貸借対照表(B/S)から「経営の安全性」を読み解くための3つのポイント

この会社の経営はどんな状況なのか? それを読み解くのが「貸借対照表(B/S)」です。投資家だけではなく、事業主ならば、貸借対照表の読み方くらいは知っておきたいものですが、きちんと理解できている人は結構少なかったりします。複雑なイメージがありますが、基本さえ押さえてしまえば意外とカンタン。基本的な用語から、着目ポイントまで説明していきましょう。
[おすすめ]法人の会計業務をかんたんに!無料で使える「弥生会計 オンライン」
目次
- POINT
-
- 「自己資本比率」で経営の健全度が分かる
- 資産には流動資産と固定資産がある
- 短期の支払い能力は「流動比率」と「当座比率」で
自己資本比率が高い会社は安全!
資産 | 負債 |
---|---|
純資産 |
貸借対照表は左右で区切られています。左には会社の「資産」が記載されており、「その会社がどんな形で財産を保有しているか」が分かります。一方の右には「その資産をどうやって集めたのか」が書かれています。つまり会社が自力で集めた「純資産」と、借金して集めた「負債」がここに含まれてきます。この右と左の合計額はぴったり同じになるはずなので、貸借対照表は「バランスシート」(B/S)とも呼ばれています。
右側の「その会社は、資産をどんな方法で集めたの?」から見ていきましょう。まずは会社が活動するにあたって、基本となる「資本金(元入金)」がありますよね。そこに会社の利益を貯めておいた「利益余剰金」や、損失に備えてあらかじめ利益を確保しておく「利益準備金」などが加わります。
これらは、返済する必要もなく、純粋に事業だけに使えるお金ですから、これらをまとめて「純資産」と言います。事業に使えるお金が多い会社は頼もしい感じがしますよね。利益が上がれば上がるほど「純資産」に回せるので、会社の経営は安定していきます。
そんな「純資産」だけで経営できればよいですが、大きな事業を行うためには、借入が必要です。それは返済しなければならない「負債」、つまり会社の借金となります。
負債には2種類あり、一つは1年以内に支払わなければならない「流動負債」です。代金払い込み前の買掛金や短期に返済する借金などが、この流動負債にあたります。次に「固定負債」。これは1年以後に支払わなければならない借金のことで、資金調達のために発行した社債や長期にわたる借金などがこれにあたります。
この「純資産」と「負債」を合わせたもの、それが貸借対照表で右側に書かれる「その資産をどうやって集めたのか」になります。さらに、純資産のことを「自己資本」、負債のことを「他人資本」と呼びます。ちょっとややこしく思うかもしれませんが、意味を知れば理解できますよね。
言い換えれば、純資産は自分で集めた資本だから「自己資本」、負債は借金など他人から集めたものだから「他人資本」ということです。この「自己資本」と「他人資本」を合わせて「総資本」と呼びます。
ここまでを数式で整理して、おさらいしてみましょう。
●「純資産」=「資本金」+「利益余剰金」+「利益準備金」
●「負債」=「流動負債」+「固定負債」
●「純資産」=「自己資本」
●「負債」=「他人資本」
●「総資本」=「自己資本」+「他人資本」
(⇒「総資本」=「純資産」+「流動負債」+「固定負債」)
では、総資本のうち、借金ではない、その会社の純粋な資産は、はたしてどれくらいあるのか? それを表しているのが「自己資本比率」です。次の計算式で出すことができます。
●「自己資本比率」=「自己資本」÷「総資本」
この「自己資本比率が高い会社」が財務的に健全だとされる会社です。借金ができるだけ少なく、資本ができるだけ多い会社が経営的に優れている。当たり前の認識ですが、それを数字として表しているのが「自己資本比率」ということです。
ある会社の経営状態を知りたいときは、まずは「自己資本比率」を出してみるとよいでしょう。一般的に自己資本比率が70%以上なら理想的な経営状態で、40%以上なら倒産しにくいといわれています。
資産は2つに分けて考えよう
「総資本」について理解できたと思うので、次に「資産」の説明をしましょう。貸借対照表で左側に書かれる「その会社がどんな形で財産を保有しているか」というものです。資産は、2つに分けて考えます。
1つは、1年以内に現金に変えることができる「流動資産」です。すぐに現金化できるといえば、どんなものが思いつきますか? 預金や現金は当然ここに含まれます。それ以外に、株券や債券などの有価証券、代金回収前の売掛金、たな卸資産などもここに入ります。流動資産が多い会社は、何かあったときもすぐに現金化できるので、安心できそうですよね。
もう1つが、長期にわたって保有する「固有資産」です。こちらは、建物・機械・土地などになります。固定資産が多いとなんとなくリッチな会社のように思いがちですが、これらは時間とともに劣化しがちで、買い替えや修理などの費用が発生する可能性があるので、頭の片隅に置いておきましょう。
短期的な支払能力を見るにはココ!
とりあえず、ここまで理解できれば、貸借対照表の左右に書かれているものが、大まかにつかむことができると思います。では、貸借対照表のどの数値に着目すれば、どんなことが分かるのでしょうか。
左側の「流動資産」と右側の「流動負債」に着目してみましょう。つまり、「1年以内に現金に変えることができる資産」と「1年以内に支払わなければならない負債」の2つを見るのです。そして下記の数式で「流動比率」を計算してみましょう。
●「流動比率」=「流動資産」÷「流動負債」
これで「この会社は短期的にどれくらい支払いができるのか」を数値として知ることができます。これをもっと厳密に知るには「当座比率」を出してみるとよいでしょう。
●「当座比率」=「当座資産」÷「流動負債」
「当座資産」は初めて出てくる用語ですが、現金、預金、売掛金、受取手形、有価証券など、流動資産のなかでも現金化しやすいものを指しています。現金化するために商品を売らなければならない「棚卸資産」を除外することで、流動比率よりも正確なその会社の短期的な支払い能力を見られるのが、当座比率です。
以上、貸借対照表のポイントを解説してみました。これを踏まえて、実際の企業の貸借対照表を見てみれば、思わぬ発見ができるかもしれません。実践はまた新たな疑問を生み出して、知識を深めていきます。自身の事業に生かすためにも、ぜひ一度やってみてください。
photo:Thinkstock / Getty Images