「退職」とは何か? 退職の種類と手続き、規程
ある日、正社員のAさんが「会社を辞めます」と言って「退職願」を提出してきました。どうやら転職を考えているようです。そんな場面はドラマなどでもありますね。ではその「退職」とはどのようなものでしょう。退職事由はさまざまで、自己都合退職、定年退職、労働者の死亡など「解雇」以外のものを指します。今回は退職の種類と手続き、規程など「退職」について基本事項をまとめてみました。
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目次
退職とは
そもそも「退職」とはなんでしょう。法的に言うと「雇用契約の終了」のうちのひとつです。「雇用契約の終了」には「退職」と「解雇」の2種類があります。「解雇」は会社側から一方的に雇用契約を終了させることです。「退職」は解雇以外のものを指します。退職事由には自己都合退職、定年退職、労働者の死亡などがあります。
「解雇」については、「「解雇」とはなにか?禁止事項と基本的なルール」をご覧ください。
退職を許可制にできる?
実は退職願を提出してきたAさんはとても有能な社員で、社長は困ってしまいました。
では、こんな時に備えて、あらかじめ就業規則のなかに「退職するにあたっては会社の許可を得なければならない」というようなことを定めておいて、退職を許可制にすることはできるのでしょうか。
答えは「NO」です。Aさんのような正社員は一般的に期間の定めのない雇用契約ですが、その場合、最短で2週間の予告期間を置けば退職することができると民法で定められているのです。
そうは言っても、業務の引継ぎなどのことを考えると退職願を出してから2週間で辞められてしまうと困ります。ですから就業規則には「退職を願い出て会社が承認したとき、または退職願を提出して14日を経過したとき」というようにしているものが一般的です。
では、就業規則のなかで「退職するにあたっては、3ヵ月前に退職届を提出しなければならない」というように、民法よりも長い予告期間を設けておくことはできるのでしょうか。実際には業務の引継ぎ期間が必要ですから、そのように定めている会社は多いです。
これは、法律と就業規則のどちらが優先するか? という問題ですが、優先順位の高いのは法律です。それでも会社から従業員へのお願いというかたちで就業規則に定めておくことはできるのです。
退職願はどんな方法で?
Aさんは退職願を紙に書いて提出してきました。しかし今のご時世、メールやLINEなどSNSで退職の意志を伝えてくる従業員もいるようです。実は、法的に見るとそれは問題ありません。しかしこれについてもあらかじめ就業規則に「所定の様式で退職願を提出しなければならない」などと定めておき、書式を社内で共有しておくと良いでしょう。
退職者が出た場合に必要な手続きと届出について
退職者が出た場合の手続きや届出は以下のとおりです。
- ① 雇用保険 被保険者資格喪失届(ハローワークへ)
- ② 雇用保険 被保険者離職証明書(ハローワークへ ※本人に希望の有無を確認)
- ③ 健康保険・厚生年保険 被保険者資格喪失届(年金事務所又は健康保険組合へ)
- ④ 源泉徴収票(支払った給与額により税務署へ、額によらず本人へ)
各手続きについては以下をご参照ください。
【参考】
・①② 厚生労働省:雇用保険事務手続きの手引きより
・③ 日本年金機構:従業員が退職・死亡したときの手続き
・④ 国税庁:平成30年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引より
定年退職、労働者の死亡について
定年退職や労働者の死亡の時も退職時と同じ手続きが必要です。ただし死亡の場合は死亡原因が業務上や通勤中であれば労災保険から、私傷病であれば健康保険から給付金がおりますのでその手続きが必要です。
【参考】
・厚生労働省:「保険給付の概要」より(労災保険)
・全国健康保険協会:ご本人・ご家族が亡くなったとき
まとめ
「退職」とは何か、基本的な部分をお話しました。会社と従業員が円満に退職の日を迎えられるようあらかじめルールを決めておくことをおすすめします。
知っておきたい基礎知識|雇用と給与|まとめINDEX
- はじめて従業員を雇うときに知っておきたいこと
- 従業員の雇用には、どんな手続きが必要か?
- 従業員を雇用するときに準備する必要書類
- 労働保険・社会保険とは何か?
- 社会保険の手続き
- 労働保険の手続き
- 労働保険の年度更新とは
- 住民税 普通徴収と特別徴収の違いと手続き
- 標準報酬月額とはなにか? 決定のタイミングはいつ?
- 算定基礎届・月額変更届とは?
- 給与の源泉徴収と源泉所得税納付の手続き
- 賞与での社会保険の計算と手続きについて
- 年末調整とはなにか?
- 給与計算・年間スケジュール
- 給与計算のための就業規則・給与規程のポイント
- 給与計算・給与明細書の作成前に準備すること
- 給与計算での支給項目と非課税扱いになる手当
- 給与計算での「社会保険料」の計算
- 給与計算での「雇用保険料」の計算
- 給与計算での源泉所得税の計算方法
- 給与での支給額の算出方法と給与計算後の納付事務
- 「退職」とは何か? 退職の種類と手続き、規程
- 「解雇」とはなにか? 禁止事項と基本的なルール
- 「休職」とは?基本的なルールと必要な手続き
- 妊娠・出産・育児・介護に関する「休業」と必要な手続き