平均課税制度で節税!突然収入が増えたら変動所得の特例を使おう

サラリーマンと比べて安定や保障の面で心もとなくなる一方、フリーランスは結果を出した分だけ、自分の収入に跳ね返ってきます。そこに魅力を感じて独立した方も少なくないのではないでしょうか。ただ忘れてはならないのが、儲かったらそれだけ税金も多く支払わなければならないということ。とりわけ作家、漫画家、作曲家、作詞家、漁師といった人たちは、その年その年によって所得が大きく変わりがち。そこで助けになるのが「変動所得の特例」です。突然、大きな利益を手にしたときに備えて、知っておくとよいでしょう。
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目次
- POINT
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- 変動所得の対象は印税や原稿料、作曲料など
- 適用されるのは「急に大きな所得があった場合」
- 平均課税をすることで節税が可能
メガヒットだと税金も巨額に!
私自身いろんなペンネームを使いながら執筆活動を行っており、この8年間で25冊の著作が出版されました。新刊が出るときは「もしかしてメガヒットするかも!」と密かに期待してしまいます。そして、増刷すらもせずに意気消沈ということにも随分と慣れてきました。とほほ……。
執筆に対する印税のパーセンテージは出版社によってさまざまですが、大手ならば10%のところが多いです。よく「10万部突破!」といった本の広告コピーを見かけると思いますが、仮に1200円の本が10万部売れた場合は……。
1200(円)×10万(部)×10(%)=1200万(円)
という計算式で、著者は1200万円の印税を手にすることになります。100万部ならば1億2000万円! 夢が広がりますが、気になるのは税金のこと。所得税は課税される所得金額が1800万円を超えると40%かかります。一律10%かかる住民税と合わせて、税金は50%にもなります。1億2000万円を印税として手にした場合、仮に経費を2000万円計上したとしても、所得の1億円のうち半分の5000万円を税金として支払わなければならないということです。
それでも毎年同じ程度の所得があればよいですが、不安定な職種なだけに、来年は一転して全く本が売れないということも十分あり得ます。そんな収入の変動が激しい職種に、従来通りの所得税の税率を適用すると、毎年一定の所得を得ている人に比べて税負担が重くなるケースが出てきてしまいます。そこで、特別高額になった収入部分は変動所得として扱い、税金を安くしてくれる特例があるのです。
変動所得の対象になるのは?
事業所得や雑所得のうち、変動所得の対象となるのは「印税や原稿料、作曲料などによる所得」あるいは「漁獲や養殖による所得」です。しかし、これにあてはまれば、どんな場合でも特例が使えるわけではありません。あくまでも、所得が急に増えた場合で、適応条件があります。
まずは「前々年」あるいは「前年」に変動所得がない場合、もしくは、あったとしても、その合計額の2分の1が本年の変動所得に満たないということ。次に、本年の変動所得が、本年の総所得の20%以上であるということです。これを満たしていれば「本年に急に大きな所得があった」として、変動所得とみなされるのです。
平均課税で計算される
変動所得が一定の条件にあてはまる場合は、税負担を軽減する「平均課税制度」を選択できます。平均課税では、変動所得の部分を5年間で受け取った金額と見なして税金が計算されます。具体的には、変動所得の金額を5で割って、その5分の1の金額に通常の税率をかけて、さらにその金額を5倍して納税額を計算することになります。低い税率で計算される分、税金が抑えられるというわけです。
手続きは「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」を記入して税務署に提出するだけ。記入用紙は、国税庁のホームページからダウンロードできるので、該当する人はチェックしておくとよいでしょう。
税金はどうしても「とられる」というイメージが強いですが、なるべく公平になるようにと、今回紹介したような納税者にとってメリットになる制度もあります。大前提として、日頃から会計ソフトなどを使ってお金の出し入れを管理することが大切です。疑問があれば、税務署や、青色申告会に相談に乗ってもらうのも一つの手からもしれませんね。
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