が違うところですかねー。
全国を旅しながら仕事をしているけど、旅費は経費になる?
岸田 次の質問ですが、「インターネット環境があれば仕事ができるので、全国各地を旅しながら働いています。このときの旅費や宿泊費は経費になりますか?」という。
宮原 わざわざ全国各地を回っているというのが、どう仕事と関係するのか、ですよね。そこをどう主張できるのかがポイントですね。
岸田 職業は翻訳家の人です。確かにノートパソコンとスマホがあればどこでも仕事ができそうな気はしますね。
宮原 うーん。ルポライターで各地を取材しています、というのなら理解できますけど、翻訳家だと仕事のために旅をする必然性が薄いですよね……。
岸田 全国を回っている事自体が、仕事の取材であれば当然いいわけですよね。
宮原 そう。たとえば知り合いの漫画家さんでグルメものの連載をしていた人がいるんですが、B級グルメの会場に行ったり、地方のお店に突撃取材したりして。でも、それは実際に漫画で描いているし、この場合は自信を持って経費といえますよね。
マッサージ代やスーツ代も経費になる?
岸田 続いては「カメラマンです。重い機材を持ったり、撮影で無理な姿勢を続けていたりして、肩こりと腰痛に苦しんでいます。こり解消のためクイックマッサージに通っていますが、これは経費になりますか?」という質問です。
宮原 う~ん、肩こりや腰痛はどんな職業でもありますからねぇ。
岸田 カメラマンもそうですが、漫画家さんとか、同じ姿勢で長時間働いている人って、肩こりはひどいですよね。
宮原 どこまでを経費に入れるかというのは、同じ答えはないので。税務署でも人によって言うことが違うと思いますし。やはり、自分が必要だという主観的なものと、他人が聞いてそうだよねと思える客観的なものがセットにならないとね。
岸田 ひとまず経費に入れて申告するまでは自由なんですよね。チャレンジする権利はあるけど、それに対して文句が付く可能性もあるわけですよね。
宮原 そのときにどこまで経費としての正当性を主張できるか、という話ですね。それと、チャレンジじゃなくって、「当然経費だ」という思いが必要ですよ。
岸田 あとは「人に会うことが多い仕事ですが、スーツ代は経費になりませんか?」という質問も来ています。
宮原 基本、スーツはダメというのが一般的な解釈にはなっていますね。作業着や社名入りのユニフォームみたいなものならOK、という。
岸田 でもスーツって、ほとんど仕事のときにしか着ませんよね。
宮原 サラリーマンの話ですけど、「特定支出控除」という制度が改正で拡大されて、被服代ということでスーツも必要経費として認められるようになりましたね。もちろん会社が必要経費として認めて証明書を出すことが前提ですけど。こうなると「さて個人事業主はどうなんだ」という議論はありますよ。
岸田 セミナーや講演の仕事が多い人なんかだと、人前に出るときにそれなりのスーツを着ていないと格好がつかない、ということもあるかと思いますが。
宮原 タレントさんの舞台衣装であれば問題なく経費になりますね。これも「どこまで」という明確な答えはないので。仕事に必要だという理由を用意できるのであれば、計上してみてもいいとは思いますよ。
まとめ
今回は経費のあれこれについて聞いてみました。「業務に必要か」というところが最大のポイントで、あとはケースバイケースで明確な線引きは難しいのかもしれません。ひとまず自分の判断で経費に計上はできるけども、それに対してケチがついたときにどう説明するか、ということでしょうか。
次回の第5回は、「家事按分の悩み」について掘り下げる予定です。
第5回家事按分編は、こちら。
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