経費とは?計上できるものや判断基準をわかりやすく解説

2023/09/11更新

この記事の監修者田中卓也(田中卓也税理士事務所)

個人や企業は事業を行って利益を上げると、所得税や法人税を納めなくてはいけません。これらの税金は「収入から経費を差し引いたもの」に対してかかるので、経費をきちんとした基準で、しっかり計上することは、経営状態の把握と納める税金の額を抑えることにつながります。

ここでは、経費の概要の他、経費として計上できるものとできないものの違い、経費を計上する際のポイントについて解説します。

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経費とは事業を営むために使ったお金のこと

経費とは、事業者や法人が事業を営むために支出したお金のことです。所得税法上は「必要経費」と呼ばれます。所得税の計算(事業所得、不動産所得、雑所得)において、必要経費に当たるのは次の2つです。

必要経費にできるもの

  • 総収入金額に対応する売上原価や、その総収入金額を得るために直接要した費用:飲食店の材料費、職人に支払う給与など
  • その年に生じた販売費、一般管理費、そのほか業務上の費用の額:店舗従業員の給与や広告代、店舗や事務所の家賃、水道光熱費、青色申告の場合には青色事業専従者給与など

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経費を計上するメリット・デメリット

事業のために支出した費用を事業の経費に計上することは、メリットもあればデメリットもあります。その違いをしっかりと押さえたうえで、どれだけ経費として扱うか判断しましょう。

メリット:利益が小さくなる分、納める税金が少なくなる

税金は収益から経費分を差し引いた利益に対してかかります。経費を計上することで利益が小さくなる分、納める税金の額も少なくなります。

デメリット:会計上の利益が減る

経費を多く計上すると、会計上の利益が少なくなります。赤字になる場合もあり、金融機関からの借り入れを予定している場合は印象が悪くなることにもつながります。

経費として計上できる費用

費用を必要経費として計上するには、領収書やレシートなど、何にいくら使ったのかを証明できる根拠資料が必要です。冠婚葬祭費など、領収書やレシートがないものは出金伝票で記録し、案内状等を保管しておくことも重要です。

経費を計上する際は、経費の性質にあった勘定科目を用います。よく使われるのは次のような科目です。

よく使われる勘定科目の一覧

人件費

勘定科目 説明
役員報酬 法人の役員に対して定期的に支払う給与(法人のみ)
役員賞与 法人の役員に対して支払う賞与(法人のみ)
給料手当 従業員に支払う給与
賞与 従業員に支払う賞与(ボーナス)
雑給 パートやアルバイトに支払う給与
退職金 従業員や役員の退職により支払った退職金や慰労金
法定福利費 法律で義務付けられている会社負担の社会保険料の支払い分(健康保険料、厚生年金、児童手当拠出金など)
専従者給与 青色事業専従者に支払った給与(個人の青色申告事業者のみ)
福利厚生費 従業員の医療や保険、厚生施設、冠婚葬祭に支出した費用(健康診断の医療費、見舞金、社宅などの厚生費など)

