ミューズ・ブランディング・アカデミー谷澤代表 「内面にある美しさを引きだすのが私の仕事」

その人にふさわしいファッションやメイクアップ、身のこなし、表情など、個人の魅力を外面に引き出すプロフェッショナルがいる。ミューズ・ブランディング・アカデミーの代表取締役社長、谷澤史子氏だ。女子美術短期大学のデザイン科を卒業後、大手アパレル商社に就職。しかし、転職を経験。受付、営業職、会社役員等、さまざまな職歴を経て、05年からイメージコンサルタントとしての道を歩み始めた。現在は、独自のメソッドを用いて、OLからビジネスマン、起業家、政治家までの幅広い層にコンサルティングを行う。精力的に後進の育成にも力を注いでいる谷澤氏に、起業家としてキャリアアップや、イメージづくりの技術について伺った。
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お金がないときでもやれることは必ずある
谷澤さんの場合、「起業」しようと最初から考えていたわけではなかった。前職では営業成績を買われて役員にまで上り詰め、新規事業のカルチャーサロンの代表に抜擢された。しかし、業績は上がらず1年で撤退が決定したのだ。谷澤さんは、「1年で何がわかるんだ!」と社長を説得しようとしたが、「そんなにやりたいなら、会社から離れて一人でやりなさい」と独立を促された。実際にカルチャーサロンを引き継ぎ、経営してみると、想像以上に経営は厳しく3~4ヶ月でつまずいたのだ。
「今まで順風満帆だったのは、私の力ではなく属している企業の看板のお蔭。営業に行って「一緒に仕事をしましょう」と、かけられた言葉は、私にではなく、会社に向けられていたものだったんですね。私はなんて勘違いをしていたんだろうと、恥ずかしくなりました」と、谷澤さんはいう。
その後、カルチャーサロンは業務を縮小。前職で培ってきた知識と経験を生かしてイメージコンサルティングに業務を絞った。それでもまだ軌道に乗らず、カルチャーセンター時代から谷澤さんを支えてくれたスタッフへの賃金は、早朝アルバイトをして支払うほどだったという。
「アルバイトのことは何も言っていないのに、ある時、スタッフが「今月はお給料いりません」って言うんです。私が困っているのをどこかで察したのかもしれませんが、その時、私はお金をもらえないのはしょうがないけど、一緒に頑張ってくれているスタッフにまともに払えないなんてダメだ。こんな経営の仕方は私の自己満足と、前の会社への意地でしかない。しっかり会社の利益を上げなければ、と強く思ったんです」
この出来事は、谷澤さんにとって経営を立て直すきっかけとなった。「お金はないけどパワーだけならある。だったら、お金をかけずに出来ることは全部やろう!」と。持てるだけの知恵と体力を使い、始めたのは、青山の交差点でのチラシ配りに、メールマガジン、ブログを書くことだった。ブログは、出版社の目にとまり、初の著書『仕事は見た目』を出版するに至った。やがて状況は見る見るうちに変わっていった。
「あの時、私の目を覚ましてくれたのはここにいるスタッフ。だから今も私はスタッフを大切にすることを意識しています」という谷澤さん。そして、「お金をかけなくても出来ることは、必ずある」という。
母の闘病をきっかけに、色と洋服の力を知る
谷澤さんがイメージコンサルティングに興味を持ったのは、今はもう他界されたお母様のガン闘病中の出来事がきっかけだ。ガンも末期の頃、お母様は、痛み止めのモルヒネで意識が朦朧として家族すらわからなくなるのを嫌がり、投薬を拒んだ。
ある時「赤いマニキュアを塗ってちょうだい」と谷澤さんにいったそうだ。「骨と皮だけになった母の細い指に赤いマニキュアを塗ったら、「見ていると痛みが引く感じがする」て言うんです。モルヒネじゃなければとれなかった痛みが、色の力で感じなくなるなんて凄いなぁと思って」。さらに、洋服を着続けたこともよかったのか、余命3ヶ月宣告を受けていたガンの進行は遅くなり、寿命が3年も延びたという。「洋服に着替えることや、オシャレをするということは、薬ではどうにもならない、気持ちをブラッシュアップさせてくれるんですね」
この出来事から谷澤さんは、洋服と色が持つ不思議な力に魅せられた。「これを誰かに伝えられる仕事はないだろうか?」と、探し出したのがイメージコンサルティングだった。
「ただ、その頃のイメージコンサルタントって、カッコいいとか綺麗を作る仕事だったんです。でも私は母のことがきっかけでイメージコンサルタントをやろうと決意したわけですから、カッコいい、綺麗じゃなく、その人が元気になるとか、感じが良いとか、そこをゴールにしようと思ったんです。格好が良くなくても綺麗でなくても、感じの良い人になら誰でもがなれる。外見の奥にある内面の良さを引き出すことで絶対に感じ良くなれる。それが私の持っているメソッドなんです」