21.消費税におけるインボイス制度(適格請求書保存方式)の仕組みと必要な記載事項
「20.消費税の軽減税率制度の仕組みと税額計算の特例」において、2019年10月1日から2023年9月30日の期間は仕入税額控除のために「区分記載請求書等」の保存が必要だと説明しました。
では、2023年10月1日以降は、仕入税額控除のためにどのような請求書等が必要になるのでしょうか? 実は、それが今回説明する「適格請求書等」です。
この適格請求書等を保存することで仕入税額控除が受けられる方式のことを「適格請求書等保存方式」と言い、インボイス制度などと呼ばれることもあります。
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目次
適格請求書等に必要な記載事項
区分記載請求書等と適格請求書等の記載内容を比較すると以下のとおりです。
区分記載請求書等 | 適格請求書等 |
---|---|
請求書発行者の ・氏名または名称 ・取引年月日 ・取引内容 ・対価の額 ・請求書受領者の氏名または名称 ・軽減税率の対象品目である旨 ・税率ごとに合計した対価の額(税込) |
・区分記載請求書等の記載事項 ・登録番号 ・税抜価額または税込価額を税率ごとに区分した合計額および適用税率 ・消費税額等 |
【参考】
国税庁:2019年10月1日〜消費税の軽減税率が実施されます
なお、この適格請求書等を発行できるのは、税務署長に申請し登録を受けた課税事業者のみとなり、登録を受けた課税事業者を「適格請求書発行事業者」と言います。
税務署長への登録申請は2021年10月1日からとなりますが、この登録を受けた番号を適格請求書等に記載することとなります。
つまり、あなたの得意先が仕入税額控除を受けるためには、あなた自身が適格請求書発行事業者とならなければならないということです。
適格請求書発行事業者となれるのは課税事業者のみですので、もしあなたが免税事業者であるなら、まずは課税事業者となることを選択しなければなりません。
適格請求書を発行できないのであれば、得意先は支払った消費税を預かった消費税から控除することができませんので、納税額が増加することとなります。
納税額が増加するのであれば、今後、免税事業者とは取引をしないという可能性もでてくると言うわけです。
免税事業者等からの課税仕入にかかる経過措置
とはいえ、仕入先の多くが免税事業者である場合、仕入先を変更したり、仕入先に適格請求書発行事業者を選択するよう依頼をし、適格請求書等を発行してもらうには時間を要します。
そこで、免税事業者等から行った課税仕入について、以下の期間については、適格請求書等ではなく、区分記載請求書等を保存することで、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額控除できるという経過措置が設けられています。
期間 | 割合 |
---|---|
2023年10月1日から2026年9月30日まで | 仕入税額相当額の80% |
2026年10月1日から2029年9月30日まで | 仕入税額相当額の50% |
また、消費税軽減税率制度(複数税率)への対応が必要となる中小企業・小規模事業者等の方々が、複数税率対応レジの導入や、受発注システムの改修などを行う場合、軽減税率対策補助金という補助金が交付される場合があります。
知っておきたい基礎知識|消費税|まとめINDEX
- ~はじめに~ 知っておきたい基礎知識:消費税
- 01.消費税の仕組み
- 02.消費税の課税対象となる取引・対象とならない取引
- 03.消費税の申告・納税が課される事業者と、免税される事業者とは?
- 04.消費税の納付額の計算方法と課税形式
- 05.消費税の納付額の計算方法 〜簡易課税の計算〜
- 06.消費税の対象となる取引と「非課税取引」「不課税取引」の違い
- 07.消費税の非課税取引の仕組み
- 08.消費税における輸出免税取引の仕組み
- 09.消費税における会計処理(税込経理方式、税抜経理方式)の違い
- 10.消費税における課税売上割合と課税売上割合に準ずる割合
- 11.消費税計算で仕入税額控除のできる取引・できない取引
- 12.消費税における仕入控除税額の計算方法の決め方
- 13.消費税における仕入控除税額の控除時期と計算方法
- 14.消費税計算での対価の返還と貸倒れの場合の処理
- 15.消費税における個別対応方式の計算方法
- 16.消費税における一括比例配分方式の計算方法
- 17.消費税の簡易課税の仕組みとみなし仕入率
- 18.消費税における各種届出書と提出期限
- 19.消費税の確定申告期間と納付の期限
- 20.消費税の軽減税率制度の仕組みと税額計算の特例
- 21.消費税におけるインボイス制度(適格請求書保存方式)の仕組みと必要な記載事項