販管費・一般管理費

勘定科目 説明
採用教育費 従業員の採用、教育、資格取得のための費用
外注費 会社の業務を外注した際に支払った委託費やデザイン設計料など
荷造運賃 製品を客先に届けるうえで発生した梱包費、配送費、宅配便代など
販売手数料 商品やサービスの販売にかかる手数料など
販売促進費 販売促進のための宣伝費、交際費など
広告宣伝費 看板やチラシ、カタログ、会社案内の作成費や広告代など
水道光熱費 電気、ガス、水道などの料金
支払手数料 事務委託手数料、業務委託手数料、紹介料など
賃借料 家賃や駐車場料金、会場使用料など
リース料 リース契約にもとづいて支払う使用料
消耗品費 短期間で消費し、固定資産にならない物品(トイレットペーパーや電球、事務机、パソコンなど)の購入費
事務用品費 日常使われる事務用品(ノートやボールペン、封筒など)の購入費
交際費 取引先関係者の接待費や贈答品、謝礼、お車代、慶弔金など
会議費 社内外での商談や打ち合わせにかかる費用(会議中の弁当代や会議室使用料、茶菓子代など)
諸会費 同業者団体や地域団体に支払う会費(商工会議所会費や弁護士会費など)
新聞図書費 書籍や新聞、雑誌の購入や購読にかかる費用
通信費 インターネット利用料や携帯電話代、切手・はがき代など
車両費 車検代やタイヤ代、ガソリン代など、車にかかる費用
旅費交通費 交通機関の乗車運賃やタクシー代、出張先での宿料など、移動にかかる費用
支払報酬料 税理士や弁護士、デザイナー、小説家など、社外の専門家に業務を委託した場合の報酬
修繕費 建物やインフラ、プログラムなどの修理にかかった費用
租税公課 国または地方公共団体に支払った税金(固定資産税、事業税、不動産取得税など)
保険料 火災保険や自動車保険など、加入する保険の保険料
減価償却費 固定資産の取得にかかった費用を耐用年数に応じて配分するための勘定科目
繰延資産償却 支出の効果が将来に及ぶ費用(繰延資産)を、その効果の及ぶ期間に配分して処理するための勘定科目
貸倒損失 債権の回収が困難になったことで生じる損失を処理するための勘定科目
貸倒引当金繰入額 決算末期の売上債権のうち一定割合を、来期の貸倒見込額として計上するための勘定科目
雑費 他のどの項目にも当てはまらない経費を処理するための勘定科目

経費として計上できない費用

事業主や会社がした支出でも「事業を営むために必要な支出」といえないものは、経費として計上できません。例えば、次のようなものです。

所得税や住民税

所得税や住民税は、事業と関係なく個人に対して課せられるものなので経費になりません。

未使用の事務用品や消耗品、あるいは期末の売残商品など

事務用品や消耗品は、原則として購入時ではなく使用時に経費として計上します。

罰金や科料および過料

交通違反の反則金や科料、過料といった罰金や延滞金、過少申告加算税などは罰則的要素が強いため経費になりません。

法人税や法人住民税

所得税、住民税と同じく、法人税、法人住民税も経費になりません。事業税や事業所税は「租税公課」の勘定科目で経費として計上できます。

経費を計上するうえでの注意点

節税のためにも、経費はしっかりと管理し、計上する必要があります。経費を計上するうえで、知っておきたいポイントを紹介します。

勘定科目は必ず毎年同じものを使う

同じ費用については、毎年同じ勘定科目で処理します。例えば、郵便などに使用した切手代やはがき代について、前期で「通信費」としたものを、今期で「郵送費」としては増減等の比較対象ができません。

固定資産税は事業用の部分に限って経費として計上できる(個人事業主の場合)

固定資産税は「租税公課」の勘定科目で経費として計上できます。個人事業主が自宅の一部を店舗や事務所として使っているような場合は、事業利用した分のみ計上できます。使用している床面積や仕事に費やしている時間を基準に、事業利用分が何割かを計算し、その分を経費として計上しましょう。

このように、事業用とプライベート部分(家事部分)の割合を決め、事業で使っている比率分を経費として計上することを「家事按分」といいます。

家賃・水道光熱費などは家事按分しなければならない場合がある(個人事業主の場合)

個人事業主が自宅の一部を店舗や事務所として使っているようなケースでは、家賃や水道光熱費なども、固定資産税と同じく家事按分が必要です。事業利用分のみを経費として計上します。

生計を一にする配偶者や親族に支払う給与賃金は経費にならない(個人事業主の場合)

個人事業主が家族に支払った給与は、原則として経費に計上できません。これを経費にするには、青色申告事業者になり、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しておく必要があります。

