元・税務調査員が語る、節税対策と税理士の選び方【インタビュー】

株式会社InspireConsulting社長として、経営全般に関するコンサルティング事業を手掛ける久保憂希也氏は、元東京国税局勤務。かつては税務調査員として、医療関連や弁護士事務所、飲食店、芸能人、風俗業などの税務調査を担当したキャリアを持ち、現在は「税務調査に強い税理士」を育てるためのセミナーを精力的に行っている。そんな久保氏に、個人事業主や小規模事業者にとっては頭の痛い問題である「確定申告、節税、税理士の選び方」についてアドバイスを伺った。
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確定申告時の節税対策
ーーー個人事業主にとって、毎年の確定申告時に迷うのが「白色申告か、青色申告か」という点です。実際、どちらが節税に有利なんでしょうか。
私のところによく個人事業主の方がいらして「久保さん、どうすれば節税になりますか」という相談を受けるんですが、ご本人が白色申告だったりすると、もうその時点でお手上げというか、アドバイスのしようがないんです。
どうも「青色はハードルが高い」という、思い込んでいる個人事業主の方が多いように思えますね。ただ、個人事業主の場合は青色申告特別控除っていうのがあって、ちゃんと帳簿をつければ最低10万円、最高額で65万円の控除が認められています。よく考えてみれば、10万円の経費を無条件で認めてくれるって、結構凄いことだと思いませんか。
それに、2014年度の確定申告から白色申告でも記帳は必須になったので「白色がラクで、青色は大変」というわけでもなくなります。ハッキリ言って、個人事業主で青色にすることで不利益ありますかと言われたら100%ないですよ。
ーーー「青色にしない手はない」ということですね。となると、やはり税理士さんが必要になってくるのかなとも思ってくるんですが。
個人事業主になっていちばん最初の確定申告は、税理士に頼む必要ないと思うんです。
自分が同じ立場なら、会計ソフトをパソコンに入れて入力していきますね。
コストもかからないですし。分岐点は売上げが1千万円を超えて、人を雇わなければならなくなったとき。こうなると課税事業者扱いになるため、消費税の計算が入ってくるんですが、特例もあったりして、なかなか独力じゃできない。そこで初めて税理士が必要になってくるわけです。
ーーー場合によっては、そのタイミングで法人化しちゃうというケースも多そうですね。ただ会社にした途端、税務署に目を付けられてある日突然、税務調査に入られてしまうのでは…。
「どこまでが経費か」は税理士によって考え方がまるで違う
ーーー1年間に税務調査を受ける法人は全体の4%と言われていますが、万一、自分のところへ税務調査が来たら、どう対応すればいいんでしょうか。
正直に言ってしまうと、税務調査が入ったときの勝負の分かれ目は、税理士がいるかいないか。これでハッキリ決まります。税理士がいない場合は致命的。どうしても、税務調査官側に言いくるめられてしまうんです。まぁ、そりゃそうですよね、こっちは税金に関しては素人なのに、あっちは税金でメシ食ってるプロなんですから。逆に、税理士を雇っているのであれば、すぐに電話して来てもらえばいい。税理士がいれば、ある程度はマトモな対応ができますから。
ーーー確かに、税理士さんがいれば守ってもらえそうな気がします。イメージ的には限りなく私的な出費まで、どうにかして経費にしてくれそうな…。
いやいや、一概にもそうとは言えません。どこまで経費にするかというのは、税理士によって考え方がかなり違うんです。私は「板東英二のカツラ問題」と呼んでいるんですけど、考えれば考えるほど深い。「テレビ出演時は見栄えをよくするため、どうしてもカツラが必要だった」という理屈で経費と考える税理士もいれば、全否定する税理士もいます。ただ、税務署は「100%仕事のためですと言い切れないものは、経費にならない」という立場は一貫しているため、グレーゾーンの経費に対しては徹底的に突っ込んできます。追徴金を払わずに済むかどうかは、結局、税理士にかかっていると言えるでしょうね。
ーーー裁判官と違って、税務調査員は「疑わしきは罰する」と。それにしても、ツテやコネのない事業者にとって、税理士を探し出すのはかなり難しいように思えます。どうすれば、良い税理士とそうでない税理士を見極められるのでしょうか。
良い悪いというより、自分に合っているかどうかの方が大事だと思いますね。さきほどお話したような経費の捉え方について、税理士と自分の考え方があまりにギャップがあるようだと、衝突ばかりで余計な労力を使わざるをなくなります。強いて言うなら、「この支出は税務署から突っ込まれる可能性もあるけど、何とかしてみます」というスタンスくらいの税理士であればいいんじゃないでしょうか。何でもかんでも「経費にしていいですよ」とか、あるいは「全部ダメ」っていう極端な税理士は味方になってくれそうにないですし・・・。