なお、白色申告の場合は「専従者控除」が利用でき、一定額を所得から差し引くことができます。

経費を間違って計上した場合にはペナルティが

計上すべきでない経費を計上してしまっていたなど、確定申告の内容が間違っていた場合の手続きは、大きくは2つに分かれます。

まず、税金を払いすぎたなら、「更正の請求」という手続きをすることで、税務署のチェックを受けた上で、「減額更正」といって、払いすぎた分の還付が受けられます。

反対に、過少申告で納める税金が少なすぎたなら、自分で修正申告を行った場合と税務署からの指摘によって修正した場合で、その後の流れが変わります。

自分で修正申告した場合は、差額分の所得税と納付期限に遅れた分の延滞税分を支払います。

税務署からの指摘を受けて修正した場合は「過少申告加算税」、期限内に確定申告を行わなかった場合は「無申告加算税」、源泉徴収した所得税を納付期限内に支払わなかった場合は「不納付加算税」、これら3つの税金が課される際に故意に事実を隠蔽したり、申告を怠ったりしていた場合にこれらの税金の代わりに課される「重加算税」があります。

それぞれの詳しい解説は下記のとおりです。

過少申告加算税

過少申告加算税とは、税務署の調査を受けた後で修正申告をしたり、税務署から申告税額の更生を受けたりした場合に、追加でかかる税金です。金額は、新たに納めることになった税金の10%相当。ただし、新たに納める税金が当初の申告納税額か50万円のいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%になります。

ただし、2017年1月1日以後に法定申告期が到来するもの(2016年分以後)については、調査の事前通知の後にした場合は、50万円までは5%、50万円を超える部分は10%の割合を乗じた金額の過少申告加算税がかかりますので、注意してください。

無申告加算税

無申告加算税とは、期限内に確定申告をしなかった場合に課せられる税金で、原則は納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円超の部分は20%を掛けた額になります。税務調査の前に自主申告した場合は、税率が5%を掛けた額に軽減されます。

ただし、期限後申告であっても、下記の要件を両方満たす場合は、無申告加算税はかかりません。

無申告加算税免除の要件

  • 期限後申告が、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること
  • 期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること

なお、「一定の場合」とは、期限後申告に関わる納付すべき税額の全額を法定納付期限(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日)までに納付しており、なおかつその期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、同じ制度を利用しての無申告加算税の不適用を受けてもいない場合を指します。

なおこの場合も、過小申告加算税の取扱いと同様に2017年1月1日以後に法定申告期が到来するもの(2016年分以後)については、調査の事前通知の後にした場合は、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%の割合を乗じた金額の無申告加算税がかかりますので、注意してください。

不納付加算税

不納付加算税とは、源泉徴収した所得税を納付期限内に支払わなかったときに課される税金です。原則は納付額の10%ですが、税務署から指摘される前に納付した場合は5%に減額されます。

なお、直近一年以内に源泉所得税の納付漏れがなく、法定納期限から一か月を経過する日までに納付したときや、不納付加算税の金額が5千円未満となるときになどには不納付加算税はかかりません。したがって、「納付を忘れた」という場合、早めに対応することが重要です。

重加算税

重加算税とは、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税が課される際に、故意に事実を隠蔽したり、申告を怠ったりしていた場合に、これらの税金の代わりに課される税金です。本来納めるはずだった税によって課される税率が異なり、それぞれの税率は下記のとおりです。

重加算税の税率

  • 過少申告加算税が対象の場合:追加本税の35%
  • 無申告加算税が対象の場合:納付すべき税金の40%
  • 不納付加算税が対象の場合:納付すべき税金の35%

経費を正しく計上して上手に節税しよう

経費を正しく計上することは、利益を抑え、納める税金額を最小限にとどめることにつながります。経費管理は難しく感じますが、会計ソフトを使えば大幅に手間を減らすことが可能です。

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photo:PIXTA

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この記事の監修者田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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